1:00 PM - 3:00 PM
[PB51] 社会的スキルとオンライン上のコミュニケーションスキルの関連性
Keywords:コミュニケーション, 社会的スキル
はじめに
石川(2014)は,社会的スキルの高い者の方が低い者よりもオンライン上において他者と良好な関わり方をしている傾向を明らかとした。また,石川・平田(2016)はコミュニケーションスキルの高い者の方が低い者よりもオンライン上のトラブルに対処できる傾向を明らかとした。これらの点より,オンライン上における良好で円滑な対人関係を構築・維持するためには,社会的スキルやコミュニケーションスキルが重要であると考えられる。しかし,石川・平田(2016)においては受信・発信に限定したコミュニケーションスキルの検討に留まっている。そこで本研究では,オンライン上の固有の概念を含むコミュニケーションスキルの特性に焦点を当て,日常の社会的スキルとの関連性について検討することを目的とした。
方 法
【調査対象・時期】情報教育関連の講義科目の受講者である学部生と大学院生計158名(男80名,女77名,無記入1名/18~24歳)を対象とし,質問紙調査を授業時間内に実施した。
【調査項目】調査対象者には,a. 対人コミュニケーション全般に関わる基本スキルを測定する尺度(ENDE2)15項目(堀毛,1994),b. ENDE2を参考として作成したオンライン上のコミュニケーションスキルを測定する尺度(18項目),c. 社会的スキル尺度(菊池,1988),d. オンライン上のさまざまな振る舞いに関する複数の項目の回答を求めた。今回はこのうちbおよびcを分析対象としたが,いずれも5件法による回答方法を採用した。
結果および考察
はじめに,社会的スキル尺度の因子分析(最尤法,固有値1.0以上の4因子を抽出,バリマックス回転,累積寄与率41.98%)を行った。因子負荷量の高い項目内容を参考とし,第i因子を基礎コミュニケーション力,第ii因子を問題解決力,第iii因子をトラブル対処力,第iv因子を社交性と命名した。また,オンライン上のコミュニケーションスキルの因子分析(最尤法,固有値1.0以上の5因子を抽出,バリマックス回転,累積寄与率50.86%)を行った。因子負荷量の高い項目内容を参考とし,第I因子を解読,第II因子を記号化,第III因子を感情的表出,第IV因子を推察,第V因子を非文字表現と命名した。
続いて,各因子の因子負荷量が.50以上の項目の素点平均を各因子の指標とし,社会的スキルの4因子を独立変数,オンライン上のコミュニケーションスキルの全体の素点平均および5因子を従属変数として変数増減法による重回帰分析を行い,有意となるモデルを抽出した(Table 1)。今回対象とした独立変数間は最大でVIF=1.29であり,多重共線性の可能性は低いと判断した。第III因子(感情的表出)を従属変数とした分析においては,有意となるモデルが抽出されなかった。
オンライン上のコミュニケーションスキルは,社会的スキルの問題解決力やトラブル対処力の関連が複数の因子で示された。一方,社会的スキルの基礎コミュニケーション力は第IV因子のみが有意傾向であった。したがって,オンライン上のコミュニケーションスキルは,単なる受信(解読),発信(記号化)のスキルの側面のみならず,多様な社会的スキルで構成されていると考えられる。今後は双方のスキルの因果関係について検討することが課題である。
引用文献
堀毛一也(1994)恋愛関係の発展・崩壊と社会的スキル. 実験社会心理学研究, 34(2), 116-128.
石川真(2014) 社会的スキルの違いがネットワーク上の他者との関わり方に及ぼす影響.上越教育大学研究紀要, 33, 11-19.
石川真・平田乃美(2016) 社会的スキルの違いがネット上のトラブル対処に及ぼす影響.日本社会心理学会第57回大会発表論文集, 376.
菊池章夫(1988)思いやりを科学する,川島書店.
本研究はJSPS科研費15K01751の助成を受けた。
石川(2014)は,社会的スキルの高い者の方が低い者よりもオンライン上において他者と良好な関わり方をしている傾向を明らかとした。また,石川・平田(2016)はコミュニケーションスキルの高い者の方が低い者よりもオンライン上のトラブルに対処できる傾向を明らかとした。これらの点より,オンライン上における良好で円滑な対人関係を構築・維持するためには,社会的スキルやコミュニケーションスキルが重要であると考えられる。しかし,石川・平田(2016)においては受信・発信に限定したコミュニケーションスキルの検討に留まっている。そこで本研究では,オンライン上の固有の概念を含むコミュニケーションスキルの特性に焦点を当て,日常の社会的スキルとの関連性について検討することを目的とした。
方 法
【調査対象・時期】情報教育関連の講義科目の受講者である学部生と大学院生計158名(男80名,女77名,無記入1名/18~24歳)を対象とし,質問紙調査を授業時間内に実施した。
【調査項目】調査対象者には,a. 対人コミュニケーション全般に関わる基本スキルを測定する尺度(ENDE2)15項目(堀毛,1994),b. ENDE2を参考として作成したオンライン上のコミュニケーションスキルを測定する尺度(18項目),c. 社会的スキル尺度(菊池,1988),d. オンライン上のさまざまな振る舞いに関する複数の項目の回答を求めた。今回はこのうちbおよびcを分析対象としたが,いずれも5件法による回答方法を採用した。
結果および考察
はじめに,社会的スキル尺度の因子分析(最尤法,固有値1.0以上の4因子を抽出,バリマックス回転,累積寄与率41.98%)を行った。因子負荷量の高い項目内容を参考とし,第i因子を基礎コミュニケーション力,第ii因子を問題解決力,第iii因子をトラブル対処力,第iv因子を社交性と命名した。また,オンライン上のコミュニケーションスキルの因子分析(最尤法,固有値1.0以上の5因子を抽出,バリマックス回転,累積寄与率50.86%)を行った。因子負荷量の高い項目内容を参考とし,第I因子を解読,第II因子を記号化,第III因子を感情的表出,第IV因子を推察,第V因子を非文字表現と命名した。
続いて,各因子の因子負荷量が.50以上の項目の素点平均を各因子の指標とし,社会的スキルの4因子を独立変数,オンライン上のコミュニケーションスキルの全体の素点平均および5因子を従属変数として変数増減法による重回帰分析を行い,有意となるモデルを抽出した(Table 1)。今回対象とした独立変数間は最大でVIF=1.29であり,多重共線性の可能性は低いと判断した。第III因子(感情的表出)を従属変数とした分析においては,有意となるモデルが抽出されなかった。
オンライン上のコミュニケーションスキルは,社会的スキルの問題解決力やトラブル対処力の関連が複数の因子で示された。一方,社会的スキルの基礎コミュニケーション力は第IV因子のみが有意傾向であった。したがって,オンライン上のコミュニケーションスキルは,単なる受信(解読),発信(記号化)のスキルの側面のみならず,多様な社会的スキルで構成されていると考えられる。今後は双方のスキルの因果関係について検討することが課題である。
引用文献
堀毛一也(1994)恋愛関係の発展・崩壊と社会的スキル. 実験社会心理学研究, 34(2), 116-128.
石川真(2014) 社会的スキルの違いがネットワーク上の他者との関わり方に及ぼす影響.上越教育大学研究紀要, 33, 11-19.
石川真・平田乃美(2016) 社会的スキルの違いがネット上のトラブル対処に及ぼす影響.日本社会心理学会第57回大会発表論文集, 376.
菊池章夫(1988)思いやりを科学する,川島書店.
本研究はJSPS科研費15K01751の助成を受けた。