10:00 AM - 12:00 PM
[PD31] 能動的学修科目を選択する学生の特性
PBL科目を選ぶ動機とコンピテンシー
Keywords:能動的学修, 適正処遇交互作用, PROG
目 的
一般にある教育方法の効果には,学修者の要因が影響することが知られている。教育方法と学修者との交互作用は適正処遇交互作用と呼ばれ,古くから検討されてきた問題である。本研究では,Project Based Learning(PBL)科目を選択する学生に,特徴があるか調べた。アトキンソンの達成動機付け理論にもとづいた質問紙調査とPROGテストのコンピテンシーの結果を,PBL科目履修希望者と非希望者で比較した。
方法と結果
本研究は,所属大学での研究倫理審査を受けた。
1年前期配当の選択科目を調査対象とした。企業から課題を受け,学生がグループワークを経てアイデアを提案し,企業が評価するPBL形式の演習である。2016年前期に,この科目の履修を希望した学生は53名であった。
<期待・価値質問紙>入学翌日のガイダンスで質問紙を配布,回収した。PBL科目で実施される8つの活動(発表,他者との協同など)について尋ねた。これら活動を実行する能力が自分にあるかを,平均的な社会人を100点として自己評定させた。また,これら活動を実施する能力が自身の将来に重要かどうかも,必要不可欠を100点として評定させた。これら活動を高校時代に経験した程度を,「3年間ほとんど毎日」を100%として評定させた。任意で,学籍番号の記入を求めた。
学籍番号を記入し,かつPBL科目を履修希望した48名と,希望せずかつ学籍番号を記入した216名を比較した。Figure1に平均値とSDを示す。
希望者は非希望者よりも,期待[t(261)=3.40, p<.01]も価値も[t(261)=3.73, p<.01]高かった。経験には有意差が無かった[t(261)=0.04,p=.97]。
<PROGテスト>学校法人河合塾と株式会社リアセックが開発,販売する質問紙調査である。汎用的な能力・態度・志向を測定するもので,リテラシーとコンピテンシーのテストから構成される。新入生全員を対象に入学後数日のうちに実施された。
人間社会学部入学生(有効回答数311)のコンピテンシーテストのみを分析した。周囲の環境に働きかけ対処する力を対課題基礎力,対人基礎力,対自己基礎力の3領域にわけて測定し,同じ問題に対する社会人の回答と比較して6段階でランク分けしたものである。領域別に平均ランクとSDをFigure2に示す。希望者と非希望者の平均値にWelchの検定を行うと,対人基礎力[t(66.58) =3.18,p<.01]と対自己基礎力[t(63.51)=2.57, p=.01]には有意差があったが,対課題基礎力[t(66.34)=0.85,p=.40]には有意差がなかった。
考 察
本研究はPBL科目であっても,やはり学修者個人の特性を考慮すべきことを示差する。
履修を希望する学生は,非希望者よりもPBL科目で実施されそうな活動を価値が高いと認識し,かつ自分もできると認識していた。実際,履修希望者は対人基礎力と対自己基礎力が高かった。この結果は,PBL科目への動機付けが期待×価値で予測できることを示唆している。学生の学習(履修)意欲を高めるには,学習内容の重要性を伝えるとともに,自信が無い学生に「できそうだ」という期待を持たせることも重要だろう。
また,PBL科目を履修する学生は,PBLで成長して欲しい能力が, 履修しない学生よりも始めから高い可能性がある。これは,授業の効果測定や授業の目的を考えるときに配慮すべき点であろう。
一般にある教育方法の効果には,学修者の要因が影響することが知られている。教育方法と学修者との交互作用は適正処遇交互作用と呼ばれ,古くから検討されてきた問題である。本研究では,Project Based Learning(PBL)科目を選択する学生に,特徴があるか調べた。アトキンソンの達成動機付け理論にもとづいた質問紙調査とPROGテストのコンピテンシーの結果を,PBL科目履修希望者と非希望者で比較した。
方法と結果
本研究は,所属大学での研究倫理審査を受けた。
<期待・価値質問紙>入学翌日のガイダンスで質問紙を配布,回収した。PBL科目で実施される8つの活動(発表,他者との協同など)について尋ねた。これら活動を実行する能力が自分にあるかを,平均的な社会人を100点として自己評定させた。また,これら活動を実施する能力が自身の将来に重要かどうかも,必要不可欠を100点として評定させた。これら活動を高校時代に経験した程度を,「3年間ほとんど毎日」を100%として評定させた。任意で,学籍番号の記入を求めた。
学籍番号を記入し,かつPBL科目を履修希望した48名と,希望せずかつ学籍番号を記入した216名を比較した。Figure1に平均値とSDを示す。
希望者は非希望者よりも,期待[t(261)=3.40, p<.01]も価値も[t(261)=3.73, p<.01]高かった。経験には有意差が無かった[t(261)=0.04,p=.97]。
<PROGテスト>学校法人河合塾と株式会社リアセックが開発,販売する質問紙調査である。汎用的な能力・態度・志向を測定するもので,リテラシーとコンピテンシーのテストから構成される。新入生全員を対象に入学後数日のうちに実施された。
人間社会学部入学生(有効回答数311)のコンピテンシーテストのみを分析した。周囲の環境に働きかけ対処する力を対課題基礎力,対人基礎力,対自己基礎力の3領域にわけて測定し,同じ問題に対する社会人の回答と比較して6段階でランク分けしたものである。領域別に平均ランクとSDをFigure2に示す。希望者と非希望者の平均値にWelchの検定を行うと,対人基礎力[t(66.58) =3.18,p<.01]と対自己基礎力[t(63.51)=2.57, p=.01]には有意差があったが,対課題基礎力[t(66.34)=0.85,p=.40]には有意差がなかった。
考 察
本研究はPBL科目であっても,やはり学修者個人の特性を考慮すべきことを示差する。
履修を希望する学生は,非希望者よりもPBL科目で実施されそうな活動を価値が高いと認識し,かつ自分もできると認識していた。実際,履修希望者は対人基礎力と対自己基礎力が高かった。この結果は,PBL科目への動機付けが期待×価値で予測できることを示唆している。学生の学習(履修)意欲を高めるには,学習内容の重要性を伝えるとともに,自信が無い学生に「できそうだ」という期待を持たせることも重要だろう。
また,PBL科目を履修する学生は,PBLで成長して欲しい能力が, 履修しない学生よりも始めから高い可能性がある。これは,授業の効果測定や授業の目的を考えるときに配慮すべき点であろう。