13:00 〜 15:00
[PB30] 大学生は「学ぶ」と「研究する」をどう認識するのか(1)
キーワード:大学生の発達, 発達学習, 学ぶについての認識
10歳代終盤には発達の質的変化が生じ,「学ぶこと」や「知ること」についての認識が,より相対的な意味を持つものへと変化すると考えられる。具体的な様相を明らかにするために,西垣(2016)は,大学生が「学ぶ」と「研究する」をどのような喩えを使って表現するかを検討し,喩えの内容が「水準の深浅」と「認知-人格」という軸の広がりを持つこと,「研究する」は「学ぶ」に比べると十分な言い換えを思いつかない学生が多いことなどを確認した。本研究では,西垣(2016)で比較的多くの学生が使った19語で質問票を作成し,大学の選抜性等によって「学ぶ」についての認識が異なるかを検討するために,複数大学の学生を対象に調査を行った。
方 法
調査協力者 A大学(国公立)・B大学(私立)・C大学(私立)の学生,それぞれ88名,56名,120名であった。学年による回答数の偏りがあり,結果の比較は「1年生のA-C大学比較」「A大学での1-2年生」「C大学での1-4年生比較」「B大学での3-4年生比較」を行うこととした。
調査票 A4裏表1枚の調査票に,次のように質問を配置した。「1.性別」「2.年齢」「3.性別」「4.学ぶと研究するの喩え」「5.学ぶと研究するの重要度(5件法)」「6.学ぶと研究するが19項目にどの程度あてはまるか(5件法)」。ただし項目4は本研究の分析からは除外した。
項目6の19項目は,「理解する」「深める」「吸収する」「知識を得る」「勉強する」「成長する」「広がる」「生きる」「興味・好奇心を満たす」「力をつける」「考える」「発見する」「探索する」「開拓する」「調べる」「興味を深める」「熱中する」「疑問を持つ」「極める」であった。
回答所要時間は5-8分程度。「学ぶ」と「研究する」の提示順はカウンターバランス。
結果と考察
19項目×(学ぶ・研究する)の因子分析
学ぶことと研究することについての,意味評定パターンを知るために,主因子法プロマックス回転による因子分析を行い,5因子解を抽出した(因子分析表は当日ポスターで提示)。Table1に各因子の平均得点と重要度評定の相関を示した。なお,第2・第3因子の項目への評定値平均が軒並み4点台であるなど,他因子に比べて高く評定される傾向があった。
重要度と因子ごとの平均得点の比較
左記の比較を行ったが,「1年生のA-C大学比較」でA大学生の研究重要度評定が有意に高かったこと以外には,大学による違いは見られなかった。他方,「C大学での1-4年生比較」「A大学での1-2年生」で,「学ぶ」の重要度が1年生により有意に高く評定された。「B大学での3-4年生比較」では違いがみられなかった。
それ以外に,「A大学での1-2年生」比較では,「拡張型学習」「興味追求型研究」「自己成長型研究」の回答の平均が1年生で有意に高かった。ただ,回答者の学部構成が異なる点に注意を要する。
ま と め
学ぶことの認識(重要度と意味)に,大学の選抜性による違いはなかった。研究では,研究者になることが視野に入るかによる違いが,ある可能が示された。今後,より体系的なデータの収集や,研究のとらえ方と学びへの姿勢の検討なども重要な課題になると思われる。
文献:西垣順子2016「大学生による『学ぶこと』と『研究すること』の喩え」教心第58会総会発表論文集,PB33
方 法
調査協力者 A大学(国公立)・B大学(私立)・C大学(私立)の学生,それぞれ88名,56名,120名であった。学年による回答数の偏りがあり,結果の比較は「1年生のA-C大学比較」「A大学での1-2年生」「C大学での1-4年生比較」「B大学での3-4年生比較」を行うこととした。
調査票 A4裏表1枚の調査票に,次のように質問を配置した。「1.性別」「2.年齢」「3.性別」「4.学ぶと研究するの喩え」「5.学ぶと研究するの重要度(5件法)」「6.学ぶと研究するが19項目にどの程度あてはまるか(5件法)」。ただし項目4は本研究の分析からは除外した。
項目6の19項目は,「理解する」「深める」「吸収する」「知識を得る」「勉強する」「成長する」「広がる」「生きる」「興味・好奇心を満たす」「力をつける」「考える」「発見する」「探索する」「開拓する」「調べる」「興味を深める」「熱中する」「疑問を持つ」「極める」であった。
回答所要時間は5-8分程度。「学ぶ」と「研究する」の提示順はカウンターバランス。
結果と考察
19項目×(学ぶ・研究する)の因子分析
学ぶことと研究することについての,意味評定パターンを知るために,主因子法プロマックス回転による因子分析を行い,5因子解を抽出した(因子分析表は当日ポスターで提示)。Table1に各因子の平均得点と重要度評定の相関を示した。なお,第2・第3因子の項目への評定値平均が軒並み4点台であるなど,他因子に比べて高く評定される傾向があった。
重要度と因子ごとの平均得点の比較
左記の比較を行ったが,「1年生のA-C大学比較」でA大学生の研究重要度評定が有意に高かったこと以外には,大学による違いは見られなかった。他方,「C大学での1-4年生比較」「A大学での1-2年生」で,「学ぶ」の重要度が1年生により有意に高く評定された。「B大学での3-4年生比較」では違いがみられなかった。
それ以外に,「A大学での1-2年生」比較では,「拡張型学習」「興味追求型研究」「自己成長型研究」の回答の平均が1年生で有意に高かった。ただ,回答者の学部構成が異なる点に注意を要する。
ま と め
学ぶことの認識(重要度と意味)に,大学の選抜性による違いはなかった。研究では,研究者になることが視野に入るかによる違いが,ある可能が示された。今後,より体系的なデータの収集や,研究のとらえ方と学びへの姿勢の検討なども重要な課題になると思われる。
文献:西垣順子2016「大学生による『学ぶこと』と『研究すること』の喩え」教心第58会総会発表論文集,PB33