日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PC(01-83)

ポスター発表 PC(01-83)

2017年10月7日(土) 15:30 〜 17:30 白鳥ホールB (4号館1階)

15:30 〜 17:30

[PC45] 保育所実習において学生が抱く感情についての調査研究IV

保育実習IとIIの質問紙調査から

鎌田陽世1, 小川圭子2 (1.東海市教育委員会, 2.四天王寺大学)

キーワード:保育所実習, ネガティブな感情, ポジティブな感情

調査の目的
「保育所実習において学生が抱く感情についての調査研究Ⅰ」では,初めての保育所実習に参加した学生に対してヒアリング調査を実施し,印象に残った場面の中でネガティブ,あるいはポジティブな感情を抱いたエピソードを収集・分類することによって,9つのカテゴリーを得た。また,「保育所実習において学生が抱く感情についての調査研究Ⅱ」では,保育実習における感情体験についての縦断的な調査を行い,変容過程の一端を示した。
 本研究では,先の調査で得られたカテゴリーをもとに質問紙を作成し,実習経験を積み重ねていく中で,学生の感情体験にどのような変化が見られるかを探った。
調査の方法
(1)調査の対象:保育実習Ⅰ(2016年2月)及び,保育実習Ⅱ(2017年2月)の双方に2週間ずつ参加した教育学部の学生19名。
(2)調査期間:保育実習Ⅰは2016年3月,保育実習Ⅱは2017年3月に実施。
(3)調査手続き:保育実習Ⅰでは,実習の事後報告会にて調査についての説明を行い,承諾を得ると共に質問紙を配布,回収した。保育実習Ⅱでは,質問紙を実習前に配布し,ヒアリング調査時に回収した。
(4)質問紙:「保育所実習において学生が抱く感情についての調査研究Ⅰ」で得られた9つのカテゴリー(Table 1)をもとに14項目を作成し,それぞれの項目について,どの程度「困った」,「不安になった」,「戸惑った」というような気持ち(ネガティブな感情)になったかを5件法で尋ねた。また,同じ14項目を用いて,どの程度「うれしかった」,「楽しかった」,「幸せだ」というような気持ち(ポジティブな感情)になったかについても,同様に尋ねた。
結果と考察
 各カテゴリーの回答からカテゴリー得点を算出し,保育実習Ⅰと保育実習Ⅱでどのような変化が見られるかを検討するため,対応のあるt検定を行った。その結果,ポジティブな感情については有意な差は認められなかった。一方,ネガティブな感情については「b.子どもの発達・特性に応じた関わり」,「f.実習日誌の記入・作成」及び「g.保育所の方針」の3カテゴリーにおいて得点が減少しており,「d.実習生としての在り方」のみ得点の増加が見られた。すなわち,保育実習経験は,特に,学生のネガティブな感情に影響を与えるのではないかという可能性が示された。
引用文献
鎌田・小川(2014). 保育所実習において学生が抱く感情についての調査研究I・Ⅱ 日本教育心理学会総会発表論文集,56, 821-822.