日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PC(01-83)

ポスター発表 PC(01-83)

2017年10月7日(土) 15:30 〜 17:30 白鳥ホールB (4号館1階)

15:30 〜 17:30

[PC61] 中学生の相互独立性・相互協調性と学業ストレッサーへの認知的評価との関連

友人からのソーシャル・サポートを統制した検討

奥野誠一1, 濱口佳和2, 田島真沙美3, 霜村麦#4 (1.立正大学, 2.筑波大学, 3.東京女子体育大学・東京女子体育短期大学, 4.東京学芸大学)

キーワード:文化的自己観, 学業ストレス, 中学生

問題と目的
 中学生において,学業ストレスは友人関係とならんで学校適応に影響を及ぼすストレッサーとなる。ストレッサーに対する認知的評価はストレス反応の表出を規定する。奥野・濱口(2016)は,友人からのソーシャル・サポートを統制して相互独立性・相互協調性と友人関係ストレッサーに対する認知的評価との関連を検討し,相互独立性・相互協調性によって認知的評価が異なることを示した。しかし,学業ストレッサーへの認知的評価についての検討はされていない。
 そこで本研究では,中学生を対象とし,友人からのソーシャル・サポートの影響を統制して,相互独立性・相互協調性と学業ストレッサーに対する認知的評価との関連を明らかにすることを目的とする。
方   法
対象
 中学生678名に調査を実施した。有効回答は585名(男子286名,女子299名)であった。
調査手続きおよび内容
 2017年1~2月にかけて質問紙調査を実施した。
 中学生版相互独立性・相互協調性尺度(奥野・小林,2005) 相互独立性の下位領域である「言語主張」「自己重視」,相互協調性の下位領域である「他者重視」「評価懸念」の4因子から測定する尺度である。
 中学生用友人からの知覚されたサポート尺度(奥野・濱口,2017) 友人からの「承認・受容」「具体的援助」の2因子から測定する尺度である。
 中学生の学業ストレッサーに関する項目 中学生用学校ストレッサー尺度(嶋田,1998)のうち,学業ストレッサーに関する6項目を使用した。
 中学生用認知的評価尺度(三浦,2002) ストレッサーに対する「影響性」「コントロール可能性」の2因子から測定する尺度である。
結果と考察
 相互独立性・相互協調性と認知的評価との関連を検討するために,影響性およびコントロール可能性をそれぞれ予測変数とした階層的重回帰分析を男女別に行った(Step1:学業ストレッサーおよび友人からの知覚されたサポート,Step2:相互独立性・相互協調性の各下位領域,Step3:交互作用項)。
 影響性については,男女ともStep3において有意な重回帰式が得られた(順に,R2=.23,p<.001;R2=.24,p<.001)。男子では,他者重視(β=.24,p<.001),学業ストレッサーと言語的主張の交互作用項(β=-.17,p<.05;単純傾斜検定では有意差なし)および学業ストレッサーと他者重視の交互作用項(β=-.22,p<.001)において有意な関連が認められた。単純傾斜検定では,学業ストレッサーが低い場合のみ他者重視と影響性に正の関連が示された(β=.46,p<.001)。女子では,評価懸念(β=.21,p<.001),学業ストレッサーと自己重視の交互作用項(β=-.17,p<.01)において有意な関連が認められた。単純傾斜検定では,学業ストレッサーが低い場合のみ自己重視と影響性に正の関連が示された(β=.20,p<.05)。
 コントロール可能性については,男女ともStep3において有意な重回帰式が得られた(順に,R2=.29,p<.001;R2=.21,p<.001)。男女とも,言語的主張(順に,β=.31,p<.001;β=.28,p<.001),学業ストレッサーと言語的主張の交互作用項(β=-.13,p<.05;β=-.14,p<.05)において有意な関連が認められた。単純傾斜検定では,男子では学業ストレッサーの高低いずれにおいても傾斜は有意であったが,学業ストレッサーが低い場合(β=.43,p<.001)のほうが,高い場合(β=.19,p<.05)より言語的主張とコントロール可能性との関連が強くなる傾向が示された。女子では学業ストレッサーが低い場合のみ言語的主張とコントロール可能性に正の関連が示された(β=.42,p<.001)。
 さらに男子では,友人からの承認・評価と評価懸念の交互作用項(β=-.27,p<.01)でも有意な関連が認められた。単純傾斜検定では,友人からの承認・受容が高い場合のみ評価懸念とコントロール可能性に負の関連が示された(β=-.29,p<.05)。
 以上のように,学業ストレッサーに対する影響性の評価については,男子では他者重視,女子では評価懸念の高さとの関連が強いことが示された。一方,学業ストレッサーに対するコントロール可能性の評価については,男女とも言語的主張の高さとの関連が示された。また,とくに学業ストレッサーが低い場合にこれらの関連は強くなる傾向も示唆された。