The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PB(01-83)

ポスター発表 PB(01-83)

Sat. Oct 7, 2017 1:00 PM - 3:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

1:00 PM - 3:00 PM

[PB10] 思春期の問題行動に対する青年期のとらえ直し(2)

思春期の不登校に対する大学生の見方の変容

鹿嶌達哉 (広島国際大学)

Keywords:不登校, 青年期, とらえ直し

 大学生は自身・友人・同級生の不登校を体験しているが,その原因や理由,その間の気持ちや生活を理解しているとはいえない。鹿嶌(2008教心)は思春期の問題行動に関していじめに対する理解が大学の受講により変化したことを示した。本研究では不登校に対する理解の変化を明らかにする。
方   法
調査対象:2006~2010年度,2大学において発達心理学系の科目を受講した649名が不登校をテーマとした受講後記した感想197の中からとらえ直しに関するもの84を対象とした。対象者と以下の【】内の数字の詳細は鹿嶌(2003)を参照。
結果と考察
 結果は以下のように整理された。
〔よくわからない/不思議な不登校〕
 不登校の原因は本人にとっても【6,7】,友人にとっても【22,23】わかりにくい。
〔不登校・思春期の体験に対する共感・理解〕
 不登校のつらさ【42】,行きたいのに行けないしんどさ【42】,言いたいこと言えない苦しさ【40】,素の自分が出せないつらさ【41,43】,誰にもわかってもらえないのではないかという不安【49】が自分の体験と重ね合わせて共感的に理解された。
〔不登校の意義・プラス面への着目〕
 不登校をマイナスとしてとらえるのではなく,エネルギー,自分の世界の拡張【50】,大切な時間【18】,心の整理【19】,ゆっくり考えるための現実逃避【20】と肯定的にとらえられた。
〔不登校に欠けているもの/自分にあったもの〕
 その一方で「まだ大丈夫だと思っていたから通った」【58】,「少しずつ友だちに自分のことをしゃべっていた」【55】と不登校生徒との違いへの言及もあった。違いには「怖かったから」【56】,「何を言われるかわからないから」【57】休めなかったというものと,「不登校しようと思わなかったのが不思議」【68】というものもあった。
〔不登校・思春期の体験に対する/からの学び〕
 受講から,不登校は身体による拒否反応【150】,苦しいことの表現【151】であり,休んでいるのではなく闘っていること【45】,自分を守る必要のあること【154】が理解された。また,一人で悩む危うさ【158】,人への不信【174】,が不登校に関連すること,人に相談しないと自分を傷つけたり【173】人間不信になったり【174】することが理解された。不登校の背後には思春期の問題【149】,居場所さがし【155】,自己決定【156】,自分さがし【157】という課題がある。
〔思春期に特有の問題,時が解決〕
 不登校を経験してもふつうに大学に通っていることから【12,21,27a,152】,不思議な感覚とともに思春期特有の問題との関連性が理解された。
〔不登校の自分の理解・対応へのとらえ直し〕
 自分は無関係ではなく原因の一つになっていた可能性が気づかれた【160】。また,何もできなかった自分も精一杯だったことに気づいた【30】。
〔自分作り・一人の時間の大切さへの気づき〕
思春期における読書【162】や一人でいる時間【163】など「自分にエネルギーを使う時間」,自己理解【161】や自己整理【164】の重要性が述べられた。
〔周囲の対応・支援に対するとらえ直し〕
 理解してくれる母と怒る父【15】の両親や,話を聞いてくれる友人【70,71,76,169】,先生【76,169】,他者【170~172】からの支援とその重要性が認められた。
〔大人(親・教師)に対する批判〕
 親は期待できない【46】,味方ではない【47】と見られたことがあった。教師は生徒との関係が弱く【87】表面的で【93】,生徒を対等に見ていない【85】し,自分を守ろうとする【48】ため信用できない【93,97】し諦めていた【96】。教師には時間も能力もないから解決は無理【86】で不登校に対する認識・配慮不足【89,92】である。見て見ぬふりをする【92】することもあるし,生徒任せにすること【90,91,94】もある。また,対応がまずい例【95】もみられた。
〔大人(親・教師)による対応への要望・示唆〕
 本当の信頼(仲良し,好きとは異なる)を築き【168】,自他の気持ちを大切にする【175】ことが期待される。子どもを否定しない【153】で,存在を受け入れ考え方をわかってあげる【165,166】こと,認める【167】ことが求められる。対応としては無理に行かせようとしない【146】,転機が来るのを待つ【27b】ことが良いと思われていた。
 以上のように青年は思春期の不登校について学ぶことにより,不登校のみならず,思春期の課題や難しさ,自分の体験の意味や意義,周囲の支援や対応,大人のあり方等をとらえ直した。
引用文献
鹿嶌達哉(2013)思春期の問題行動に対する青年期のとらえ直し(2)広島国際大学教育論叢, 5, 17-28