1:00 PM - 3:00 PM
[PB28] 講義型授業における「問い」の提示とディスカッションおよび予習課題に対する評価
Keywords:大学生, 講義型授業
問題・目的
Titsworth & Kiewra(2004)は,大学生を対象に,事前に本学習に関する情報を与えておくことにより,本学習において情報同士の関連に関するメモ方略の使用が促進されることを明らかにしている。また安永(2006)では,学生が一人で行う予習と仲間と話し合いながら学ぶミーティングによって構成されるLTD話し合い学習法を用いることで,学習課題の理解の深化や学習に対する動機づけの向上が認められることが示唆されている。尾崎・松島(2017)では,講義型授業において,授業開始時に授業内容に関する「問い」を提示するとともに,周囲の受講生とディスカッションを行う時間を設け,授業内容に対する構えを持たせる方法を用いた結果,能動的な学習方略の使用が促進されることが示された。本研究では,「問い」の提示とディスカッションに加え,事前に予習課題を行わせる方法も併用することにより,授業中の学習活動や授業理解にどのような差異が見られるかを検討することを目的とした。
方 法
調査対象:2016年度に青年心理学系の講義を受講していた女子大学生59名。
手続き:授業期間において,ベースライン期,介入期1(問い提示のみ),介入期2(問い提示とディスカッション),介入期3(予習課題と問い提示およびディスカッション)を設けた。介入期最終回の次の週に,(1)問い提示,(2)ディスカッション,(3)予習課題を行うことによって,学習活動や授業理解に違いがみられたかどうかについて4件法で回答を求めるとともに,その選択肢を選んだ理由を複数記載するよう教示した。
結果・考察
(1)「問い」の提示について:「問い」が提示された時と提示されなかった時の違いについて,「大きな違いがあった」が15名(25.4%),「やや違いがあった」が37名(62.7%),「あまり違いはなかった」が7名(11.9%),「全く違いがなかった」は0名であった。評定の理由として,肯定的な理由が103,中立または否定的な理由が8得られた。松島・尾崎(2016)によるカテゴリを参考に肯定的な理由を分類した結果,8カテゴリが得られた。Table1に示した通り,「深く考える/自分の意見がまとまる(25.8%)」の回答が最も多く,次に,「心構えが出来る(16.7%)」,「理解促進/記憶に残る(16.7%)」の回答が多くみられた。
(2)ディスカッションについて:ディスカッションがある時とない時の違いについて,「大きな違いがあった」は17名(28.8%),「やや違いがあった」が37名(62.7%),「あまり違いはなかった」が5名(8.5%),「全く違いがなかった」は0名であった。評定の理由として,肯定的な理由が82,中立または否定的な理由が6得られた。肯定的な理由を分類した結果,7カテゴリが得られた。「新たな発見がある/視野が広がる(56.7%)」の回答が最も多く,次に,「深く考える/自分の意見がまとまる(16.7%)」,「授業に集中/積極的に聞ける(12.2%)」の回答が多くみられた。
(3)予習課題について:予習課題が課された時と課されない時の違いについて,「大きな違いがあった」は14名(23.7%),「やや違いがあった」が36名(61.0%),「あまり違いはなかった」が9名(15.3%),「全く違いがない」は0名であった。評定の理由としては,肯定的な理由が80,中立または否定的な理由が6得られた。松島・尾崎(2015)を参考に肯定的な理由を分類した結果,9カテゴリが得られた。「授業内容理解促進(28.7%)」の回答が最も多く,次に,「授業に対する心構えが出来る(23.4%)」「考えたり,意見を持つことができる(13.8%)」の回答が多くみられた。
以上より,「問い」の提示と予習課題に関しては,得られたカテゴリは若干異なるものの,考えの深まりや理解の促進,授業に対する心構え等,多く見られたものはほぼ共通していた。ディスカッションに関しては,視野の広がりが多かったことが特徴的であった。今後は動機づけや授業の捉え方等の個人特性も加味し,さらに検討していく必要がある。
Titsworth & Kiewra(2004)は,大学生を対象に,事前に本学習に関する情報を与えておくことにより,本学習において情報同士の関連に関するメモ方略の使用が促進されることを明らかにしている。また安永(2006)では,学生が一人で行う予習と仲間と話し合いながら学ぶミーティングによって構成されるLTD話し合い学習法を用いることで,学習課題の理解の深化や学習に対する動機づけの向上が認められることが示唆されている。尾崎・松島(2017)では,講義型授業において,授業開始時に授業内容に関する「問い」を提示するとともに,周囲の受講生とディスカッションを行う時間を設け,授業内容に対する構えを持たせる方法を用いた結果,能動的な学習方略の使用が促進されることが示された。本研究では,「問い」の提示とディスカッションに加え,事前に予習課題を行わせる方法も併用することにより,授業中の学習活動や授業理解にどのような差異が見られるかを検討することを目的とした。
方 法
調査対象:2016年度に青年心理学系の講義を受講していた女子大学生59名。
手続き:授業期間において,ベースライン期,介入期1(問い提示のみ),介入期2(問い提示とディスカッション),介入期3(予習課題と問い提示およびディスカッション)を設けた。介入期最終回の次の週に,(1)問い提示,(2)ディスカッション,(3)予習課題を行うことによって,学習活動や授業理解に違いがみられたかどうかについて4件法で回答を求めるとともに,その選択肢を選んだ理由を複数記載するよう教示した。
結果・考察
(1)「問い」の提示について:「問い」が提示された時と提示されなかった時の違いについて,「大きな違いがあった」が15名(25.4%),「やや違いがあった」が37名(62.7%),「あまり違いはなかった」が7名(11.9%),「全く違いがなかった」は0名であった。評定の理由として,肯定的な理由が103,中立または否定的な理由が8得られた。松島・尾崎(2016)によるカテゴリを参考に肯定的な理由を分類した結果,8カテゴリが得られた。Table1に示した通り,「深く考える/自分の意見がまとまる(25.8%)」の回答が最も多く,次に,「心構えが出来る(16.7%)」,「理解促進/記憶に残る(16.7%)」の回答が多くみられた。
(2)ディスカッションについて:ディスカッションがある時とない時の違いについて,「大きな違いがあった」は17名(28.8%),「やや違いがあった」が37名(62.7%),「あまり違いはなかった」が5名(8.5%),「全く違いがなかった」は0名であった。評定の理由として,肯定的な理由が82,中立または否定的な理由が6得られた。肯定的な理由を分類した結果,7カテゴリが得られた。「新たな発見がある/視野が広がる(56.7%)」の回答が最も多く,次に,「深く考える/自分の意見がまとまる(16.7%)」,「授業に集中/積極的に聞ける(12.2%)」の回答が多くみられた。
(3)予習課題について:予習課題が課された時と課されない時の違いについて,「大きな違いがあった」は14名(23.7%),「やや違いがあった」が36名(61.0%),「あまり違いはなかった」が9名(15.3%),「全く違いがない」は0名であった。評定の理由としては,肯定的な理由が80,中立または否定的な理由が6得られた。松島・尾崎(2015)を参考に肯定的な理由を分類した結果,9カテゴリが得られた。「授業内容理解促進(28.7%)」の回答が最も多く,次に,「授業に対する心構えが出来る(23.4%)」「考えたり,意見を持つことができる(13.8%)」の回答が多くみられた。
以上より,「問い」の提示と予習課題に関しては,得られたカテゴリは若干異なるものの,考えの深まりや理解の促進,授業に対する心構え等,多く見られたものはほぼ共通していた。ディスカッションに関しては,視野の広がりが多かったことが特徴的であった。今後は動機づけや授業の捉え方等の個人特性も加味し,さらに検討していく必要がある。