The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PC(01-83)

ポスター発表 PC(01-83)

Sat. Oct 7, 2017 3:30 PM - 5:30 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

3:30 PM - 5:30 PM

[PC14] 児童の防犯行動に関わる社会的情報処理メカニズム

畠山美穂 (甲南女子大学)

Keywords:社会的情報処理, 防犯行動, 児童

問題・目的
 近年,我が国における子どもの略取・誘拐事件が後を絶たず,子どもをこうした事件から守ることは重要課題である。「防犯教育のねらい」(文部科学省,2003年)には,子ども自身の危険予測と危機回避が明記され,幼児期から児童期という最も犯罪に巻き込まれやすい時期に,自ら危険を認識し,自衛のための危機回避能力を身につけさせることが必要不可欠であると考えられる。そのため,子ども自身でできる危険予測及び危険回避行動の獲得に関わる認知的要因について明らかにする必要があると考えられる。しかし,これまでの所,子どもの危険回避行動に関わる認知的メカニズムは明らかにされていない。そこで,本研究では,未知人物との遭遇場面を社会的情報処理場面と捉え,子どもが見知らぬ人について行く,あるいはついていかないという行動がどのような情報処理に基づいているのかについて明らかにすることを目的とする。
方   法
1.調査協力者
小学校3年生30名
2.調査内容
材料 Crick & Dodge(1994)の社会的情報処理ステップのモデルを参考に,児童の危機回避行動に関わる社会的情報処理課題を作成した。
課題は『学校帰り自宅の方向に道案内を頼まれる(案内一致条件)』と,『学校帰りに自宅と逆方向に道案内を頼まれる(案内不一致場面)』,『お母さんが急病なので一緒に車に乗るよう誘われる(緊急場面)』の3つの場面を設定し,以下の社会的情報処理に基づく質問を実施した。
社会的情報処理に基づく質問:①社会的情報処理第2ステップ(解釈):誘ってきた人は,どのようなことを考えていたと思いますか?②社会的情報処理第4ステップ(反応評価・検索):『逃げる』『断る』『助けを求める』『ついて行く』の各方法についてどの程度適切かを5段階評定(1.とても良い~5.とても悪い)で求めた。③社会的情報処理第5ステップ(反応決定):誘われた時,どうしたらよいか,1つだけ答えて下さい。
結果・考察
①社会的情報処理第2ステップ(解釈):3つの場面について,誘われた人物の意図をどのように解釈したのかについて比較した所,緊急場面及び車不一致場面で全て,また,車一致場面で1例を除く全てにおいて,誘拐の意図によるものであると帰属していた。
②社会的情報処理第4ステップ(反応評価・検索):
3つの場面における『逃げる』方法についての評価得点を比較するために,分散分析を行った。その結果,有意な差が見られた(F(2, 116)=6.34, p<.01)。そのため,多重比較を行ったところ,緊急場面は,一致・不一致場面より得点が低かった。このことから,母親が病気だから急いで病院に行こうと誘われた場合は,車で案内を頼まれた場合(一致・不一致)よりも,『逃げる方法』を良いと評価していることが示唆される。同様に,『断る』方法について検討したところ,有意な差は見られなかった。『助けを求める』方法については,有意な差が見られ(F(2, 116)=5.24, p=<.01),多重比較の結果,緊急場面が一致・不一致場面より得点が低かった。このことから,母親が病気だから急いで病院に行こうと誘われた場合,車で案内を頼まれた場合(一致・不一致)よりも『助けを求める』方法について良いと評価していることが示された。
『ついて行く』方法については,有意な差は見られなかった。
社会的情報処理第5ステップ(反応決定):3つの場面でどのような実行方法を考案したかについて,頻度を算出した(Table1)。この結果から,全ての場面において,『逃げる』方法が最も選択されやすいことを示している。