The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PC(01-83)

ポスター発表 PC(01-83)

Sat. Oct 7, 2017 3:30 PM - 5:30 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

3:30 PM - 5:30 PM

[PC75] 学校評価GTO™ツールを用いたエンパワーメント評価実践の評価

池田琴恵1, 池田満2 (1.東京福祉大学短期大学部, 2.南山大学)

Keywords:学校評価, エンパワーメント評価, Getting To Outcomes™

問題と目的
 学校評価が実質的に義務化されてから10年が経過した。しかし,学校評価が改善に結びつかない,教員の負担や不安につながっているといった問題は,未だ解消されていない。こうした背景には,学校評価の実施手法が他者から評価される他者評価が中心となっていることが指摘されている。そこで,学校評価が本来意図している自己評価を実現する方法として,実践者らに評価のツールを提供し,実践の計画から実施まで自らの手で行えるよう支援するエンパワーメント評価アプローチに着目した。本研究では,エンパワーメント評価の実施方略の一つであるGTOを学校評価に改良した学校評価GTO(池田・池田,2015)を実践し,その効果を検証することを目的とする。
方   法
研究協力校:関東地方1校,近畿地方2校,中国地方2校の小学校5校が学校評価GTOを用いた学校評価実践を行った。
アウトカム評価:学校評価の質の評定にあたっては,長尾(2007)が作成した学校評価チェックリストをもとに評定票を作成し,研究者がフィールドノートと提供された資料学校の状況やワークシートの記入状況,各ステップの実施状況などを元に評定した。
プロセス評価:学校評価GTOの実施の質検証のため,各ステップの実施状況を5段階で評定した。
分析方法:学校評価の質との関連を明らかにするため,5校の事例の年度ごとの学校評価GTOの質のプロセス評価による評定結果と,アウトカム評価の評定による学校評価の質に関連があるかを検討した。こと,正規分布の仮定ができないことを考慮し,分析にはノンパラメトリック手法であるSpearmanの順位相関係数を用いた。
結   果
学校評価の質の向上と,学校評価GTOの実施の質の関係性を検討するため,アウトカム評価とプロセス評価の結果を年度ごとに散布図に示した(Figure 1)。5校それぞれの年度単位の評価結果を1つの単位として,学校評価の質(アウトカム評価),学校評価GTOの実施の質(プロセス評価)を行った結果,計12のデータを用いてspearmanの順位相関係数を用いて分析した。その結果,学校評価GTOの質と学校評価の質の順位相関係数はρ=.831(p<.001)となり,高い関連性があることが示された。
 次に,学校評価の質と関連のある学校評価GTOのステップを明らかにするため,学校評価GTOの各ステップの実施の質と学校評価の質のSpearmanの順位相関係数を算出した。その結果,学校評価GTOの各ステップの中で,学校評価の質の全ての要素と高い関連を示していたのは,#0組織作り,#6計画,#7実施/プロセス評価であった。
考   察
 本実践のアウトカム評価とプロセス評価を行った結果,学校評価GTOの実施の質の高さは,学校評価の実施の質の高さと関連があることが示された。学校評価GTO導入後に学校評価の実施の質は高まったことを併せると,学校評価GTOシステムが学校評価の実施の質を高める可能性が示されたといえる。
 次に,学校評価GTOの各ステップの中で,全ての学校評価の質と関係が多くあった要素について検討する。学校評価の実施にあたっては,#0の学校のビジョンの明確化,学校教育目標と活動の構造化,そして教職員を学校評価に巻き込んでいくためのアプローチが重要であることを示している。また,#6計画は,目標に対応した教育活動の計画が立てられていることの必要性を示しているといえよう。#7実施/プロセス評価は,教育活動の実践プロセスをモニタリングするだけではなく,年度途中で教育活動を改善するために行われるものであり,学校評価によって教育活動の改善を導く重要なステップであることが示された。
引用文献
池田琴恵・池田満(2015)Getting To Outcomes™を適用した学校評価ツールの開発 日本評価研究,15,3-16.