1:00 PM - 3:00 PM
[PB09] 大学生のコミュニケーション能力に与える部活動経験の影響
Keywords:コミュニケーション能力, 部活動, 大学生
問題と目的
近年,大学生のコミュニケーション能力の低下が懸念されている。人間関係が複雑になる中学・高校生時代に部活動をしていた学生はコミュニケーション能力を身に着けているのだろうか。部活動では異年齢と関わる機会が多く,多様なコミュニケーション能力を育てることが可能だと考えられる。従って本研究では,大学生の中学・高校時代の部活動経験が,様々なコミュニケーション能力と関連があるかどうかを検討することを目的とする。
方 法
対象者:短期大学2年生女性93名。
手続き:授業中に集団で一斉に質問紙調査を実施した。質問項目は以下の通りだった。
(1)対象者の中学校・高校の部活動経験
(2)部活動での先輩や後輩との関わり:先輩と後輩との関わりの程度「先輩から部活動のやり方や技術などを教えてもらっていた。」などの10項目を5段階で評定してもらった。
(3)異年齢とのコミュニケーションスキル:学校生活スキル尺度(飯田・石隈,2002)7項目を用いた。相手を同級生・先輩・後輩・先生と分けて4段階で評定してもらった。
(4)親和傾向・拒否不安:親和動機尺度(杉浦,2000)17項目を用いた。
(5)コミュニケーションスキル:藤本ら(2007)のコミュニケーションスキル尺度(「自己統制」「表現力」「読解力」「自己主張」「他者受容」「関係調整」)24項目を用いた。
(6)相互独立的―相互協調的自己観:高田(2000)の相互独立的―相互協調的自己観尺度20項目を用いた。
結果と考察
部活動の経験を中学と高校で分けて,部活動未経験群,運動部群,文化部群に分類した。上記の各測定尺度得点を1要因の分散分析で比較した。(5)(6)の分析に関しては欠損値が多く対象者は62名となった。
分析の結果,中学の部活動ではほとんどの尺度で有意差は見られなかった。しかし,中学の部活動で先輩との関わりが多かった人は,大学時代に親和傾向が高い傾向にあることが明らかになった。中学の部活動では上下関係に慣れておらず,先輩と関わるのが難しいが,この経験が人と親和的に関われる能力につながると考えられる。
高校の部活動経験ではいくつかの尺度で有意差がみられた。運動部群は,部活動経験無し群と文化部群よりも,後輩とのコミュニケーションスキル(F(2,89)=6.45,p<.005)と同級生とのコミュニケーションスキル (F(2,89)=7.34,p<.005)が高いことが示された(Fig.1)。
また,運動部群は未経験群と文化部群よりもコミュニケーションスキルの「読解力」(F(2,59)=5.02,p<.01)と自己主張(F(2,59)=5.67,p<.01)が高かった(Fig.2)。
さらに,運動部群は文化部群よりも自己観尺度の個の認識・主張が高く(F(2,59)=3.92,p<.05),文化部群は運動部群よりも評価懸念が高いことが示された(F(2,59)=3.98,p<05)。
以上のことから,高校の運動部は異年齢とのコミュニケーション経験が多くなり,コミュニケーション能力を身につけることができると考えられる。また,運動部では,試合で相手の動きの瞬時の判断が必要であることや,勝敗が重視され個の技術を磨くこと,ライバルへの競争心などから読解力や自己主張スキルが獲得されると考えられる。
近年,大学生のコミュニケーション能力の低下が懸念されている。人間関係が複雑になる中学・高校生時代に部活動をしていた学生はコミュニケーション能力を身に着けているのだろうか。部活動では異年齢と関わる機会が多く,多様なコミュニケーション能力を育てることが可能だと考えられる。従って本研究では,大学生の中学・高校時代の部活動経験が,様々なコミュニケーション能力と関連があるかどうかを検討することを目的とする。
方 法
対象者:短期大学2年生女性93名。
手続き:授業中に集団で一斉に質問紙調査を実施した。質問項目は以下の通りだった。
(1)対象者の中学校・高校の部活動経験
(2)部活動での先輩や後輩との関わり:先輩と後輩との関わりの程度「先輩から部活動のやり方や技術などを教えてもらっていた。」などの10項目を5段階で評定してもらった。
(3)異年齢とのコミュニケーションスキル:学校生活スキル尺度(飯田・石隈,2002)7項目を用いた。相手を同級生・先輩・後輩・先生と分けて4段階で評定してもらった。
(4)親和傾向・拒否不安:親和動機尺度(杉浦,2000)17項目を用いた。
(5)コミュニケーションスキル:藤本ら(2007)のコミュニケーションスキル尺度(「自己統制」「表現力」「読解力」「自己主張」「他者受容」「関係調整」)24項目を用いた。
(6)相互独立的―相互協調的自己観:高田(2000)の相互独立的―相互協調的自己観尺度20項目を用いた。
結果と考察
部活動の経験を中学と高校で分けて,部活動未経験群,運動部群,文化部群に分類した。上記の各測定尺度得点を1要因の分散分析で比較した。(5)(6)の分析に関しては欠損値が多く対象者は62名となった。
分析の結果,中学の部活動ではほとんどの尺度で有意差は見られなかった。しかし,中学の部活動で先輩との関わりが多かった人は,大学時代に親和傾向が高い傾向にあることが明らかになった。中学の部活動では上下関係に慣れておらず,先輩と関わるのが難しいが,この経験が人と親和的に関われる能力につながると考えられる。
高校の部活動経験ではいくつかの尺度で有意差がみられた。運動部群は,部活動経験無し群と文化部群よりも,後輩とのコミュニケーションスキル(F(2,89)=6.45,p<.005)と同級生とのコミュニケーションスキル (F(2,89)=7.34,p<.005)が高いことが示された(Fig.1)。
また,運動部群は未経験群と文化部群よりもコミュニケーションスキルの「読解力」(F(2,59)=5.02,p<.01)と自己主張(F(2,59)=5.67,p<.01)が高かった(Fig.2)。
さらに,運動部群は文化部群よりも自己観尺度の個の認識・主張が高く(F(2,59)=3.92,p<.05),文化部群は運動部群よりも評価懸念が高いことが示された(F(2,59)=3.98,p<05)。
以上のことから,高校の運動部は異年齢とのコミュニケーション経験が多くなり,コミュニケーション能力を身につけることができると考えられる。また,運動部では,試合で相手の動きの瞬時の判断が必要であることや,勝敗が重視され個の技術を磨くこと,ライバルへの競争心などから読解力や自己主張スキルが獲得されると考えられる。