1:00 PM - 3:00 PM
[PB11] 子どもの言語表現の発達的検討
実験場面についての報告のテキストマイニングによる分析
Keywords:テキストマイニング, 言語発達
はじめに
本研究の目的は,直前の経験に関する3歳から9歳児の音声言語報告を,テキストマイニングの手法によって分析する事により,言語発達研究の一つの可能性を示すことにある。
子どもが自分の経験を報告する形のデータを扱った研究はあまり多いとは言えないが,その理由としては,経験を統制しにくいことに加え,子どもの言語報告を数量化して分析する方法が煩雑であることも大きな理由であるように思われる。さらに,研究者が先に決めた基準以上の分析はできず,多くの価値あるデータを分析対象から外している可能性が考えられる。
大人の文章型のデータは,コンピュータによるデータ分析手法が発達し,自由記述のデータの分析方法としてテキストマイニングの手法が使われるようになり,質的データといわれるものに対して定量的な分析が可能になった。ここで言うテキストは実験協力者が自由記述として書いたものだけではなく,インタビュー調査による音声データを文字化し,分析した研究もある。これらのことから,子どもの発話データを録音し,それを文字化したものをテキストマイニングによって分析することは可能であり,重要な作業であるように思われる。
方 法
実験協力者
3歳8か月から9歳8か月の保育園児,幼稚園児,小学生,182名である。内訳は,保育園・幼稚園の年少児40名,年中児40名,年長児40名,小学校1年生24名,3年生38名であった。
手続き
共通体験づくりとそれについて報告するという流れになっている。
(共通体験づくり)
1対1で実験が行われた。実験協力者に目をつぶらせ,その間に台紙の上に刺激を並べる。刺激として色(赤,青,黄)でも,形(正方形,正三角形,丸)でも分けられる9枚のカードが用いられた。画用紙で刺激を隠し,実験協力者の前に置き,目を開けさせる。画用紙を指さし,「ここを見ててね。」と言って,画用紙を取る。刺激を言語化する条件としない条件の2条件ある。提示が終わると,白画用紙で刺激を隠し,「隠すね」と言い,机の前の方に台紙ごと刺激をずらせ,再生課題を行う。
(報告)
記憶の実験終了後,別室で以下の質問に一対一で答える。実験協力者は実験者と机の角をはさんで座る。実験者は会話として不自然にならない程度に無反応であった。質問の内容は「あそこのお姉さんの所ではどんな事をしたの。」を含む6問であり,会話は全て小型のカセットテープレコーダーに録音し,これを文字化した。
分析方法
テキストマイニングは,文章を自然言語処理してカテゴリ化する部分と,カテゴリ化したデータを統計的に分析する部分に分けることができる。本研究では前者の部分をIBM SPSS Text Analytics for Surveys 4.0によって行い,後者の部分をIBM SPSS Statistics 22によって行った。
結果と考察
年少児は「形」について言及した子どもは半数以下であり,他の年齢の子どもに比べて大変少ない。また,「形」について言及しても,動詞のない場合が多い。問われたので,何か答えなくてはならないと感じ,見た物を答えたようである。年中児と年長児はよく似た傾向である。ほとんどの子どもが「形」に言及しており,名詞で終わるのではなく,動詞も付けている。この年齢になると,自分の行動について表現する力がついてくるように思われる。小学校1年生になると,「色」への言及,「並べる」という言葉を言う子どもが増えるが,格助詞の「を」はあまり使っていない。発話では目的語と動詞が未分化であるが,書いて答えた場合も同じ傾向であるのか調べてみる必要がある。また,特に分析の対象にはしていないが,「勉強」という言葉を小学1年生の2人だけが言っている。それ以前の子どもでは,「勉強」という言葉が出ていないことから,小学生になり「勉強」と言われることが増え,机に向かうことは,「勉強」と表現されたのかもしれない。小学3年生になると,「並べる」という動詞,格助詞「を」を使用する子どもが増える。また,心的動詞である「覚える」も出てくる。小学校3年生になると,「何をどうしたのか」という表現ができ,頭の中で行っている事にも言及するようになる。
上述より,子どもの発話もテキストマイニングの手法によって分析でき,発達的変化をとらえることができるということは示されたと言えよう。
本研究の目的は,直前の経験に関する3歳から9歳児の音声言語報告を,テキストマイニングの手法によって分析する事により,言語発達研究の一つの可能性を示すことにある。
子どもが自分の経験を報告する形のデータを扱った研究はあまり多いとは言えないが,その理由としては,経験を統制しにくいことに加え,子どもの言語報告を数量化して分析する方法が煩雑であることも大きな理由であるように思われる。さらに,研究者が先に決めた基準以上の分析はできず,多くの価値あるデータを分析対象から外している可能性が考えられる。
大人の文章型のデータは,コンピュータによるデータ分析手法が発達し,自由記述のデータの分析方法としてテキストマイニングの手法が使われるようになり,質的データといわれるものに対して定量的な分析が可能になった。ここで言うテキストは実験協力者が自由記述として書いたものだけではなく,インタビュー調査による音声データを文字化し,分析した研究もある。これらのことから,子どもの発話データを録音し,それを文字化したものをテキストマイニングによって分析することは可能であり,重要な作業であるように思われる。
方 法
実験協力者
3歳8か月から9歳8か月の保育園児,幼稚園児,小学生,182名である。内訳は,保育園・幼稚園の年少児40名,年中児40名,年長児40名,小学校1年生24名,3年生38名であった。
手続き
共通体験づくりとそれについて報告するという流れになっている。
(共通体験づくり)
1対1で実験が行われた。実験協力者に目をつぶらせ,その間に台紙の上に刺激を並べる。刺激として色(赤,青,黄)でも,形(正方形,正三角形,丸)でも分けられる9枚のカードが用いられた。画用紙で刺激を隠し,実験協力者の前に置き,目を開けさせる。画用紙を指さし,「ここを見ててね。」と言って,画用紙を取る。刺激を言語化する条件としない条件の2条件ある。提示が終わると,白画用紙で刺激を隠し,「隠すね」と言い,机の前の方に台紙ごと刺激をずらせ,再生課題を行う。
(報告)
記憶の実験終了後,別室で以下の質問に一対一で答える。実験協力者は実験者と机の角をはさんで座る。実験者は会話として不自然にならない程度に無反応であった。質問の内容は「あそこのお姉さんの所ではどんな事をしたの。」を含む6問であり,会話は全て小型のカセットテープレコーダーに録音し,これを文字化した。
分析方法
テキストマイニングは,文章を自然言語処理してカテゴリ化する部分と,カテゴリ化したデータを統計的に分析する部分に分けることができる。本研究では前者の部分をIBM SPSS Text Analytics for Surveys 4.0によって行い,後者の部分をIBM SPSS Statistics 22によって行った。
結果と考察
年少児は「形」について言及した子どもは半数以下であり,他の年齢の子どもに比べて大変少ない。また,「形」について言及しても,動詞のない場合が多い。問われたので,何か答えなくてはならないと感じ,見た物を答えたようである。年中児と年長児はよく似た傾向である。ほとんどの子どもが「形」に言及しており,名詞で終わるのではなく,動詞も付けている。この年齢になると,自分の行動について表現する力がついてくるように思われる。小学校1年生になると,「色」への言及,「並べる」という言葉を言う子どもが増えるが,格助詞の「を」はあまり使っていない。発話では目的語と動詞が未分化であるが,書いて答えた場合も同じ傾向であるのか調べてみる必要がある。また,特に分析の対象にはしていないが,「勉強」という言葉を小学1年生の2人だけが言っている。それ以前の子どもでは,「勉強」という言葉が出ていないことから,小学生になり「勉強」と言われることが増え,机に向かうことは,「勉強」と表現されたのかもしれない。小学3年生になると,「並べる」という動詞,格助詞「を」を使用する子どもが増える。また,心的動詞である「覚える」も出てくる。小学校3年生になると,「何をどうしたのか」という表現ができ,頭の中で行っている事にも言及するようになる。
上述より,子どもの発話もテキストマイニングの手法によって分析でき,発達的変化をとらえることができるということは示されたと言えよう。