13:00 〜 15:00
[PB55] 大学生の日常的な抑うつに関わるストレッサーと対処行動
キーワード:日常的な抑うつ, ストレッサー, 対処行動
目 的
抑うつといっても,うつ病が疑われる病的なものから,落ち込むといった比較的軽く日常的に体験される抑うつまでさまざまである。後者の日常的な抑うつの方が経験頻度ははるかに多いであろう。大学生は学生生活においてどのようなストレッサーに対し日常的な抑うつを経験し,またどのようにしてそれに対処しているのであろうか。
嶋(1992)は大学生が日常的に経験するストレッサーとして,実存的ストレッサー,対人ストレッサー,大学・学業ストレッサー,物理・身体的ストレッサーの4つをあげている。
本研究ではこれらのストレッサーを取り上げ,落ち込みすなわち日常的な抑うつに関するストレス反応と対処行動の個人差について検討する。
方 法
〈調査対象者〉
大学生190名。そのうち10名の質問紙の回答に不備があったため,分析には男性80名,女性100名,計180名のデータを使用した。
〈質問紙調査〉
調査で使用した質問紙は,表紙を含めて7ページである。調査実施時期は9月下旬であった。
①ストレス経験と落ち込みの程度:嶋(1992)の大学生用日常生活ストレッサー尺度に回答を求めた上で,最近3ヶ月の間で1番落ち込んだことについて,いつ頃のことか,落ち込んだ程度,落ち込みから立ち直ることができたか,どのくらいの期間で立ち直ることができたのかについて,質問した。
②ストレス反応および対処行動:尾関ら(1991)のストレス反応尺度,およびコ―ピング尺度を使用した。
③個人差要因:柳井ら(1987)の新性格検査を使用した。
結果と考察
本研究では,落ち込みに関するストレッサー,ストレス反応,対処行動における,性格や性別による個人差について検討した。
大学生が最近3ヶ月で最も落ち込んだストレッサーは実存的ストレッサーであった。これは最近の3ヶ月内に夏休みが含まれており,その夏休みという長期間の休みの間に,自分を見つめる機会があったのかもしれない。
次に,ストレッサーとストレス反応の関連において性別や性格による個人差が見られた。特に女性ではストレス反応の「抑うつ」が,どのようなストレッサーにおいても,男性よりも反応が高かった。またストレス反応の「抑うつ」が高いほど,「問題焦点型」の対処を行っていることがわかった。
性格特性との関連については,「抑うつ性」が高い人は,大学・学業ストレッサー以外で落ち込みやすくなり,全てのストレス反応が高い傾向がみられた。さらに「非協調性」も「抑うつ性」とほぼ同様の結果であった。これらは,男性よりも女性に顕著に見られることから,女性の方が抑うつ反応に対してリスクが高いのかもしれない。
大学・学業ストレッサーに関しては,男女間で異なる結果がみられた。1番落ち込んだ事がこのストレッサーの場合,ストレス反応の「不安」と「怒り」が高く,対処行動として,女性は回避していこうとするが,男性では積極的に対峙し自分を鼓舞することで問題を解決していくという傾向がみられる。男性は,試験が大変ということや,成績が思わしくないといった事で落ち込むと,自ら積極的に問題を解決していくが,同時に不安や怒りといった反応がみられる。性格特性では,男性は「攻撃性」,「神経質」,「劣等感」が高いほど,大学・学業ストレッサーに対する落ち込みが大きく,女性では「非協調性」のみ関連がみられる。以上のことから大学・学業ストレッサーによって落ち込むということは,男性においてより顕著であるといえる。
性格特性と対処行動の関連性についても性差が見られた。女性では性格特性の「攻撃性」「進取性」と対処行動の「情動焦点型」と関連がみられ,男性では「攻撃性」「非協調性」「神経質」と対処行動の「問題焦点型」「回避・逃避型」に関連がある。
本研究での課題としては,落ち込みから回復した者と,していない者に分けてさらに分析するつもりであったが,今回のデータ数が双方とも少ないためできなかった。また落ち込んだ時期や学年によって,落ち込むストレッサーや対処行動に差が生じるとも考えられるため,異なる調査時期での分析,あるいは学年別の分析等が必要である。
抑うつといっても,うつ病が疑われる病的なものから,落ち込むといった比較的軽く日常的に体験される抑うつまでさまざまである。後者の日常的な抑うつの方が経験頻度ははるかに多いであろう。大学生は学生生活においてどのようなストレッサーに対し日常的な抑うつを経験し,またどのようにしてそれに対処しているのであろうか。
嶋(1992)は大学生が日常的に経験するストレッサーとして,実存的ストレッサー,対人ストレッサー,大学・学業ストレッサー,物理・身体的ストレッサーの4つをあげている。
本研究ではこれらのストレッサーを取り上げ,落ち込みすなわち日常的な抑うつに関するストレス反応と対処行動の個人差について検討する。
方 法
〈調査対象者〉
大学生190名。そのうち10名の質問紙の回答に不備があったため,分析には男性80名,女性100名,計180名のデータを使用した。
〈質問紙調査〉
調査で使用した質問紙は,表紙を含めて7ページである。調査実施時期は9月下旬であった。
①ストレス経験と落ち込みの程度:嶋(1992)の大学生用日常生活ストレッサー尺度に回答を求めた上で,最近3ヶ月の間で1番落ち込んだことについて,いつ頃のことか,落ち込んだ程度,落ち込みから立ち直ることができたか,どのくらいの期間で立ち直ることができたのかについて,質問した。
②ストレス反応および対処行動:尾関ら(1991)のストレス反応尺度,およびコ―ピング尺度を使用した。
③個人差要因:柳井ら(1987)の新性格検査を使用した。
結果と考察
本研究では,落ち込みに関するストレッサー,ストレス反応,対処行動における,性格や性別による個人差について検討した。
大学生が最近3ヶ月で最も落ち込んだストレッサーは実存的ストレッサーであった。これは最近の3ヶ月内に夏休みが含まれており,その夏休みという長期間の休みの間に,自分を見つめる機会があったのかもしれない。
次に,ストレッサーとストレス反応の関連において性別や性格による個人差が見られた。特に女性ではストレス反応の「抑うつ」が,どのようなストレッサーにおいても,男性よりも反応が高かった。またストレス反応の「抑うつ」が高いほど,「問題焦点型」の対処を行っていることがわかった。
性格特性との関連については,「抑うつ性」が高い人は,大学・学業ストレッサー以外で落ち込みやすくなり,全てのストレス反応が高い傾向がみられた。さらに「非協調性」も「抑うつ性」とほぼ同様の結果であった。これらは,男性よりも女性に顕著に見られることから,女性の方が抑うつ反応に対してリスクが高いのかもしれない。
大学・学業ストレッサーに関しては,男女間で異なる結果がみられた。1番落ち込んだ事がこのストレッサーの場合,ストレス反応の「不安」と「怒り」が高く,対処行動として,女性は回避していこうとするが,男性では積極的に対峙し自分を鼓舞することで問題を解決していくという傾向がみられる。男性は,試験が大変ということや,成績が思わしくないといった事で落ち込むと,自ら積極的に問題を解決していくが,同時に不安や怒りといった反応がみられる。性格特性では,男性は「攻撃性」,「神経質」,「劣等感」が高いほど,大学・学業ストレッサーに対する落ち込みが大きく,女性では「非協調性」のみ関連がみられる。以上のことから大学・学業ストレッサーによって落ち込むということは,男性においてより顕著であるといえる。
性格特性と対処行動の関連性についても性差が見られた。女性では性格特性の「攻撃性」「進取性」と対処行動の「情動焦点型」と関連がみられ,男性では「攻撃性」「非協調性」「神経質」と対処行動の「問題焦点型」「回避・逃避型」に関連がある。
本研究での課題としては,落ち込みから回復した者と,していない者に分けてさらに分析するつもりであったが,今回のデータ数が双方とも少ないためできなかった。また落ち込んだ時期や学年によって,落ち込むストレッサーや対処行動に差が生じるとも考えられるため,異なる調査時期での分析,あるいは学年別の分析等が必要である。