3:30 PM - 5:30 PM
[PC25] 友人関係への動機づけの違いとグループ活動への動機づけの変化
大学初年次教育における検討
Keywords:動機づけ, 初年次教育, 大学生
目 的
本研究では,友人関係への動機づけの違いとグループ活動への動機づけの変化の関係について,探索的に検討することを目的とし,名取(2016)で報告した1年目のデータに2年目のデータを加え再分析した。
方 法
調査対象者 1)2015年度 東北地方の私立大学1年生89名(男子53名,女子36名,平均18.05歳(SD=0.21))。2)2016年度 同大学1年生96名(男子56名,女子40名,平均18.19歳(SD=0.72))。不備のある回答は,分析ごとに除外した。
調査内容 1)友人関係への動機づけ 岡田(2005)が作成した質問項目から,各因子に負荷量が高かった2項目ずつを選出した(計8項目,5件法)。
2)グループ活動への動機づけ 中西・中島・大道・益川・守山・下村・長濱・中山(2014)が作成した質問項目から,各因子に負荷量が高かった2項目ずつを選出した(計10項目,5件法)。教示文を変更し,グループ活動についての回答を求めた。
なお,調査用紙には,授業の効果測定を目的とした他の質問項目も含まれていた。全体の項目数は,15年度は89(1回目のみ88),16年度は102(1回目のみ109)であった。
調査時期および手続き 15年度は8回,16年度は7回の調査を行った。本研究では,15,16年度で共通した調査時期であった,学期の開始・終了時データを分析の対象とした。
各調査回の授業終了時に15分程度の時間を設け,一斉に質問紙の配布および回収を行った。
結果と考察
友人関係への動機づけのタイプ 前期開始時の「外的」,「取り入れ」,「同一化」,「内発」の4つの下位尺度の標準得点を用いたk-means法クラスター分析により4つの動機づけタイプに分類した。得点の様相から,「内的調整型」(n=69),「高動機づけ型」(n=42),「低動機づけ型」(n=13),「外的調整型」(n=59)とした。
友人関係への動機づけのタイプとグループ活動への動機づけの変化 測定時期を参加者内要因,動機づけタイプを参加者間要因とする4×4の2要因分散分析を,5つの「グループ活動への動機づけ」を従属変数として行った。いずれも有意な交互作用はみられなかった。測定時期と動機づけタイプの2つの主効果が有意だったのは,「メンバーからの被評価動機」(F(3, 330)=2.72, ηp2=.02, p=.045; F(3, 110)=8.54, ηp2=.19, p<.001)と,「メンバーからの被嫌悪回避動機」(F(3, 330)=4.73, ηp2=.04, p=.003; F(3, 110)=4.81, ηp2=.09, p=.016)の2つの下位尺度であった。動機づけタイプの主効果のみが有意だったのは,「他者からの刺激による動機づけ」(F(3, 110)=4.81, ηp2=.12, p=.003)と,「グループに対する貢献動機」(F(3, 110)=4.69, ηp2=.11, p=.004)の2つの下位尺度であった。「グループに対する被評価動機」では有意な主効果はみられなかった。
Bonferroni法による多重比較の結果,「メンバーからの被評価動機」は内的調整型(M=3.29)と外的調整型(M=3.27)よりも高動機づけ型(M=3.78)が高く,「メンバーからの被嫌悪回避動機」は内的調整型(M=2.77)よりも高動機づけ型(M=3.51)と低動機づけ型(M=3.66)が高いことが示された。また,「他者からの刺激による動機づけ」は外的調整型(M=3.57)よりも高動機づけ型(M=4.13)が高く,「グループに対する貢献動機」は低動機づけ型(M=3.16)と外的調整型(M=3.37)よりも高動機づけ型(M=3.80)が高いことが示された。
友人関係への動機づけ全般が高い学生は,グループ活動に対しても高い動機づけを有しているが,背景には,他者からの評価への懸念があることを示唆する結果であると解釈できる。今後さらに,詳細な検討を加えていきたい。
文 献
中西良文・中島 誠・大道一弘・益川優子・守山紗弥加・下村智子・長濱文与・中山留美子(2014).協同学習場面における社会的動機づけ尺度作成の試み 三重大学教育学部研究紀要(教育科学),65,335-341.
名取洋典(2016).大学初年次の社会的動機づけの変化―友人関係とグループ活動に着目して― 日本教育心理学会発表論文集,58,331.
岡田 涼(2005).友人関係への動機づけ尺度の作成および妥当性・信頼性の検討――自己決定理論の枠組みから パーソナリティ研究,14,101-112.
本研究では,友人関係への動機づけの違いとグループ活動への動機づけの変化の関係について,探索的に検討することを目的とし,名取(2016)で報告した1年目のデータに2年目のデータを加え再分析した。
方 法
調査対象者 1)2015年度 東北地方の私立大学1年生89名(男子53名,女子36名,平均18.05歳(SD=0.21))。2)2016年度 同大学1年生96名(男子56名,女子40名,平均18.19歳(SD=0.72))。不備のある回答は,分析ごとに除外した。
調査内容 1)友人関係への動機づけ 岡田(2005)が作成した質問項目から,各因子に負荷量が高かった2項目ずつを選出した(計8項目,5件法)。
2)グループ活動への動機づけ 中西・中島・大道・益川・守山・下村・長濱・中山(2014)が作成した質問項目から,各因子に負荷量が高かった2項目ずつを選出した(計10項目,5件法)。教示文を変更し,グループ活動についての回答を求めた。
なお,調査用紙には,授業の効果測定を目的とした他の質問項目も含まれていた。全体の項目数は,15年度は89(1回目のみ88),16年度は102(1回目のみ109)であった。
調査時期および手続き 15年度は8回,16年度は7回の調査を行った。本研究では,15,16年度で共通した調査時期であった,学期の開始・終了時データを分析の対象とした。
各調査回の授業終了時に15分程度の時間を設け,一斉に質問紙の配布および回収を行った。
結果と考察
友人関係への動機づけのタイプ 前期開始時の「外的」,「取り入れ」,「同一化」,「内発」の4つの下位尺度の標準得点を用いたk-means法クラスター分析により4つの動機づけタイプに分類した。得点の様相から,「内的調整型」(n=69),「高動機づけ型」(n=42),「低動機づけ型」(n=13),「外的調整型」(n=59)とした。
友人関係への動機づけのタイプとグループ活動への動機づけの変化 測定時期を参加者内要因,動機づけタイプを参加者間要因とする4×4の2要因分散分析を,5つの「グループ活動への動機づけ」を従属変数として行った。いずれも有意な交互作用はみられなかった。測定時期と動機づけタイプの2つの主効果が有意だったのは,「メンバーからの被評価動機」(F(3, 330)=2.72, ηp2=.02, p=.045; F(3, 110)=8.54, ηp2=.19, p<.001)と,「メンバーからの被嫌悪回避動機」(F(3, 330)=4.73, ηp2=.04, p=.003; F(3, 110)=4.81, ηp2=.09, p=.016)の2つの下位尺度であった。動機づけタイプの主効果のみが有意だったのは,「他者からの刺激による動機づけ」(F(3, 110)=4.81, ηp2=.12, p=.003)と,「グループに対する貢献動機」(F(3, 110)=4.69, ηp2=.11, p=.004)の2つの下位尺度であった。「グループに対する被評価動機」では有意な主効果はみられなかった。
Bonferroni法による多重比較の結果,「メンバーからの被評価動機」は内的調整型(M=3.29)と外的調整型(M=3.27)よりも高動機づけ型(M=3.78)が高く,「メンバーからの被嫌悪回避動機」は内的調整型(M=2.77)よりも高動機づけ型(M=3.51)と低動機づけ型(M=3.66)が高いことが示された。また,「他者からの刺激による動機づけ」は外的調整型(M=3.57)よりも高動機づけ型(M=4.13)が高く,「グループに対する貢献動機」は低動機づけ型(M=3.16)と外的調整型(M=3.37)よりも高動機づけ型(M=3.80)が高いことが示された。
友人関係への動機づけ全般が高い学生は,グループ活動に対しても高い動機づけを有しているが,背景には,他者からの評価への懸念があることを示唆する結果であると解釈できる。今後さらに,詳細な検討を加えていきたい。
文 献
中西良文・中島 誠・大道一弘・益川優子・守山紗弥加・下村智子・長濱文与・中山留美子(2014).協同学習場面における社会的動機づけ尺度作成の試み 三重大学教育学部研究紀要(教育科学),65,335-341.
名取洋典(2016).大学初年次の社会的動機づけの変化―友人関係とグループ活動に着目して― 日本教育心理学会発表論文集,58,331.
岡田 涼(2005).友人関係への動機づけ尺度の作成および妥当性・信頼性の検討――自己決定理論の枠組みから パーソナリティ研究,14,101-112.