13:00 〜 15:00
[PB42] 大学生を対象としたライティング反転授業におけるeラーニングの効果
キーワード:反転授業, 文章産出, eラーニング
背 景
米国で生まれた反転授業が日本に紹介されて久しい。反転授業とは,教室授業の前にあらかじめeラーニング等により基本的な知識を学び,教室授業ではその知識の定着や応用のための学習活動を行う授業形態を指す(重田,2014)。
本研究では,公立X大学1年生(履修者269人)を対象とした文章作成授業において,反転授業を導入した。反転授業は,文章作成授業に適した授業形態と言える。文章を書けるようになるには,まず文章執筆に関する知識や技能を学習しなければならない。さらに,その知識や技能を定着させるために,実際に文章を書き,ピア・レビュー等によりフィードバックを受ける必要がある。反転授業ならば,知識・技能の習得をeラーニング(以下,eL)で事前に行い,作成した文章を教室授業でピア・レビューできるため,効率的かつ効果的な学習が期待できる。
本研究では,特にeLによる学習効果に着目する。反転授業においてeLで知識や技能を学んだことが学習者の文章の出来具合に影響を与えるかどうかを共分散構造分析により検討する。
方 法
対象となる文章作成授業の各回の授業の流れは,以下のとおりであった。
1)教室授業の前に,文章作成に関するeLを視聴する。毎回,10分程度の音声入りビデオを5本程度視聴する。視聴場所は学内・学外でも可。
2)文章作成の宿題に取り組み,大学の学習管理システムに提出する。
3)教室授業に出席し,eLの内容に関する小テストを受ける。小テストは学習管理システムを利用しており,選択式。解答時間は3分,問題数は10問10点満点。
4)宿題について教員が解説する。
5)4人程度のグループで,宿題についてピア・レビューを行う。
6)ピア・レビューの結果をもとに,宿題を各自修正する。
この1)~6)を12回繰り返した。そのうち,前半は文章執筆プロセスに慣れるために,グラフを解説する課題(500字程度)に取り組んだ。後半は,最終課題として,科学技術に関する自由テーマの意見文レポート(1500字程度)を完成させた。最終課題については,ルーブリック(23項目×3段階,98点満点)に基づき,担当教員およびTAが採点を行った。
なお,学習者の授業前の論理的思考力を把握するために,第1回の授業でPreテストを行った。Preテストは,トピック文選択問題3問,サポート文の並べ替え問題3問,論理的関係選択問題20問の合計26問26点満点であった。
結果および考察
Preテストとすべての小テストに解答し,最終課題を提出した116人を分析対象とした。Preテストの平均は26点満点中16.94(SD=3.41),全12回分の小テストの平均は120点満点中96.25(SD=9.28),最終課題の平均は98点満点中74.73(SD=9.63)であった。
これらの因果関係のモデルについて,共分散構造分析を用いて検証した。分析にはIBM SPSS Amos Version23.0を用いた。適合度指標は,GFI=.999,AGFI=.995,CFI=1.000,RMSEA=.000となった(Figure1参照)。適合度指標により,この因果関係モデルは妥当と判断された。
モデルでは,Preテスト得点から小テスト合計点への正の影響が認められた(β=.35, p<.01)。また,小テスト合計点から最終課題得点への正の影響が認められた(β=.36, p<.01)。しかしながら,Preテスト得点から最終課題得点へのパスは有意ではなかった。すなわち,論理的思考力はeLの内容を理解するのに必要であるが,論理的思考力だけではレポートを執筆できるようにはならず,eLの内容を理解することにより,レポートを執筆できるようになると考えられる。
引用文献
重田勝介. (2014). 反転授業 ICT による教育改革の進展. 情報管理, 56(10), 677-684.
米国で生まれた反転授業が日本に紹介されて久しい。反転授業とは,教室授業の前にあらかじめeラーニング等により基本的な知識を学び,教室授業ではその知識の定着や応用のための学習活動を行う授業形態を指す(重田,2014)。
本研究では,公立X大学1年生(履修者269人)を対象とした文章作成授業において,反転授業を導入した。反転授業は,文章作成授業に適した授業形態と言える。文章を書けるようになるには,まず文章執筆に関する知識や技能を学習しなければならない。さらに,その知識や技能を定着させるために,実際に文章を書き,ピア・レビュー等によりフィードバックを受ける必要がある。反転授業ならば,知識・技能の習得をeラーニング(以下,eL)で事前に行い,作成した文章を教室授業でピア・レビューできるため,効率的かつ効果的な学習が期待できる。
本研究では,特にeLによる学習効果に着目する。反転授業においてeLで知識や技能を学んだことが学習者の文章の出来具合に影響を与えるかどうかを共分散構造分析により検討する。
方 法
対象となる文章作成授業の各回の授業の流れは,以下のとおりであった。
1)教室授業の前に,文章作成に関するeLを視聴する。毎回,10分程度の音声入りビデオを5本程度視聴する。視聴場所は学内・学外でも可。
2)文章作成の宿題に取り組み,大学の学習管理システムに提出する。
3)教室授業に出席し,eLの内容に関する小テストを受ける。小テストは学習管理システムを利用しており,選択式。解答時間は3分,問題数は10問10点満点。
4)宿題について教員が解説する。
5)4人程度のグループで,宿題についてピア・レビューを行う。
6)ピア・レビューの結果をもとに,宿題を各自修正する。
この1)~6)を12回繰り返した。そのうち,前半は文章執筆プロセスに慣れるために,グラフを解説する課題(500字程度)に取り組んだ。後半は,最終課題として,科学技術に関する自由テーマの意見文レポート(1500字程度)を完成させた。最終課題については,ルーブリック(23項目×3段階,98点満点)に基づき,担当教員およびTAが採点を行った。
なお,学習者の授業前の論理的思考力を把握するために,第1回の授業でPreテストを行った。Preテストは,トピック文選択問題3問,サポート文の並べ替え問題3問,論理的関係選択問題20問の合計26問26点満点であった。
結果および考察
Preテストとすべての小テストに解答し,最終課題を提出した116人を分析対象とした。Preテストの平均は26点満点中16.94(SD=3.41),全12回分の小テストの平均は120点満点中96.25(SD=9.28),最終課題の平均は98点満点中74.73(SD=9.63)であった。
これらの因果関係のモデルについて,共分散構造分析を用いて検証した。分析にはIBM SPSS Amos Version23.0を用いた。適合度指標は,GFI=.999,AGFI=.995,CFI=1.000,RMSEA=.000となった(Figure1参照)。適合度指標により,この因果関係モデルは妥当と判断された。
モデルでは,Preテスト得点から小テスト合計点への正の影響が認められた(β=.35, p<.01)。また,小テスト合計点から最終課題得点への正の影響が認められた(β=.36, p<.01)。しかしながら,Preテスト得点から最終課題得点へのパスは有意ではなかった。すなわち,論理的思考力はeLの内容を理解するのに必要であるが,論理的思考力だけではレポートを執筆できるようにはならず,eLの内容を理解することにより,レポートを執筆できるようになると考えられる。
引用文献
重田勝介. (2014). 反転授業 ICT による教育改革の進展. 情報管理, 56(10), 677-684.