日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PC(01-83)

ポスター発表 PC(01-83)

2017年10月7日(土) 15:30 〜 17:30 白鳥ホールB (4号館1階)

15:30 〜 17:30

[PC81] センター試験における特異的多数出願者の年次推移

大学進学意思決定と社会的要因

内田照久1, 橋本貴充2 (1.独立行政法人大学入試センター, 2.帝京大学)

キーワード:大学入試, 進路選択, 東日本大震災

問題と目的
 高校生の大学進学に係わる意思決定は,どのようになされているのだろうか。大学入試が選抜的意味を持つ状況では,志願者数と入学定員の間で合否ラインが定まる。現在,少子化で高卒者数は減少している。すると,学力要因以外の人口動態によっても,出願動向が左右される(内田他, 2014)。
 また,センター試験では,一回の受験で多数の私立大学に出願できるようになり,事実上,受験機会が拡大している。このような社会状況の変化は,高校生の進路選択にどんな影響を与えているだろうか。本報告では,セ試による私大への出願動向から,社会的な要因による進学意思決定への影響について検討する。
方   法
 平成19~28年のセンター試験による私大への出願動向を分析した。一人の受験者がセ試の成績で,いくつの私大(募集単位別)に出願したかという「私大出願件数」をもとめ,その分布を検討した。なお,国公立大学や短期大学は除外して検討した。
結果と考察
 出願件数の単純統計量をTable 1に示す。私大への平均出願数は平成19年からずっと漸増傾向で,一人当りの私大出願数は増えてきたことがわかる。
 しかし,上側0.01%点は平成23年まで30件台だったものが,平成24年にいっきに50件と増加した。最大の出願件数も平成24年に急増している。その後,やや低下して沈静化したように見られたが,平成28年には反転上昇が見られた。
 Fig. 1に平成19年の出願件数の人数分布を示す。
対数頻度分布で底を打つ30件より,多く出願している者を特異的多数出願者とした。その地域分布の平成24年時の様子をFig.2に示す。
 図からは,宮城,福島,茨城に集中が見られる。これは東日本大震災の被災者に対する受験料免除などの臨時措置が影響を与えていたとみられる。
 一方,平成28年になると,首都圏4都県を中心とした集中が見られるようになる。これは首都圏の私大定員キャパシティの大きさに加え,受験料の複数学部のセット売りディスカウントやネット出願による手続きの簡素化が誘因と考えられる。
 進学意思決定に関わるキャリア研究では,社会的要因も十分に考慮に入れて検討する必要がある。
引用文献
内田照久・橋本貴充・鈴木規夫 (2014). 18歳人口減少期のセンター試験の出願状況の年次推移と地域特性 日本テスト学会誌,10(1), 47-68.