日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PB(01-83)

ポスター発表 PB(01-83)

2017年10月7日(土) 13:00 〜 15:00 白鳥ホールB (4号館1階)

13:00 〜 15:00

[PB50] 看護系大学生の休学や留年における有効な支援

松本淳子 (長野県看護大学)

キーワード:College Students of Nursing, Temporary absence from school, Repeating a year

目   的
 看護系大学生に関しては,入学時から職業の方向性を決定している学生が多いが,様々な事情から看護職を志望しているわけではなく入学した学生も多い。看護職への強い動機を持たない学生にとっては,学業に関するストレスが蓄積する場合があり,進路変更も難しくなることがある。看護学生を対象にした調査では,学校を「やめたいと思ったことがある」が63.7%であり(本田他,1994),やめたいと思った理由に関しては,「講義に興味が持てない」,「看護師の適性」,「自己の能力」が挙げられている(小林・兵藤,2007)。したがって,学習やその他の面で困難を抱えて休学や留年する学生も少なくはない。しかし,カリキュラムが過密であり,将来の職業を決定している者が周囲に多い看護学生においては,多くの一般的な学部と異なる支援が必要な可能性が考えられる。本研究では,看護学生において,休学や留年の際にどのような支援が必要であるのかを検討した。
方   法
調査対象者:看護学部に在籍する女子大学生3名と看護学部を1年以内に卒業した女性1名。全員留年経験があり,うち2名は休学経験があった。
調査内容:以下の質問項目を含む半構成的面接を行った。
1.休学について
 休学を決めた時期,休学時期,休学を決めた理由,休学前の大学生活に関する相談内容,休学中の大学生活に関する相談内容,復学した時期,復学を決めた理由,復学後の大学生活に関する相談内容等
2.留年について
 留年した時期,留年の理由,留年が決定してから実際に留年するまでの間の大学生活に関する相談内容,就学の継続を決めた理由,留年中の大学生活に関する相談内容等
3.休学と留年について
 どのような支援が有効だったか,休学や留年期間中にどのような支援があればよかったと思うか,留年や休学したことに関して現在どのように考えているか
結果と考察
1.各時期の相談内容
 各時期に共通した悩みが挙げられた。休学前や留年前においては,今後の講義,人間関係,身体面での困難,家族への説明に対する不安,大学生活への不満が挙げられた。休学中は,今後の講義,人間関係,復学するか否かの悩みが挙げられた。復学後や留年後は,講義,人間関係,身体面に関する悩みが挙げられた。どの時期においても,今後の講義や人間関係に関する悩みが多くみられた。
2.援助者とその支援内容
 相談相手には,大学教職員,大学での友人,家族が挙げられた。大学教職員では,話を傾聴する,話を肯定的に受け止める,相談内容に沿った選択肢を多く提供する,相談内容に沿って適切な指示やアドバイスをする,一対一の話しやすい場を設ける,積極的に対象者に関わるといった支援が挙げられた。友人では,話を傾聴する,気持ちを共有する,応援するという支援が挙げられた。家族(特に母親)では,アドバイスをもらうという支援が挙げられた。
3.援助者への相談頻度
 大学教職員,友人,家族という順に多く,特に大学教職員が多かった。
4.有効と感じた支援
 Table1に示したように,主に気持ちを傾聴するという支援を有効と感じていたが,大学教職員と友人の両者が行っていた支援すべてが有効であると感じられていた。
 以上のことから,休学や留年する看護系大学生においては,学生生活をよく理解している大学教職員や友人が積極的に関わり,気持ちを理解していくことが重要な役割を果たしていると考えられる。また,そのような支援から,自分自身の今後を考えることにつながると予想される。