The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PC(01-83)

ポスター発表 PC(01-83)

Sat. Oct 7, 2017 3:30 PM - 5:30 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

3:30 PM - 5:30 PM

[PC12] 保育者の退職に結びつく<資質>の検討

管理職へのインタビュー調査から

山本睦1, 坂井敬子2 (1.常葉大学, 2.和光大学)

Keywords:退職, 保育者, キャリア支援

問題と目的
 保育者の資質向上が叫ばれるようになって久しいが,そこで問われる「資質」そのものが何を指しているのかは様々である。例えば,林ら(2016)は,養成校卒業生の就職先への質問紙調査の回答から<資質>を明るさや元気さ,子どもに対する愛情や感性としている。また濱名(2016)は文献調査から,教員としての「使命感」や「教育的愛情」を資質として捉えている。
 これらの研究のアプローチにおいて「資質」は,保育者として働く上で欠かせない,持っているべきものとして挙げられている。では,これら「資質」が欠如あるいは不足していることが退職につながっていると考えられるのだろうか。
 本研究では,その年度に退職者がいる園の管理職に対して実施したインタビュー調査の回答から,「資質と退職」が結びつけて語られた部分に着目した。回答内容をカテゴリーに分類,カテゴリー間の関係性から,管理職が退職事例に対して考える「資質」を抽出,検討することを目的とした。
方   法
 調査時期は2014,2015,2016年の3月末(一部は4月初旬)。毎年度市役所から当該年度で退職者がいる園で調査協力可能な園と退職者・管理職を指定していただき,筆者ら2名が園を訪問し,1人が退職者をもう1人が管理職に対し同時に別室でインタビューを実施した。
 本研究の対象者は,公立10園管理職13名であった。インタビューの回答のなかで,「資質全般」について語っている部分と,「退職と結びつけて語られた資質(以降,退職資質)」について語っている部分を逐語録のまま抽出した。
 抽出したプロトコルをSPSS Text Analytics for Surveys 4で分析した。分析手続きは,次の通りである。
①コンセプトの抽出 感性分析を用い,度数を13名の半数以上の回答に見られるよう7以上に設定し,抽出。
②カテゴリの設定 タイプパターンにより,カテゴリをコンセプトレベルで抽出した。ディスクリプタ及びレコード数が1だった場合は,カテゴリを採用しなかった。
③視覚化 「仕事」のカテゴリを中心化し,カテゴリWebを作成した(Figure1,2)。
結果と考察
 カテゴリWebは,Figure1,2のようになった。
「仕事」と関連するカテゴリに振り分けられたプロトコル部分を抽出し,その内容をまとめた結果(Table1),「資質全般」と比較して「退職資質」に特徴的なカテゴリは,「家庭との両立」「意欲低減」「適性の把握」「重責化」「教育的愛情」であった。
 退職に繋がる<資質>は,家庭との両立困難,意欲低減,不十分な職業及び適正理解,そしてマネジメント力の欠如であった。これらの資質はこれまでの保育者に求められる性格的要素や教員独特の資質とは異なる。従って退職防止のためには,養成や研修内容の見直しが必要となると考えられる。