1:00 PM - 3:00 PM
[PB04] 4~6歳児のストーリーナラティブの評価指標の検討(2)
-ナラティブ発達評価指標作成に向けての基礎研究-
Keywords:幼児期, ナラティブ, 発達評価
問 題
本報告はナラティブ発達評価指標作成に向けての一連の基礎研究の一部である。報告者らは幼児期後半から学齢期にかけて発達する談話能力の発達機序やプロセス,評価の方法論について検討するために,ナラティブに関連する7種の課題を作成し,4歳から6歳児を対象に調査を実施した。その1つが紙芝居のストーリーを語ってもらう「どんなお話」課題で,これまでの分析からストーリーナラティブの能力が,5歳から6歳前半にかけて高まる様相が明らかにされた(瀬戸・秦野 2014a,b;2016a,b)。本報告では2015,2016年に実施した69名の調査データを加え,4~6歳児が1)話の筋に必要な内容をどのように語るのか,2)ストーリーナラティブは語彙などの言語能力と関係があるのか,について分析することを目的とする。
方 法
調査参加児:保護者の承諾が得られ調査を実施した幼稚園年少・年中・年長児153名の内,本報告では当該課題に集中して取り組めなかった5名を除く148名を対象とした(4歳前半22名,4歳後半34名,5歳前半30名,5歳後半29名,6歳前半18名,6歳後半15名)。調査期間:2013年2,3,7月(79名),2015年11月,2016年2月(69名)。手続き:調査は2日に分けて実施し,1日目に言語検査(2015,2016年調査(69名)では,PVT-R絵画語い発達検査,言語調整機能テスト(天野,2006),KABC-Ⅱ語彙尺度課題)を,2日目にナラティブに関連する7種の課題を実施した。「どんなお話」課題は7番目の課題である。材料:出版社と著者の許可を得て作成した字のない紙芝居「クレヨンのはしご」(板橋敦子著 ひさかたチャイルド発行)と紙芝居用のCD。手続き:CDを聞かせながら調査者が絵をめくり紙芝居を見せた後,視覚的手がかりが無い状態で紙芝居の内容をしてもらった。すべての発話はICレコーダーに録音した。分析資料:すべての発話のトランスクリプトと言語検査結果を分析の対象とした。
結果と考察
1)語られる内容 1.筋立てに必要な情報:物語の筋立てに必要な21の基本述語文(動詞述語文20,形容詞述語文1)を抽出し,4,5,6歳後半での出現率をFigure 1に示した。5歳後半になると,話の設定,場面の移動,展開,結末部を中心に語りが増え,6歳後半になると筋立てに必要な主要な文全体がかなり語られるようになってくることが示された。出現した基本述語文数を,SN得点(最高21点)として,年齢ごとの四分位数を示したのが,Figure 2である。5歳代で語る情報数が増え始め6歳にかけて収束していく様子が示された。2.物語の登場人物:登場人物6名の出現率もSN得点と同様に5歳後半から6歳にかけて増加傾向が示された。SN得点と登場人物数は,歴年齢の影響を除いても相関が高いことが示された(r=0.866)。3.語られる場面:物語の筋立てに必要な基本述語文を1つ以上語った子どもが,物語を大きく発端,展開,結末部の3場面に分けたとき,語った場面数を示したのがFigure 3である。3場面について語る割合は年齢が上がるごとに増え,5歳後半になるとその割合が半数を超えた。しかし,3場面であってもSN得点は4~20点と開きがあった。
2)語彙などの言語能力との対応関係
SN得点と各種の言語検査の間には中程度の相関がみられたが,歴年齢の影響を除いた偏相関係数をみるとほとんど相関がないことが示された。
今後,物語文法の発達についても詳細に分析をしていきたい。
本報告はナラティブ発達評価指標作成に向けての一連の基礎研究の一部である。報告者らは幼児期後半から学齢期にかけて発達する談話能力の発達機序やプロセス,評価の方法論について検討するために,ナラティブに関連する7種の課題を作成し,4歳から6歳児を対象に調査を実施した。その1つが紙芝居のストーリーを語ってもらう「どんなお話」課題で,これまでの分析からストーリーナラティブの能力が,5歳から6歳前半にかけて高まる様相が明らかにされた(瀬戸・秦野 2014a,b;2016a,b)。本報告では2015,2016年に実施した69名の調査データを加え,4~6歳児が1)話の筋に必要な内容をどのように語るのか,2)ストーリーナラティブは語彙などの言語能力と関係があるのか,について分析することを目的とする。
方 法
調査参加児:保護者の承諾が得られ調査を実施した幼稚園年少・年中・年長児153名の内,本報告では当該課題に集中して取り組めなかった5名を除く148名を対象とした(4歳前半22名,4歳後半34名,5歳前半30名,5歳後半29名,6歳前半18名,6歳後半15名)。調査期間:2013年2,3,7月(79名),2015年11月,2016年2月(69名)。手続き:調査は2日に分けて実施し,1日目に言語検査(2015,2016年調査(69名)では,PVT-R絵画語い発達検査,言語調整機能テスト(天野,2006),KABC-Ⅱ語彙尺度課題)を,2日目にナラティブに関連する7種の課題を実施した。「どんなお話」課題は7番目の課題である。材料:出版社と著者の許可を得て作成した字のない紙芝居「クレヨンのはしご」(板橋敦子著 ひさかたチャイルド発行)と紙芝居用のCD。手続き:CDを聞かせながら調査者が絵をめくり紙芝居を見せた後,視覚的手がかりが無い状態で紙芝居の内容をしてもらった。すべての発話はICレコーダーに録音した。分析資料:すべての発話のトランスクリプトと言語検査結果を分析の対象とした。
結果と考察
1)語られる内容 1.筋立てに必要な情報:物語の筋立てに必要な21の基本述語文(動詞述語文20,形容詞述語文1)を抽出し,4,5,6歳後半での出現率をFigure 1に示した。5歳後半になると,話の設定,場面の移動,展開,結末部を中心に語りが増え,6歳後半になると筋立てに必要な主要な文全体がかなり語られるようになってくることが示された。出現した基本述語文数を,SN得点(最高21点)として,年齢ごとの四分位数を示したのが,Figure 2である。5歳代で語る情報数が増え始め6歳にかけて収束していく様子が示された。2.物語の登場人物:登場人物6名の出現率もSN得点と同様に5歳後半から6歳にかけて増加傾向が示された。SN得点と登場人物数は,歴年齢の影響を除いても相関が高いことが示された(r=0.866)。3.語られる場面:物語の筋立てに必要な基本述語文を1つ以上語った子どもが,物語を大きく発端,展開,結末部の3場面に分けたとき,語った場面数を示したのがFigure 3である。3場面について語る割合は年齢が上がるごとに増え,5歳後半になるとその割合が半数を超えた。しかし,3場面であってもSN得点は4~20点と開きがあった。
2)語彙などの言語能力との対応関係
SN得点と各種の言語検査の間には中程度の相関がみられたが,歴年齢の影響を除いた偏相関係数をみるとほとんど相関がないことが示された。
今後,物語文法の発達についても詳細に分析をしていきたい。