日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PB(01-83)

ポスター発表 PB(01-83)

2017年10月7日(土) 13:00 〜 15:00 白鳥ホールB (4号館1階)

13:00 〜 15:00

[PB08] テレビ視聴に対する親のかかわりと子どもの言語発達との関連

乳児期から児童期までの縦断調査から

菅原ますみ1, 松本聡子#2, 室橋弘人3, 酒井厚4 (1.お茶の水女子大学大学院, 2.お茶の水女子大学, 3.金沢学院大学, 4.首都大学東京)

キーワード:親の共有視聴, 言語発達, 縦断研究

問題と目的
 デジタルネイティブの出現とともに,2000年前後から,テレビやビデオ/DVDなどの映像メディア(screen media)への接触が発達初期からの子どもの心身の健康や発達にどのような影響を及ぼすか大きな社会的関心が持たれるようになった。著者らの研究グループ(“子どもに良い放送”プロジェクト, NHK放送文化研究所)では,0歳から11歳まで年1回の留め置き日誌法によってテレビやビデオ/DVD等に関する視聴実態を測定し,様々な子どもの発達や健康への影響性に関する縦断的な検討を実施してきている(Sugawara et al., 2015など)。今回の報告では,子どものテレビ視聴に対する親の関わり方(量的側面:共有視聴時間,および質的側面:番組選択と視聴中の語りかけ)に注目し,乳幼児期および児童期における言語発達との関連について検討をおこなう。

方   法
 調査対象者と手続き:0歳(wave1)から11歳(wave12)までのメディア接触と子どもの発達に関する縦断研究の対象となっているサンプルのうち,乳児期の解析については,1歳時点(wave2)と2歳時点(wave3)で実施した語彙検査に両時点とも回答した1,039世帯を対象とした。登録は2002年2月~7月で,首都圏1都市に生まれた子どもとその両親が調査に参加した。
 視聴実態調査:年1回特定の1週間について毎日15分単位で24時間のテレビ・ビデオ・テレビゲームの利用時間と内容を日誌によって測定した。
 乳幼児期の語彙発達:(マッカーサー乳幼児言語発達検査)によって1歳時と2歳時の獲得語彙数を測定した。1歳時点での平均語彙数は134.64語(SD=111.07,最大は448語),2歳時点では510.40語(SD=138.61,最大は711語)であった。
 児童期の言語的コミュニケーション:言語コミュニケーション能力を測定する尺度(Feagans, Fendt,& Farran,1995)として,「質問されたら適切に答える」など他者との言葉のやりとりの適切性に関する12項目(α=.90)について,5段階で評定してもらった。
 子どものテレビ視聴に対する親のかかわり・・・量的側面については,視聴日誌で測定した共有視聴時間,質的側面については,①子どもとテレビ視聴を共有し,かつ見ている最中に内容に関する会話をするかどうかに関する1項目と(共有評価),②見てよい番組を決めているなどの番組選択に関する3項目を加算した値(選択)を分析に用いた。①・②は父親・母親それぞれに評定を依頼した。
 統制変数:基本属性として子どもの年齢,性別,出生順位,両親の学歴を,また子どもの生活関連変数として外遊び時間量と本読み時間量を分析に用いた。乳幼児期については保育施設の利用の有無も統制した。
  
結果と考察
 1.重回帰分析の結果
  乳幼児期の語彙獲得数および児童期の言語的コミュニケーションを従属変数とした重回帰分析を実施した結果(Table 1),両時期とも親のかかわりの量的側面(共有視聴時間)は有意な関連がしめされず,質的な側面のうち,一緒に視聴している最中での画面の内容に関する会話的語りかけが正の有意な関連を示し,3歳児のビデオに関する先行研究(Strouse et al., 2013)と同様に対話的な視聴 (dialogic viewing)が乳幼児期・児童期の言語発達を促す可能性がテレビ視聴についても示された。

 2.語彙獲得に関する因果分析
  Wave1 (0歳),wave2(1歳)とwave3(2歳)での3時点の共有視聴時間およびテレビ視聴中の親の語りかけ頻度と語彙獲得数に関する交差時差遅れ分析の結果,wave1のテレビ中の親の語りかけはwave2の語彙数に,同様にwave2の親の語りかけはwave3の語彙数に正の効果を有することが示され,テレビ視聴の語彙獲得に対する促進効果は単なる共有視聴ではなく,内容に関する親の語りかけが重要である可能性が示唆された。