The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PC(01-83)

ポスター発表 PC(01-83)

Sat. Oct 7, 2017 3:30 PM - 5:30 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

3:30 PM - 5:30 PM

[PC13] 高学年児童の学級活動での初期の話し合い進行における教師の介入

岩田美保1, 佐藤翔#2 (1.千葉大学, 2.千葉大学教育学部附属小学校)

Keywords:高学年児童, 話し合い, 学級活動

問題と目的
 学級での話し合いは,課題の解決に向け,児童たちが,学級内や互いの関係性を調整しながら発話を生成していく場であるといえる(藤江,1999)。しかし,児童主導の話し合いが開始されたばかりの時期では,そもそもその進行そのものにおいて,様々な難しさが生じ,そうした状況に対して,教師の多様な介入がなされる可能性がある。そうしたやりとりのありようを明らかにすることはその後の学級での話し合いにおける児童間の調整的なコミュニケーションを捉えていく上でも重要と考えられる。
 本研究はこうした観点に基づき,その第一段階として,児童主導による話し合い活動が開始されたばかりの6年生児童の学級活動での話し合いにおいて,進行上,どのような難しさが生じ,それに対してどのような教師の介入がなされるかに着目し,検討を行った。
方   法
研究協力者:首都圏にある小学校の6年生の1クラス(39名学級),担任は30代の男性教諭。
観察内容: 201X年5月に行われた,6年生学級での特別活動での話し合い(40分)について研究対象とした。当該の話し合いは児童主導による進行が任されて間もない時期の話し合いにあたる。
分析:話し合いの音声・映像記録からプロトコルデータを作成した。教師の発話は,誰に向けられ,どのような内容の発話であるかに着目し,分析を行った。発話の単位は,一人の発言が別の話者にさえぎられるまで,また,発話の対象が変わった場合とした。発話の内容は,一発話が複数の内容に関わる場合はそれぞれにカウントした。なお,児童の名前は架空のアルファベットで表示した。
結果と考察
 話し合いにおける教師の介入は,〈議長団〉,〈学級全体〉,〈発言者〉に対してなされており,教師の発話が向けられた相手は,議長団に対して42.9%,学級全体に対して52.4%,発言者に対して4.8%と,学級全体に対して向けられた発話が最も多かった。また,その内容については,議長団に対しては,〈話し合いの進行に関わる助言・促し〉に関わる介入が45.5%,学級全体に対しては,〈話し合いの進行について考えさせる〉介入が41.9%で最も多かった。発言者に対しては,〈発言内容や言い方への助言・促し〉,〈精緻化を求める〉といった介入(各50%)がみられた。
 一方,話し合いが進行していく上で生じる難しさとして,何を話し合うかが明確ではないまま話し合いが進行していく状況が一つに挙げられた。
 Table1は,そうした状況の1例を示している。この日の話し合いは議題決めから始まり,児童から出された議題のうち,〈①運動会の練習をもっとしたほうがいい〉,〈②気持ちを一つに(運動会に向け)〉,を合わせて話し合う方向で賛成が得られ,展開していった(Table1はその直後からのやりとりの一部)。しかしTable1にみられるように,議長団が「賛成の理由」を尋ね ((2),Table1),さらに「それをいつやるか(帰りの会の後か)」((6)),「他の時間もあり」((10))等,何を話しあうかの焦点が明確にならないまま,次々に展開していく状況がみられる。これに対して,教師 ((11))は学級全体に対して話し合いのポイントを示しながら,〈話し合いの進行の助言〉や〈進行について考えさせる〉問いかけをし,その中で議長団にも伝えるという形での介入を行うことがみられる。こうしたやりとりがその後どのように変化していくかについて,分析をさらに進めていく。
【科学研究費(基盤研究(C),課題番号17K04343,研究代表者 岩田美保)の助成を受けた.】