15:30 〜 17:30
[PC44] 保育所実習において学生が抱く感情についての調査研究III
保育実習IとIIのヒアリング調査から
キーワード:保育所実習, ネガティブな感情, ポジティブな感情
調査の目的
実習は,学生が自らの心の動きを捉える力を涵養する重要な学びと成長の場である(大江ら,2016)と同時に,緊張感と多大なストレスを有する学修であるといえる。「保育所実習において学生が抱く感情についての調査研究Ⅰ・Ⅱ」では,学生がこうした実習をどのように体験し学びを得ているのか,感情体験を中心にヒアリング調査を行った。その結果,学生がポジティブな感情を抱いたエピソードとして最も多く語ったのは,子どもとの日常的な関わりについてであり,実習に意欲的に取り組む大きな動機付けとなっていることが窺われた。また,「保育士の指導や態度」に関しては,実習経験を積むことで,ネガティブな感情と結びつくエピソード数が減少する傾向が示された。
本研究では引き続き保育実習IとⅡで縦断的なヒアリング調査を実施し,学生の抱く感情にどのような変化が見られるのかを検討した。
調査の方法
(1)調査対象:保育実習Ⅰ(2016年2月上旬,2週間)と保育実習Ⅱ(2017年2月上旬,2週間)の双方に参加した,教育学部の学生19名。
(2)調査期間:保育実習Ⅰは2016年3月,保育実習Ⅱは2017年3月の事後指導終了後に実施した。
(3) 調査手続き:半構造化面接により,1人につき約20分間のヒアリング調査を行った。まず「ネガティブな感情」として,実習中に「困った」,「不安・心配だった」,「戸惑った」と感じたエピソー
ドは何だったかについて尋ねた。つぎに「ポジティブな感情」として,「楽しい」,「嬉しい」,「幸せ」だと感じたエピソードについて尋ねた。この調査によって保育実習Ⅰでは202件(1人平均約10.6件),保育実習Ⅱでは208件(1人平均10.9件)のエピソードを得た。これらのエピソードを,前回の調査で得られた9つのカテゴリーを基に,2名の研究者によって評定・分類した(Table1)。 (4) 倫理的配慮:調査の目的,匿名性の遵守などについて口頭で説明し,同意を得て面接した。
結果と考察
保育実習ⅠとⅡを比較すると,全体的にネガティブな感情に結びつくエピソード数が減少し,ポジティブな感情に結びつくエピソード数が増加していた。また,ネガティブ・ポジティブ双方の感情で,全エピソードに占める「特定の場面での子どもとのかかわり」の割合が10%以上減少していた(Figure 1,Figure 2)。多くの学生は,実習においてまずは子どもとの関わりに注目しがちである。しかし,実習経験を重ねることによりネガティブ,あるいはポジティブな感情を喚起される事象の幅が,広がっているのではないかと推察された。
引用文献
大江まゆみら(2016).保育者志望学生の実習累積による変容過程に関する一考察‐エピソード形式の実習記録からみる学生の学びと育ち‐ 保育士養成研究,33,1-10.
実習は,学生が自らの心の動きを捉える力を涵養する重要な学びと成長の場である(大江ら,2016)と同時に,緊張感と多大なストレスを有する学修であるといえる。「保育所実習において学生が抱く感情についての調査研究Ⅰ・Ⅱ」では,学生がこうした実習をどのように体験し学びを得ているのか,感情体験を中心にヒアリング調査を行った。その結果,学生がポジティブな感情を抱いたエピソードとして最も多く語ったのは,子どもとの日常的な関わりについてであり,実習に意欲的に取り組む大きな動機付けとなっていることが窺われた。また,「保育士の指導や態度」に関しては,実習経験を積むことで,ネガティブな感情と結びつくエピソード数が減少する傾向が示された。
本研究では引き続き保育実習IとⅡで縦断的なヒアリング調査を実施し,学生の抱く感情にどのような変化が見られるのかを検討した。
調査の方法
(1)調査対象:保育実習Ⅰ(2016年2月上旬,2週間)と保育実習Ⅱ(2017年2月上旬,2週間)の双方に参加した,教育学部の学生19名。
(2)調査期間:保育実習Ⅰは2016年3月,保育実習Ⅱは2017年3月の事後指導終了後に実施した。
(3) 調査手続き:半構造化面接により,1人につき約20分間のヒアリング調査を行った。まず「ネガティブな感情」として,実習中に「困った」,「不安・心配だった」,「戸惑った」と感じたエピソー
ドは何だったかについて尋ねた。つぎに「ポジティブな感情」として,「楽しい」,「嬉しい」,「幸せ」だと感じたエピソードについて尋ねた。この調査によって保育実習Ⅰでは202件(1人平均約10.6件),保育実習Ⅱでは208件(1人平均10.9件)のエピソードを得た。これらのエピソードを,前回の調査で得られた9つのカテゴリーを基に,2名の研究者によって評定・分類した(Table1)。 (4) 倫理的配慮:調査の目的,匿名性の遵守などについて口頭で説明し,同意を得て面接した。
結果と考察
保育実習ⅠとⅡを比較すると,全体的にネガティブな感情に結びつくエピソード数が減少し,ポジティブな感情に結びつくエピソード数が増加していた。また,ネガティブ・ポジティブ双方の感情で,全エピソードに占める「特定の場面での子どもとのかかわり」の割合が10%以上減少していた(Figure 1,Figure 2)。多くの学生は,実習においてまずは子どもとの関わりに注目しがちである。しかし,実習経験を重ねることによりネガティブ,あるいはポジティブな感情を喚起される事象の幅が,広がっているのではないかと推察された。
引用文献
大江まゆみら(2016).保育者志望学生の実習累積による変容過程に関する一考察‐エピソード形式の実習記録からみる学生の学びと育ち‐ 保育士養成研究,33,1-10.