The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PC(01-83)

ポスター発表 PC(01-83)

Sat. Oct 7, 2017 3:30 PM - 5:30 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

3:30 PM - 5:30 PM

[PC35] 協調的問題解決授業において多様な考えの関連づけを可能にする課題のデザイン

河崎美保1, 遠藤育男#2, 堀野良介#3 (1.静岡大学, 2.静岡県伊東市立対島中学校, 3.静岡県伊東市立東小学校)

Keywords:協調問題解決, 算数授業, 多様な考え

問題と目的

 主体的,対話的で深い学びによって,教科等の見方・考え方が養われる授業が求められている。協調的問題解決授業の手法である知識構成型ジグソー法は,焦点化した問いと考えるための材料を用意することで,子どもたちが対話を通してその教科の見方・考え方のよさに気づいていくことを可能とする有望な方法といえる。本研究は,算数の同一単元について知識構成型ジグソー法を用いた授業を少しずつ改善を加えながら実践し分析した,益川ら(2014,2015),河崎ら(2015,2016)をもとに,主に課題に焦点をあて授業デザインを改良し,実践した成果を検討する。授業後の転移テストの結果に基づき,全体を1とする割合の見方・考え方に対する理解を深めたかを検証し,より効果的な授業デザインを検討する。

方   法
対象
 小学校6年生1クラス(37名)を対象に担任を務める男性教員が実施した
手続き
 単元「割合を使って」(啓林館6年下)の仕事算を題材とし,知識構成型ジグソー法を用いた45分×2コマの算数授業を計画,実践した。ジグソー課題は,「今日は体育館のモップがけをすることになりました。6年生のリョウスケさんが一人ですると12分かかりそうです。3年生のサヤカさんが一人ですると20分かかりそうです。 1年生のヒサシさんが一人ですると30分かかりそうです。3人ですると何分で終わりそうですか。ホワイトボードを使って,どのようにして考えたらよいか説明できるようにしよう」であった。エキスパート資料は3つあり,それぞれ音楽室のぞうきんがけに関して,①6年生一人で4分かかるときの1分間の仕事量および2分間,3分間の仕事量,②6年生一人で4分かかるとき,1分間の一人の仕事量,二人の仕事量,③6年生一人で4分かかるとき,1分間の一人の仕事量,二人の仕事量(音楽室の広さを36㎡として)を求めるものであった。
 エキスパート資料はそれぞれ,①一人で掃除するときの時間の経過,②1分間掃除するときの人数の増加,③面積がわかっているとき,具体的数値における人数の増加を考えるものであり,これらを組み合わせることでジグソー課題が解決できることをねらった。特に,「全体の面積が具体的にわからないのに解けないのでは」という疑問に直面し対話することで,「(面積がわからなくても)全体を1とした割合で考えることができる」ことを見出せることが期待された。
 以上の課題構成は,過去3実践(以下,13年A,13年B,14年)の結果を踏まえて,河﨑・益川・丸井・堀野・遠藤(2016)の実践において(以下,15年),ジグソー課題に必要な情報をパラレルに分割するのではなく,考え方の構成要素を取り出し,エキスパート資料としたことで,比較に値する多様な考えを引き出す効果が見られたことを踏まえ決定した。15年実践からの変更点は,エキスパート資料において残りの仕事量や所要時間も考えさせていた部分を削除し,焦点化させたこと,および各自が授業開始および終了時のジグソー課題に対する考えを書く時間やエキスパート資料の内容をジグソー活動の最初に説明しあう時間を十分とれるよう2コマの授業計画(1日1コマで2日連続)にしたことであった。
 授業の約7週間後に転移課題(家から駅まで歩くと20分,走ると8分のとき,小問1:1分間で進む距離,小問2:15分歩き残りを走るときの走る時間を求める)を実施した。転移課題を欠席した2名を分析から除外した。

結果と考察

 転移課題小問2の正答者について,用いた方略に基づき分類し集計した(図1)。
 本研究(16年)の正答率は40%と昨年度を下回ったが,この低下は主に,20と8の比や,家から駅まで4㎞等として解いた者(「具体整数」)が減ったことによるものであり,全体を1とする分数で解決した正答率自体は維持された。正答に至らなかった事例では5名が5分と答えており,15分歩いた残りを考えるまでは全体を1とする分数で考えることができていたことが示唆される。その一方で具体的な整数を仮定して自分なりに解決するという児童が少なかったと考えられる。
 今後の改善として,全体を1とする分数で解く方法と公倍数などを利用して具体的な数値を仮定する方法の両方を解決可能な解法として位置づけたうえで,両者を比較するような対話が起きるような授業のデザインが有効であると考えられる。発話を含む学習過程を詳細に分析した上で,それぞれの解法を自覚的,相補的に用いることができることをねらった課題構成を考案したい。