日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PB(01-83)

ポスター発表 PB(01-83)

2017年10月7日(土) 13:00 〜 15:00 白鳥ホールB (4号館1階)

13:00 〜 15:00

[PB32] 中・高校生女子における学業的自己概念と自己価値

相良順子1, 宮本友弘2, 鈴木悦子3 (1.聖徳大学, 2.東北大学, 3.聖徳大学)

キーワード:中・高校生女子, 学業的自己概念, 自己価値

問   題
 中・高校生女子の自己価値は,国語,英語,数学における実際の学力よりも,その教科に対する「得意だ」という認知と関連があることが報告されている(相良・宮本・鈴木,2015)。こうした学力に関する自己認知は学業的自己概念とも呼ばれる。本稿では,国語,数学,英語,理科,社会,音楽,体育,美術,技術家庭の9教科すべてに対し,学業的自己概念と自己価値との関連を検討する。まず,中・高校生の3年間の縦断データを用い,「得意である」という認識の構造の変化を分析し,中学生と高校生とを比較する。次に,それが自己価値とどう関連するかを検討する。
方   法
 調査対象 大学の附属の女子中高一貫校の生徒を対象にした。201X年に入学した中学生1 年次(87名),2年次83名),3 年次(69名)のデータを使用した。同様に,201X年に入学した高校生1年次(166名),高校2年次(150 名),3年次(164名)のデータを使用した。
 調査時期 201X年から3年間,毎年7月に調査を実施した。
 手続き 質問紙調査法。調査票は担任を通じて配布,回収された。
 内容 ①自己価値 児童用コンピテンス尺度(桜井,1992)の自己価値を使用した。各10項目,4件法(1点~4点)による回答。 ②学業的自己概念:国語,数学,英語,理科,社会,体育,音楽,美術,技術家庭についてどのくらい得意かどうか5件法で尋ねた。
 本研究は,聖徳大学「ヒューマンスタディに関する倫理審査委員会」の承認を得て実施した。
結   果
学業的自己概念の構造
 9教科についての評価を因子分析(主因子法・プロマックス回転)した結果,Table1(中学2年),Table2(高校2年)に示した。中学2年生では,数学と理科に加えて,美術,技術家庭,体育が1因子としてまとまっていた。一方,高校2年生では,国語と社会の文系科目,理科と数学の理系科目,および美術,家庭,体育,音楽など実技系がまとまった因子として抽出された。
学業的自己概念と自己評価との関連
 各教科の得意の程度と自己価値との相関を中学生と高校生生それぞれ学年別に算出したところ,中学生では9科目の「得意」認知のすべてについて自己価値と.30~.55の有意な相関が得られた。一方,高校生では,3学年とも体育,音楽,美術,技術家庭の実技系科目のみ自己価値と.25~.28の有意な相関が得られた。
考   察
 中学生の学業的自己概念は,高校生と異なり,理系科目,文系科目と技術系科目という分化はなされていないことが示された。高校生において技術系科目の学業的自己概念と自己価値に正の相関があるという結果から,教科科目が偏差値などで客観的に示され自己評価を高めにくい一方で,技術系科目は授業の中での実技や作品等の課題での達成が自己評価に反映されやすいことが考えられる。
付   記
本研究は科研費(26380949)の助成を受けた。