13:00 〜 15:00
[PB81] 異質な他者とのコミュニケーション尺度作成の試み
アドラーの共同体感覚に着目して
キーワード:アドラー, 勇気, 越境
問 題
昨今,日本国内においても異なる文化の人と関わる機会が増えつつある。このような自分とは活動文脈が異なる他者との間で交わされる相互交流は「越境」と呼ばれる (Engeström, 2001)。越境に際しては,活動文脈を共有する者に対しては必要がない前提的情報も含めて言語化しなければならないという困難さをともなう。加えて,英語等の外国語を用いて交流を行わねばならない場合,自国語による日常会話とは比較にならないほどの複雑な言語操作力と心的緊張をともなうことは容易に予想できる。このような交流を行う上で,自分から一歩踏み出し,相手に話しかけようとする姿勢が必要と考えられる。このような心性を示す概念として,問題や困難に立ち向かうための活力としてアドラー(1982)が提唱した「共同体感覚」との関連が予想される。
しかし異質な他者との外国語を使用した越境的交流において,積極的に交流に参加しようとする心理特性を測定するための尺度は今まで存在しなかった。そこで本研究では,一定の英語学習経験がある大学生を対象に,自ら英語を用いて積極的に越境を行おうとする者の特性を測定する尺度の構成を試みる。またEvans(1997)の共同体感覚を反映した「勇気づけ尺度」との比較を通じ,アドラーのいう勇気との関連についても検討を行う。
方 法
調査時期:2017年5月
調査対象者:東京都内国立大学・大学生計59名(男性19名・女性40名,平均年齢19.74)
質問:外国語学習歴,TOEICスコア,海外渡航歴の有無とその期間,英語を使用した越境経験(5件法)について回答を求めた。そして初対面の他者に対して積極的に話しかけられる人物の特徴について,自由記述式で回答を求めた。
結 果
点数の分類に関しては,最新のTOEICテスト(2017年4月)の平均点585点を基準に,それ未満の点数対象者を分析から除外した。また,コミュニケーション経験の質問に対して「とてもよくある」,もしくは「よくある」以外の解答をした対象者についても分析から除外した。その結果,最終的に20名(男性6名・女性14名:平均年齢21.18(SD=1.56))が分析の対象となった。
KJ法(川喜田, 1970)を用いて分類を行った。まず,著者が自由記述の回答結果を一覧にしてまとめ,カテゴリー化を行った。その結果,最終的に「自信」「社交性」「親しみやすさ」「寛容性」「興味・関心」の5カテゴリーに分類された。以上の回答について,Evans(1997)の勇気づけ尺度を構成する項目と比較したところ,「寛容性」に分類された回答と共通する傾向が分かった。
著者を含む心理学及び英語教育学を専攻する大学院生2名により,分類の妥当性について協議を行った。その結果,カテゴリー内の分類で多少の変動があったものの,分類自体は適切であるという結論に至った。
考 察
本調査では,「寛容性」に分類された回答とアドラー・勇気づけとの間の高い共通性が認められた。また相手への関心を示す「興味・関心」は,聞き手の視点に対して肯定的な情動を示し自らの視点と参照する交流が,生産的・持続的な越境形態であるとする田島(2016)の指摘と関連するものといえる。
今後は,この予備調査を通じて作成された項目を元に質問紙調査を行い,信頼性および妥当性を検討するとともに,生産的な越境を遂行可能とする心理特性と勇気づけ尺度との関係についても検証を行う予定である。
昨今,日本国内においても異なる文化の人と関わる機会が増えつつある。このような自分とは活動文脈が異なる他者との間で交わされる相互交流は「越境」と呼ばれる (Engeström, 2001)。越境に際しては,活動文脈を共有する者に対しては必要がない前提的情報も含めて言語化しなければならないという困難さをともなう。加えて,英語等の外国語を用いて交流を行わねばならない場合,自国語による日常会話とは比較にならないほどの複雑な言語操作力と心的緊張をともなうことは容易に予想できる。このような交流を行う上で,自分から一歩踏み出し,相手に話しかけようとする姿勢が必要と考えられる。このような心性を示す概念として,問題や困難に立ち向かうための活力としてアドラー(1982)が提唱した「共同体感覚」との関連が予想される。
しかし異質な他者との外国語を使用した越境的交流において,積極的に交流に参加しようとする心理特性を測定するための尺度は今まで存在しなかった。そこで本研究では,一定の英語学習経験がある大学生を対象に,自ら英語を用いて積極的に越境を行おうとする者の特性を測定する尺度の構成を試みる。またEvans(1997)の共同体感覚を反映した「勇気づけ尺度」との比較を通じ,アドラーのいう勇気との関連についても検討を行う。
方 法
調査時期:2017年5月
調査対象者:東京都内国立大学・大学生計59名(男性19名・女性40名,平均年齢19.74)
質問:外国語学習歴,TOEICスコア,海外渡航歴の有無とその期間,英語を使用した越境経験(5件法)について回答を求めた。そして初対面の他者に対して積極的に話しかけられる人物の特徴について,自由記述式で回答を求めた。
結 果
点数の分類に関しては,最新のTOEICテスト(2017年4月)の平均点585点を基準に,それ未満の点数対象者を分析から除外した。また,コミュニケーション経験の質問に対して「とてもよくある」,もしくは「よくある」以外の解答をした対象者についても分析から除外した。その結果,最終的に20名(男性6名・女性14名:平均年齢21.18(SD=1.56))が分析の対象となった。
KJ法(川喜田, 1970)を用いて分類を行った。まず,著者が自由記述の回答結果を一覧にしてまとめ,カテゴリー化を行った。その結果,最終的に「自信」「社交性」「親しみやすさ」「寛容性」「興味・関心」の5カテゴリーに分類された。以上の回答について,Evans(1997)の勇気づけ尺度を構成する項目と比較したところ,「寛容性」に分類された回答と共通する傾向が分かった。
著者を含む心理学及び英語教育学を専攻する大学院生2名により,分類の妥当性について協議を行った。その結果,カテゴリー内の分類で多少の変動があったものの,分類自体は適切であるという結論に至った。
考 察
本調査では,「寛容性」に分類された回答とアドラー・勇気づけとの間の高い共通性が認められた。また相手への関心を示す「興味・関心」は,聞き手の視点に対して肯定的な情動を示し自らの視点と参照する交流が,生産的・持続的な越境形態であるとする田島(2016)の指摘と関連するものといえる。
今後は,この予備調査を通じて作成された項目を元に質問紙調査を行い,信頼性および妥当性を検討するとともに,生産的な越境を遂行可能とする心理特性と勇気づけ尺度との関係についても検証を行う予定である。