3:30 PM - 5:30 PM
[PC11] 成人を対象としたファイナンス効力感尺度の開発
Keywords:ファイナンス, 効力感, 成人発達
問題と目的
近年,世界的に急激な金融緩和,経済の自由化の流れが加速し,消費者の自己責任が問われる中で,個人のファイナンシャル・リテラシー(FL)が注目されている。しかし,従来のFL研究,さらには,ファイナンスに関する行動や満足感,幸福,あるいは効力感に関する尺度を用いた研究においては,定義のあいまいさや尺度項目の不十分さなどの問題が指摘されている(神谷,2016,2017)。そこで本研究では,本邦において一般成人の男女を対象とし,使用可能なファイナンス効力感尺度を開発することを目的とする。
方 法
[項目作成]:先行研究のほか,金融経済教育推進会議(2014)による金融リテラシーマップの4領域における大学生から高齢者までに対する習得すべき内容を参考に,「~できる」といった効力感を示す47項目(ライスケール2項目含む)を作成した。そして,経済学研究科の大学院生と表記について協議し,項目の修正・整理・削除を行い43項目が選定された。[予備調査]43項目についてそれぞれ,(1)それがどの程度自分にあてはまるか,(2)文章の平易さ,(3)表面的妥当性の3点をいずれも5件法で尋ねた。調査は,知人・友人を介してGoogleフォームを用いて行われ,29名の成人男女(Range20-50歳,M=29.90,SD=8.86)のデータが収集された。調査時期は2015年11月上旬から12月中旬まで。[本調査]予備調査の結果を踏まえて,項目の文言などに修正を加えたのち本調査を行った。インターネット・リサーチ会社のデータベースに登録されたモニター20歳代から60歳代以上の男女を,各年代・性別ごとに100名を対象とした。その際,平成22年の国勢調査データに基づき,各年代男女別の既婚率を算出し,各群の未婚者・既婚者の比率に基づき,結果として1004名に協力を得た。また,再検査信頼性の検討のために,本調査の12日後に,再度協力者全員に調査協力を依頼し,862名から回答を得た(回収率85.9%)。調査時期は本調査が2016年2月上旬,再調査は同年2月後半であった。また,分析に当たっては,本調査1004名のうち,ライスケールと画面表示時間から,回答が不適切である可能性が高いと判断されたデータを除いて,782名(再調査671名)を分析対象とした。さらに妥当性の検証のため,ファイナンス知識(FFFL)(山岡ほか,2013),特性的自己効力感尺度(GSE)(成田ほか,1995),Locus of Control(LOC)(鎌原ほか,1982),ファイナンス行動(FB)(Shim et al.,2010),ファイナンス満足度(FS)(Serido,Shim,& Tang,2013)を尋ねた。
結果と考察
ライスケール2項目を除いた41項目について,回答の偏向状況に問題がないことを確認し,最尤法による因子分析を行ったところ,1因子性が強いことが示された。そこで第1因子に負荷量が.40に満たない3項目を削除し,再度因子分析を行う際に,堀(2005)を参考に因子数選択の指標を求めたところMAPで4因子,対角SMC平行分析で6因子であった。そこで,再度38項目について4因子から6因子に指定し,(1)因子負荷量.40を基準とし,多重負荷あるいは未負荷の項目を削除する。(2)1因子における項目数が2項目以下の場合,指定する因子数を1つ減ずる。の2点を基準に単純因子構造が得られるまで最尤法,プロマックス回転による因子分析をそれぞれ繰り返した。その結果,当初の因子指定数にかかわらず,いずれも概ね同じ項目で3因子に収束した。そこで,4因子指定の結果を採用し,得られた30項目,3つの因子をF1: 日常的マネジメント,F 2: ファイナンス理解, F3:ライフプラン設計と命名した。さらに,これらの各尺度について,妥当性ならびに信頼性の検討を行ったところ,Tableの通りおおむね妥当であるとされた。今後は,さらに年代や性別,婚姻状況ごとに検討を進める必要があろう。
近年,世界的に急激な金融緩和,経済の自由化の流れが加速し,消費者の自己責任が問われる中で,個人のファイナンシャル・リテラシー(FL)が注目されている。しかし,従来のFL研究,さらには,ファイナンスに関する行動や満足感,幸福,あるいは効力感に関する尺度を用いた研究においては,定義のあいまいさや尺度項目の不十分さなどの問題が指摘されている(神谷,2016,2017)。そこで本研究では,本邦において一般成人の男女を対象とし,使用可能なファイナンス効力感尺度を開発することを目的とする。
方 法
[項目作成]:先行研究のほか,金融経済教育推進会議(2014)による金融リテラシーマップの4領域における大学生から高齢者までに対する習得すべき内容を参考に,「~できる」といった効力感を示す47項目(ライスケール2項目含む)を作成した。そして,経済学研究科の大学院生と表記について協議し,項目の修正・整理・削除を行い43項目が選定された。[予備調査]43項目についてそれぞれ,(1)それがどの程度自分にあてはまるか,(2)文章の平易さ,(3)表面的妥当性の3点をいずれも5件法で尋ねた。調査は,知人・友人を介してGoogleフォームを用いて行われ,29名の成人男女(Range20-50歳,M=29.90,SD=8.86)のデータが収集された。調査時期は2015年11月上旬から12月中旬まで。[本調査]予備調査の結果を踏まえて,項目の文言などに修正を加えたのち本調査を行った。インターネット・リサーチ会社のデータベースに登録されたモニター20歳代から60歳代以上の男女を,各年代・性別ごとに100名を対象とした。その際,平成22年の国勢調査データに基づき,各年代男女別の既婚率を算出し,各群の未婚者・既婚者の比率に基づき,結果として1004名に協力を得た。また,再検査信頼性の検討のために,本調査の12日後に,再度協力者全員に調査協力を依頼し,862名から回答を得た(回収率85.9%)。調査時期は本調査が2016年2月上旬,再調査は同年2月後半であった。また,分析に当たっては,本調査1004名のうち,ライスケールと画面表示時間から,回答が不適切である可能性が高いと判断されたデータを除いて,782名(再調査671名)を分析対象とした。さらに妥当性の検証のため,ファイナンス知識(FFFL)(山岡ほか,2013),特性的自己効力感尺度(GSE)(成田ほか,1995),Locus of Control(LOC)(鎌原ほか,1982),ファイナンス行動(FB)(Shim et al.,2010),ファイナンス満足度(FS)(Serido,Shim,& Tang,2013)を尋ねた。
結果と考察
ライスケール2項目を除いた41項目について,回答の偏向状況に問題がないことを確認し,最尤法による因子分析を行ったところ,1因子性が強いことが示された。そこで第1因子に負荷量が.40に満たない3項目を削除し,再度因子分析を行う際に,堀(2005)を参考に因子数選択の指標を求めたところMAPで4因子,対角SMC平行分析で6因子であった。そこで,再度38項目について4因子から6因子に指定し,(1)因子負荷量.40を基準とし,多重負荷あるいは未負荷の項目を削除する。(2)1因子における項目数が2項目以下の場合,指定する因子数を1つ減ずる。の2点を基準に単純因子構造が得られるまで最尤法,プロマックス回転による因子分析をそれぞれ繰り返した。その結果,当初の因子指定数にかかわらず,いずれも概ね同じ項目で3因子に収束した。そこで,4因子指定の結果を採用し,得られた30項目,3つの因子をF1: 日常的マネジメント,F 2: ファイナンス理解, F3:ライフプラン設計と命名した。さらに,これらの各尺度について,妥当性ならびに信頼性の検討を行ったところ,Tableの通りおおむね妥当であるとされた。今後は,さらに年代や性別,婚姻状況ごとに検討を進める必要があろう。