10:00 AM - 12:00 PM
[PA80] 認知能力因子と習得能力因子の相関関係
Keywords:認知能力, 習得能力, KABC-II
問題と目的
認知能力の因子構造に関するCHC(Cattell-Horn-Carroll)モデルは,第1層を限定能力,第2層を広範能力,第3層を一般能力とし,広範能力には流動性推理や短期記憶などの認知能力と算数や結晶性能力などの習得能力が仮定される(Flanagan & Harrison, 2012)。
Kaufman et al.(2012)はKABC-II,KTEA-II,WJ IIIの下位検査の相関関係を分析し,認知能力と習得能力を仮定するモデルがデータへの適合性が高いこと,一方,Reynolds et al.(2013)はKABC-II,WISC-III,WISC-IV,WJ III,PIAT-R/NUの下位検査の相関関係を分析し,一般能力を仮定するモデルの方がわずかにデータへの適合性が高いことを示した。そこで,本稿では,日本版KABC-II(Kaufman & Kaufman, 2013)の下位検査を用い,認知能力と習得能力の相関関係を検討する。
方 法
(1)分析対象 7歳から18歳までとし(1837名),顔さがしを除く19の下位検査を用いた。(2)モデル モデル1:CHCモデルに依拠して8の広範能力と,その上位へ一般能力を仮定した。モデル2:広範能力の短期記憶,視覚処理,流動性推理,長期記憶と検索の上位へ認知能力の因子,結晶性能力,読み,書き,算数の上位へ習得能力の因子を仮定した。(3) データ Kaufman & Kaufman(2013)の付録を参照した。(4)多母集団確認的因子分析 全12年齢群に対し,因子負荷量,因子の分散共分散,誤差の分散共分散,下位検査の平均値等に等値制約を課す51のモデルを立てデータへの適合性を検討した。計算にはLISREL 8.54(Jöreskog & Sörbom ,2003)を用いた。標準化データでは絵の統合が結晶性能力に対する負荷量が大きいので(Kaufman & Kaufman, 2013),視覚処理と結晶性能力の指標とするモデルも立てた。
結果と考察
情報量規準(AIC,CAIC)によれば,モデル2はモデル1よりもデータへの適合性が高かった。
12年齢群の間で2次因子負荷量,1次因子負荷量,因子分散共分散,誤差分散,下位検査の平均値を等値とする測定不変モデルの適合性は高く,12年齢群において同一の能力因子を測定していると見なすことができた。
最終的に採択されたモデルは,認知能力と習得能力の因子の相関係数が高い(.87)が,2因子を同一と見なすことはできず,この結果はKaufmanら(2012)の知見を支持する。2次因子負荷量,下位検査が認知能力と習得能力の因子から受ける総合効果(2次因子負荷量と1次因子負荷量の積)はTable 1に示す通りである。
引用文献
Flanagan, D. P., & Harrison, P. L. (Eds.) (2012). Contemporary Intellectual Assessment: Theo-ries,Tests, and Issues(3rd ed.). NY: Guilford.
Jöreskog, K. G., & Sörbom, D. (2003). LISREL 8.54 for Windows. IL: SSI.
Kaufman, A. S., & Kaufman, N. L. (2013). 日本版KABC-II マニュアル 丸善出版
Kaufman, S. B., Reynolds, M. R., Liu, X., Kaufman, A. S., & McGrew, K. S. (2012). Are cognitive g and academic achievement g one and the same g?, Intelligence, 40, 2, 123-138.
認知能力の因子構造に関するCHC(Cattell-Horn-Carroll)モデルは,第1層を限定能力,第2層を広範能力,第3層を一般能力とし,広範能力には流動性推理や短期記憶などの認知能力と算数や結晶性能力などの習得能力が仮定される(Flanagan & Harrison, 2012)。
Kaufman et al.(2012)はKABC-II,KTEA-II,WJ IIIの下位検査の相関関係を分析し,認知能力と習得能力を仮定するモデルがデータへの適合性が高いこと,一方,Reynolds et al.(2013)はKABC-II,WISC-III,WISC-IV,WJ III,PIAT-R/NUの下位検査の相関関係を分析し,一般能力を仮定するモデルの方がわずかにデータへの適合性が高いことを示した。そこで,本稿では,日本版KABC-II(Kaufman & Kaufman, 2013)の下位検査を用い,認知能力と習得能力の相関関係を検討する。
方 法
(1)分析対象 7歳から18歳までとし(1837名),顔さがしを除く19の下位検査を用いた。(2)モデル モデル1:CHCモデルに依拠して8の広範能力と,その上位へ一般能力を仮定した。モデル2:広範能力の短期記憶,視覚処理,流動性推理,長期記憶と検索の上位へ認知能力の因子,結晶性能力,読み,書き,算数の上位へ習得能力の因子を仮定した。(3) データ Kaufman & Kaufman(2013)の付録を参照した。(4)多母集団確認的因子分析 全12年齢群に対し,因子負荷量,因子の分散共分散,誤差の分散共分散,下位検査の平均値等に等値制約を課す51のモデルを立てデータへの適合性を検討した。計算にはLISREL 8.54(Jöreskog & Sörbom ,2003)を用いた。標準化データでは絵の統合が結晶性能力に対する負荷量が大きいので(Kaufman & Kaufman, 2013),視覚処理と結晶性能力の指標とするモデルも立てた。
結果と考察
情報量規準(AIC,CAIC)によれば,モデル2はモデル1よりもデータへの適合性が高かった。
12年齢群の間で2次因子負荷量,1次因子負荷量,因子分散共分散,誤差分散,下位検査の平均値を等値とする測定不変モデルの適合性は高く,12年齢群において同一の能力因子を測定していると見なすことができた。
最終的に採択されたモデルは,認知能力と習得能力の因子の相関係数が高い(.87)が,2因子を同一と見なすことはできず,この結果はKaufmanら(2012)の知見を支持する。2次因子負荷量,下位検査が認知能力と習得能力の因子から受ける総合効果(2次因子負荷量と1次因子負荷量の積)はTable 1に示す通りである。
引用文献
Flanagan, D. P., & Harrison, P. L. (Eds.) (2012). Contemporary Intellectual Assessment: Theo-ries,Tests, and Issues(3rd ed.). NY: Guilford.
Jöreskog, K. G., & Sörbom, D. (2003). LISREL 8.54 for Windows. IL: SSI.
Kaufman, A. S., & Kaufman, N. L. (2013). 日本版KABC-II マニュアル 丸善出版
Kaufman, S. B., Reynolds, M. R., Liu, X., Kaufman, A. S., & McGrew, K. S. (2012). Are cognitive g and academic achievement g one and the same g?, Intelligence, 40, 2, 123-138.