The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PC(01-83)

ポスター発表 PC(01-83)

Sat. Oct 7, 2017 3:30 PM - 5:30 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

3:30 PM - 5:30 PM

[PC16] 2歳児クラス集団における自己主張の発達

鈴木智子 (仁愛大学)

Keywords:2歳児クラス, 自己主張, 発達

問題と目的
 2歳から3歳代の子どもが属する2歳児クラスでは,本格的な集団生活となる3歳児クラスを控え,集団生活に必要なルール理解や他者との協同性,自己制御などが育つことが期待される。実際に,1歳代から2歳代にかけて他者の感情理解や行為の予測ができるようになる(Hay,2006),2歳以降に,認知能力の発達により,社会のルールに沿って自己コントロールできるようになる(Kopp,1982)などの指摘があり,これらの能力の発達を背景に,集団生活で適切な行動が可能となると考えられる。これらのことから,本研究では2歳児クラスの子どもの自己主張に焦点を当て,どのように他児との関わりが変化していくのかについて調べることを目的としている。今回は,3ヶ月ごとに縦断的に調べたデータを分析し,子どもの自己主張の変化について検討していく。
方   法
対象児:認定こども園の2歳児クラスに在籍する子どもの内,研究参加について保護者の承諾が得られ,今回分析対象とする月のデータが揃っている18名(男児9名,女児9名)。平均年齢7月:33.0ヶ月,10月:36.0ヶ月,1月:39.0ヶ月。
調査時期:201X年7月〜201X+1年3月。
手続き:午前中の自由遊び時間に一人当たり15分,ビデオ録画による観察を行った。担当保育者には,普段通り子どもに関わるよう依頼した。対象児を誕生月により6名ずつ3群に分類した。各群,各時期の平均月齢をTable1に示す。
結果と考察
 今回は,7・10・1月の録画データを分析対象とした。録画データの対象児と他児とのやりとりの中から,自己主張を行っているエピソードを抽出した。自己主張とは,「他児に対して意志や行動の定位・変化を促す要求・拒否・抗議」とする。
 各エピソードについて,主張を始めた子ども(主張)と主張の対象となった子ども(被主張)の群によって分けた結果をTable2・3・4に示す。
 各月の総エピソード数は,7月に比べて10月に一旦減少し,1月に増加するという変化が見られた。Table2から,7月はⅡ群とⅢ群において各群内での主張が少ないように見えるが,統計的に有意な差は得られなかった。Table3から,10月はⅡ群の他の群に対する主張が少ないように見えるが,統計的に有意な差は得られなかった。Table4については,χ2検定の結果,主張数の偏りに有意差が得られた(χ2(4)=14.24,p<.01)。残差分析の結果,有意に多かった主張は,Ⅰ群→Ⅲ群,Ⅱ群→Ⅱ群,Ⅲ群→Ⅰ群であり,有意に少なかった主張はⅡ群→Ⅰ群,Ⅲ群→Ⅲ群であった。また,3期を通して,Ⅱ群の子どもの主張数が他の群の子どもよりも少なかったことから,Ⅱ群の子どもの主張が少ないという特性を持ち,約半年間その特徴を維持していることがわかる。Ⅰ・Ⅲ群は比較的主張が多いという特徴をもっているが,1月には相互に主張することが多くなるという変化があった。
 これらのことから,月齢が上がることで単純に主張数が増加するというような発達的変化が見られるわけではなく,個々の子どもの主張のタイプを維持しながら関係が変化していくことが示唆された。