10:00 〜 12:00
[PD06] 幼児の遊びにおける役割分担の生成過程
砂場でのままごと遊びに焦点を当てて
キーワード:幼児, 遊び
問 題
幼稚園や保育所の砂場における幼児同士のままごと遊びでは,幼児の年齢が上がるにつれ,ままごとの題材に関するイメージがより具体的になり,砂に対する動きや遊びの展開が砂というものの性質に沿って行われる段階から,イメージを砂という素材を用いて具現化していく段階へと変化していくことを明らかにした(箕輪,2010)しかし,役割分担がどのようなきっかけで生起し何を子どもが引き受けているのかは明らかになっていない。そこで,本研究では,砂場における幼児同士のままごと遊びにおいて,子どもたちが何をてがかりにして役割を分担し実行していくのかを検討する。
方 法
【研究協力者・観察期間・観察方法】2016年4月〜2016年11月に,北海道・東北・関東・東海北陸・関西・中国四国・九州の幼稚園15園で,毎月1回10分程度砂場での自由遊び場面を,幼稚園教諭にビデオで撮影してもらった。ままごと場面は,3歳児12場面,4歳児5場面,5歳児8場面の合計25 場面撮影された。
【分析方法】撮影された25場面を,筆者に加え,幼児教育を専攻する学生2名で視聴した。①映像に映っている幼児が役割を引き受けたことを1回として数えたところ,3歳児22,4歳児25,5歳児17の役割を引き受ける姿が見られた。そして②引き受けた役割が,どのようなきっかけで生起し,どのような役割として引き受けられたのかについて時期ごとに検討した。
結 果
① 3歳児
4・5月は,保育者に誘われたり,指示されたり,保育者が他の子どもに言っている言葉をきいて,行われているままごとのイメージや何を作っているのかという見立てを理解することで,子どもは役割を引き受けていた。ただし,単なる模倣であったり,頼まれたり指示されたりしたことをそのまま行なっていたりしており,役割が必ずしも自発的に引き受けられているとは限らない。
6・7・8月になると,仲間や保育者の行為を見てその行為の意図を理解することで,相手の行為を真似していたり,イメージを形にするのに必要なものを運んできたりする姿が見られた。
9・10・11月には,言葉で何をイメージして作っているのかを宣言したり,仲間に指示されることでイメージを持ったりすることで,役割が生じていた。数人でだんごやケーキをいくつも作り並べていくために,イメージが展開せず役割も固定されたままの場面も6場面中3場面みられた。
②4歳児
4・5月は,仲間の行為と指示から,役割が生じていた。ただし,指示されるだけでなく,何を作ろうとしているのかのイメージが浮かぶことで,自分がすべき役割を考えて引き受けていた。
9・10・11月は,砂場全体を海やパーティ会場のイメージにするなど,遊びのなかで使う空間に広がりが見られ,それに伴い,「○○役」という役を引き受けながら,砂で作ったり石を集めたりという行為も,仲間の様子をみたりお互いに指示しあうことで引き受ける姿がみられる。
⑤5歳児
4・5月は「○○役」を引き受けるだけでなく,作っているもののイメージがより具体的になることから,その作る工程ごとに役割が生まれ引き受けられていっている。そのため,他の子どもの模倣というよりは,各自のイメージする工程を行い,それを言葉で相手に伝えることで,イメージを共有していた。
9・10・11月は,話し合いのなかで1つの店の中での様々な役割を分担し,そのなかでも作業を分担するという形で役割が分担されていた。
総合考察と今後の課題
ままごと遊びにおける役割は,ままごとのイメージと砂をどのように扱うかということが二重にまたはどちらかが優先されて生起していた。年齢があがることでより言葉でのイメージの共有や役割分担が行われていた。今後は,ままごとの場と役割の関連についても検討する。
付記:本研究は,全日本私立幼稚園連盟幼児教育研究機構の委託研究として行われた。
幼稚園や保育所の砂場における幼児同士のままごと遊びでは,幼児の年齢が上がるにつれ,ままごとの題材に関するイメージがより具体的になり,砂に対する動きや遊びの展開が砂というものの性質に沿って行われる段階から,イメージを砂という素材を用いて具現化していく段階へと変化していくことを明らかにした(箕輪,2010)しかし,役割分担がどのようなきっかけで生起し何を子どもが引き受けているのかは明らかになっていない。そこで,本研究では,砂場における幼児同士のままごと遊びにおいて,子どもたちが何をてがかりにして役割を分担し実行していくのかを検討する。
方 法
【研究協力者・観察期間・観察方法】2016年4月〜2016年11月に,北海道・東北・関東・東海北陸・関西・中国四国・九州の幼稚園15園で,毎月1回10分程度砂場での自由遊び場面を,幼稚園教諭にビデオで撮影してもらった。ままごと場面は,3歳児12場面,4歳児5場面,5歳児8場面の合計25 場面撮影された。
【分析方法】撮影された25場面を,筆者に加え,幼児教育を専攻する学生2名で視聴した。①映像に映っている幼児が役割を引き受けたことを1回として数えたところ,3歳児22,4歳児25,5歳児17の役割を引き受ける姿が見られた。そして②引き受けた役割が,どのようなきっかけで生起し,どのような役割として引き受けられたのかについて時期ごとに検討した。
結 果
① 3歳児
4・5月は,保育者に誘われたり,指示されたり,保育者が他の子どもに言っている言葉をきいて,行われているままごとのイメージや何を作っているのかという見立てを理解することで,子どもは役割を引き受けていた。ただし,単なる模倣であったり,頼まれたり指示されたりしたことをそのまま行なっていたりしており,役割が必ずしも自発的に引き受けられているとは限らない。
6・7・8月になると,仲間や保育者の行為を見てその行為の意図を理解することで,相手の行為を真似していたり,イメージを形にするのに必要なものを運んできたりする姿が見られた。
9・10・11月には,言葉で何をイメージして作っているのかを宣言したり,仲間に指示されることでイメージを持ったりすることで,役割が生じていた。数人でだんごやケーキをいくつも作り並べていくために,イメージが展開せず役割も固定されたままの場面も6場面中3場面みられた。
②4歳児
4・5月は,仲間の行為と指示から,役割が生じていた。ただし,指示されるだけでなく,何を作ろうとしているのかのイメージが浮かぶことで,自分がすべき役割を考えて引き受けていた。
9・10・11月は,砂場全体を海やパーティ会場のイメージにするなど,遊びのなかで使う空間に広がりが見られ,それに伴い,「○○役」という役を引き受けながら,砂で作ったり石を集めたりという行為も,仲間の様子をみたりお互いに指示しあうことで引き受ける姿がみられる。
⑤5歳児
4・5月は「○○役」を引き受けるだけでなく,作っているもののイメージがより具体的になることから,その作る工程ごとに役割が生まれ引き受けられていっている。そのため,他の子どもの模倣というよりは,各自のイメージする工程を行い,それを言葉で相手に伝えることで,イメージを共有していた。
9・10・11月は,話し合いのなかで1つの店の中での様々な役割を分担し,そのなかでも作業を分担するという形で役割が分担されていた。
総合考察と今後の課題
ままごと遊びにおける役割は,ままごとのイメージと砂をどのように扱うかということが二重にまたはどちらかが優先されて生起していた。年齢があがることでより言葉でのイメージの共有や役割分担が行われていた。今後は,ままごとの場と役割の関連についても検討する。
付記:本研究は,全日本私立幼稚園連盟幼児教育研究機構の委託研究として行われた。