日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PB(01-83)

ポスター発表 PB(01-83)

2017年10月7日(土) 13:00 〜 15:00 白鳥ホールB (4号館1階)

13:00 〜 15:00

[PB48] 大学からのサポートと大学の魅力の関連

学生の性格の調整効果

高木浩人 (愛知学院大学)

キーワード:大学からのサポート, 大学の魅力, Big5

 大学にとって,在籍する学生に対して何ができるのか,何をすべきであるのかは,ますます重要性を増している。このような問題意識から高木(2006)は大学からのサポートが大学の魅力を高め,それが学生の充実感を高めることなどを示した。さらに高木(2005)は大学からのサポートを測定する尺度を作成し,「教員・授業の充実」などが大学の魅力に有意な正の影響を及ぼしていることを見いだした。また,「教員・授業の充実」は,学生の希望進路に関わりなく,大学の魅力と密接に結びつくことも見いだされている(高木,2006)。このように「教員・授業の充実」の重要性は繰り返し示されてきたが,とくにどのような学生にとって重要なのだろうか。また,これまで大学の魅力との直接の関連が見出されていないサポートもあるが,ある学生にとっては重要であるかもしれない。そこで本研究では,大学からのサポートと大学の魅力の関連における,学生の性格の調整効果について検討する。
方   法
 調査対象:私立総合大学(愛知県内一校)の学生136名(男性50名,女性62名,未記入24名)。
 手続き:授業時に質問紙を配布,記入後に回収。
 質問紙:①大学からのサポート:高木(2005)で作成された尺度から30項目。②大学の魅力:Evansら(1986)(Hogg,1992より引用)を参照し8項目。③Big5:和田(1991)より20項目。すべて5件法。
結果と考察
 大学からのサポートの因子分析の結果,「教員・授業の充実」(α=.787),「教学施設・資格支援の充実」(α=.764),「事務職員の充実」(α=.806)の3因子が抽出された。他の尺度のα値は以下の通りであった。大学の魅力(.851),外向性(.725),神経症傾向(.823),開放性(.666),誠実性(.773),協調性(.793)。             
 重回帰分析:大学の魅力を目的変数,性別,大学からのサポート3要素,Big5の1要素,Big5の1要素と大学からのサポート1要素の交互作用項を説明変数とする階層的重回帰分析を繰り返し行ったところ,大学の魅力と「教員・授業の充実」は有意な正の関連,神経症傾向は有意な負の関連を示し,交互作用項のうち誠実性×「事務職員の充実」,神経症傾向×「事務職員の充実」,神経症傾向×「教員・授業の充実」が有意であった。それらを図示したのがFigure1~3である。「事務職員の充実」の単純主効果は,誠実性が低い場合有意ではなかったが(b=-.104,n.s.),誠実性が高い場合有意傾向が見られた(b=.200,p<.07)(Figure1)。神経症傾向の高低によらず「事務職員の充実」の単純主効果は有意でなかった(Figure2)。「教員・授業の充実」の単純主効果は,神経症傾向が低い場合も高い場合も有意であった(順にb=.494,p<
.001;b=.862,p<.001)(Figure3)。 
 誠実性の高い学生にとって事務職員の充実が大学の魅力を高める傾向がある。全体で組織の魅力と関連しないサポートであっても,対象によっては重要であることが示唆される。神経症傾向の高い学生において,教員・授業が充実していることが大学の魅力を強く高めることが注目される。