15:30 〜 17:30
[PC01] 日々の母娘関係の一分析
― 母の認知する母娘関係の因子比較 ―
キーワード:P技法, 母子関係, 青年期
目 的
発達心理学的な観点からみると,青年期は親子関係の転換の時期である。この時期の親子関係は心理的離乳という言葉で表わされるように青年が親離れしていく時期にある。これまで,この時期の親子関係研究では,集団を対象として横断的研究がなされてきた。さらにこの時期の親子関係を詳細に捉えるためには,時系列での研究の積み重ねも必要となってくると思われる。本研究においては,中学生の女子を持つ3人の母親に焦点を当て,CattellのP技法因子分析により母が認知する日々の母娘関係に潜在する共通因子と其々の母娘関係に存在する独自の因子を探索する。
方 法
分析対象者と測定期間:女子中学生1年生を持つ母親3名(ID1001,ID1002,ID1004)であった。測定日数は,それぞれ145日,155日,144日であった。質問項目:小高(2000)の親―青年関係尺度と辻岡・山本(1976)の親子関係尺度EICAを参考にして作成した22項目を用いた。評定は「全くあてはまらない」~「非常によくあてはまる」の6件法である。測定は,毎日同じ時間頃(寝る前)に,一日を振り返りどのくらいあてはまるか,と教示した。分析手続き:各々の母娘関係の22項目について,個別に因子数を定め主因子法により因子分析を行い,その後プロマックス回転を行った。なお,欠損値にはその前後日の値から計算した平均を代入することにした。
結 果
母の認知する母娘関係についての因子分析
(1) ID1001 の因子について
①娘の自己主張の因子:この因子には,「私に口答えした」,「私から干渉されるのを嫌がった」等の項目が負荷を示し,母からの干渉を嫌がり,自己を主張する様子を表す因子と思われる。②娘の母への優しさの因子:この因子には,「私をいたわってくれた」,「子どもに色々指図した」,「私の言う通りに従ってくれた」等の項目が負荷を示し,母親の指示に素直に従い,母をいたわるといった娘の優しさを表す因子と思われる。③母娘の親和的コミュニケーションの因子:この因子には,「一日の出来事を私に話してくれた」,「子どもの言うことに耳を傾けた」等の項目が負荷を示し,娘の言うことに耳を傾け,母と娘の親和的な関係を表す因子と思われる。④母の気遣いの因子:この因子には,「子どもに色々気を使った」,「子どもの喜びそうなことをした」等の項目が負荷を示し,母が娘を気遣っている様子を表す因子と思われる。
(2) ID1002 の因子について
①母娘の親和的コミュニケーションの因子:この因子には,「私の考えに耳を傾けてくれた」,「私に感謝の言葉を口にしてくれた」等の項目が負荷を示し,母と娘の親和的な関係を表す因子と思われる。②娘の自己主張の因子:「ささいなことから言い合いが始まった」,「私に対して,批判的な言動があった」等の項目が負荷を示し,娘が母に対して自己主張している様子を表す因子と思われる。③母の統制の因子:この因子には,「子どもに決まりを守るように言った」「子どもに勉強についてとやかく言った」等の項目が負荷を示し,母が娘を統制する様子を表す因子と思われる。
(3) ID1004 の因子について
①娘の自己主張の無さ因子:この因子には,「私に口答えした」,「私に対して,批判的な言動があった」等の項目が負の負荷を示していた。このことから,母に対する自己主張の無さを表す因子であると思われる。②母娘の親和的コミュニケーションの因子:「子どもの言うことに耳を傾けた」,「一日の出来事を私に話してくれた」等の項目が負荷を示していた。③母の気遣いの因子:この因子には,「子どもに色々気を使った」,「子どもの喜びそうなことをした」の項目が負荷を示しており,母が娘を気遣っている様子を表す因子と思われる。
考 察
本分析の結果,3人の母親が認知する日々の母娘関係の構造は3~4因子であることが明らかとなった。また,これらの因子から,3人に共通する因子,すなわち,「母と娘の親和的コミュニケーション」に関する因子と「娘の自己主張」に関する因子が存在していること,またそれぞれの母娘関係の独自の因子も存在していることが明らかとなった。今後は,3人の母娘関係に共通して現れた因子を用いて母娘関係のモデルを作成し,そこに存在する法則定立的な関係を明らかにしたい。
引用文献
小高 恵(2000). 親―青年関係尺度の作成の試み 南大阪大学紀要, 3, 87‒96.
辻岡美延・山本吉廣(1976). 親子関係診断尺度EICAの作成-因子的真実性の原理による項目分析- 関西大学社会学部紀要,7, 1-14.
発達心理学的な観点からみると,青年期は親子関係の転換の時期である。この時期の親子関係は心理的離乳という言葉で表わされるように青年が親離れしていく時期にある。これまで,この時期の親子関係研究では,集団を対象として横断的研究がなされてきた。さらにこの時期の親子関係を詳細に捉えるためには,時系列での研究の積み重ねも必要となってくると思われる。本研究においては,中学生の女子を持つ3人の母親に焦点を当て,CattellのP技法因子分析により母が認知する日々の母娘関係に潜在する共通因子と其々の母娘関係に存在する独自の因子を探索する。
方 法
分析対象者と測定期間:女子中学生1年生を持つ母親3名(ID1001,ID1002,ID1004)であった。測定日数は,それぞれ145日,155日,144日であった。質問項目:小高(2000)の親―青年関係尺度と辻岡・山本(1976)の親子関係尺度EICAを参考にして作成した22項目を用いた。評定は「全くあてはまらない」~「非常によくあてはまる」の6件法である。測定は,毎日同じ時間頃(寝る前)に,一日を振り返りどのくらいあてはまるか,と教示した。分析手続き:各々の母娘関係の22項目について,個別に因子数を定め主因子法により因子分析を行い,その後プロマックス回転を行った。なお,欠損値にはその前後日の値から計算した平均を代入することにした。
結 果
母の認知する母娘関係についての因子分析
(1) ID1001 の因子について
①娘の自己主張の因子:この因子には,「私に口答えした」,「私から干渉されるのを嫌がった」等の項目が負荷を示し,母からの干渉を嫌がり,自己を主張する様子を表す因子と思われる。②娘の母への優しさの因子:この因子には,「私をいたわってくれた」,「子どもに色々指図した」,「私の言う通りに従ってくれた」等の項目が負荷を示し,母親の指示に素直に従い,母をいたわるといった娘の優しさを表す因子と思われる。③母娘の親和的コミュニケーションの因子:この因子には,「一日の出来事を私に話してくれた」,「子どもの言うことに耳を傾けた」等の項目が負荷を示し,娘の言うことに耳を傾け,母と娘の親和的な関係を表す因子と思われる。④母の気遣いの因子:この因子には,「子どもに色々気を使った」,「子どもの喜びそうなことをした」等の項目が負荷を示し,母が娘を気遣っている様子を表す因子と思われる。
(2) ID1002 の因子について
①母娘の親和的コミュニケーションの因子:この因子には,「私の考えに耳を傾けてくれた」,「私に感謝の言葉を口にしてくれた」等の項目が負荷を示し,母と娘の親和的な関係を表す因子と思われる。②娘の自己主張の因子:「ささいなことから言い合いが始まった」,「私に対して,批判的な言動があった」等の項目が負荷を示し,娘が母に対して自己主張している様子を表す因子と思われる。③母の統制の因子:この因子には,「子どもに決まりを守るように言った」「子どもに勉強についてとやかく言った」等の項目が負荷を示し,母が娘を統制する様子を表す因子と思われる。
(3) ID1004 の因子について
①娘の自己主張の無さ因子:この因子には,「私に口答えした」,「私に対して,批判的な言動があった」等の項目が負の負荷を示していた。このことから,母に対する自己主張の無さを表す因子であると思われる。②母娘の親和的コミュニケーションの因子:「子どもの言うことに耳を傾けた」,「一日の出来事を私に話してくれた」等の項目が負荷を示していた。③母の気遣いの因子:この因子には,「子どもに色々気を使った」,「子どもの喜びそうなことをした」の項目が負荷を示しており,母が娘を気遣っている様子を表す因子と思われる。
考 察
本分析の結果,3人の母親が認知する日々の母娘関係の構造は3~4因子であることが明らかとなった。また,これらの因子から,3人に共通する因子,すなわち,「母と娘の親和的コミュニケーション」に関する因子と「娘の自己主張」に関する因子が存在していること,またそれぞれの母娘関係の独自の因子も存在していることが明らかとなった。今後は,3人の母娘関係に共通して現れた因子を用いて母娘関係のモデルを作成し,そこに存在する法則定立的な関係を明らかにしたい。
引用文献
小高 恵(2000). 親―青年関係尺度の作成の試み 南大阪大学紀要, 3, 87‒96.
辻岡美延・山本吉廣(1976). 親子関係診断尺度EICAの作成-因子的真実性の原理による項目分析- 関西大学社会学部紀要,7, 1-14.