10:00 AM - 12:00 PM
[PD34] 反復検索による学習が幼児の記憶保持に及ぼす効果
非言語課題による検討
Keywords:反復検索, 幼児, 転移
問題と目的
幼児にとってどこに何があるのかといった対象の配置の理解やその対象となる物の記憶の定着は,生活に適応していく上で重要である。しかし幼児における記憶方略の研究は少なく,どのように手立てをすれば幼児の生活に根ざした記憶の保持が高まるかはわかっていない。そのような中,幼児を対象に場所の記憶の定着に注目した研究があるHotta et al。, 2016)が,数日後,数週間後というように保持時間を延長した場合にも効果が認められるかどうかは検討していない。
そのため本研究では,検索した学習内容をどのくらいの期間保持できるかについて非言語課題を用いて直後/一日後/一週間後に確認する。もし成人と同じ結果になるならば一週間後も保持されるはずである。しかし幼児の記憶保持は成人と比べても脆弱であることは容易に想像できる。そのため,一日後は効果があるが一週間後では効果が消失されることも十分に考えられる。
方 法
実験参加児
生活月齢62〜77か月のK地区にあるこども園2園の幼児56名(男児30名,女児26名)であり ,20名は直後,46名中20名は一日後,残りの16名は1週間後条件であった。なお,1週間後に参加した実験参加児16名のうち2名は一週間後に園を欠席したため,データ分析から除外した。
実験計画
習得(誘導/検索)×保持時間(直後/一日後/1週間後)の2要因計画で実施した。第1要因は参加者内であり,第2要因は参加者間計画であった。さらに,従属変数は幼児が玩具の場所を正しく再生した数であった。
材料及び手続き
(1)初回学習:対象幼児すべてに対し,おもちゃを使ったゲームと称し,8項目それぞれに設定した場所を教えた。(2)反復検索/聴取:全ての幼児に対して,8学習項目のうち半数については反復検索項目,残りの半数は反復聴取項目として設定した。(a)反復検索条件:各項目の場所について質問(例:ボールの場所はどこか)し誤答や回答できない場合は,適切な場所を即座にフィードバックした。これを反復して3回反復して行った。なお,後述する反復聴取条件との学習時間を統一するため,回答に失敗し続けたとしても,最大で3回しか検索させないようにした。(b)反復聴取条件:各項目について適切な場所を教える(例:コップの場所はここなんだよ)。反復検索条件と同様,3回連続して幼児に聞かせた。 (3)テスト段階:直後テストでは,全ての幼児に対して,8項目のテスト項目をランダムに配置し,各項目に加えサイコロ,おはじきの非学習材料についても質問し回答を求めた。これと同様のテストを,一日後,一週間後に実施した。
結果と考察
習得条件(誘導/検索)×保持時間(直後/一日後/1週間後)の分散分析を実施したところ,習得条件の主効果(F(1, 49)= 4。42, MSe = 。38, p < 。05),保持時間条件の主効果も有意であった(F(2, 49)= 24。10, MSe = 1。42, p < 。001)。また,習得条件×保持時間の交互作用が有意傾向であったため(F(2, 49)= 3。16, MSe = 1。20, p < 。06),下位分析を実施した結果,直後は誘導条件と検索条件に差はみられない(F < 1, ns)が,一日後では検索条件の方が誘導条件よりも成績が高かった(F(1, 49)= 10。59, MSe = 。38, p < 。01)。しかし,一週間後では誘導条件と検索条件に差がみられないことがわかった(F < 1, ns)。
本研究でも一日後において,検索による学習の方が,実験者が子どもと一緒に置く符号化に基づく学習よりも成績が高かった。しかし一週間後においては両学習条件に差がなかった。よって一週間という時間が経つと誘導における学習と検索における学習の違いは消失し,数時間や数日後の時間の範囲でしか検索の学習の有効性は認められないことが示唆された。
幼児にとってどこに何があるのかといった対象の配置の理解やその対象となる物の記憶の定着は,生活に適応していく上で重要である。しかし幼児における記憶方略の研究は少なく,どのように手立てをすれば幼児の生活に根ざした記憶の保持が高まるかはわかっていない。そのような中,幼児を対象に場所の記憶の定着に注目した研究があるHotta et al。, 2016)が,数日後,数週間後というように保持時間を延長した場合にも効果が認められるかどうかは検討していない。
そのため本研究では,検索した学習内容をどのくらいの期間保持できるかについて非言語課題を用いて直後/一日後/一週間後に確認する。もし成人と同じ結果になるならば一週間後も保持されるはずである。しかし幼児の記憶保持は成人と比べても脆弱であることは容易に想像できる。そのため,一日後は効果があるが一週間後では効果が消失されることも十分に考えられる。
方 法
実験参加児
生活月齢62〜77か月のK地区にあるこども園2園の幼児56名(男児30名,女児26名)であり ,20名は直後,46名中20名は一日後,残りの16名は1週間後条件であった。なお,1週間後に参加した実験参加児16名のうち2名は一週間後に園を欠席したため,データ分析から除外した。
実験計画
習得(誘導/検索)×保持時間(直後/一日後/1週間後)の2要因計画で実施した。第1要因は参加者内であり,第2要因は参加者間計画であった。さらに,従属変数は幼児が玩具の場所を正しく再生した数であった。
材料及び手続き
(1)初回学習:対象幼児すべてに対し,おもちゃを使ったゲームと称し,8項目それぞれに設定した場所を教えた。(2)反復検索/聴取:全ての幼児に対して,8学習項目のうち半数については反復検索項目,残りの半数は反復聴取項目として設定した。(a)反復検索条件:各項目の場所について質問(例:ボールの場所はどこか)し誤答や回答できない場合は,適切な場所を即座にフィードバックした。これを反復して3回反復して行った。なお,後述する反復聴取条件との学習時間を統一するため,回答に失敗し続けたとしても,最大で3回しか検索させないようにした。(b)反復聴取条件:各項目について適切な場所を教える(例:コップの場所はここなんだよ)。反復検索条件と同様,3回連続して幼児に聞かせた。 (3)テスト段階:直後テストでは,全ての幼児に対して,8項目のテスト項目をランダムに配置し,各項目に加えサイコロ,おはじきの非学習材料についても質問し回答を求めた。これと同様のテストを,一日後,一週間後に実施した。
結果と考察
習得条件(誘導/検索)×保持時間(直後/一日後/1週間後)の分散分析を実施したところ,習得条件の主効果(F(1, 49)= 4。42, MSe = 。38, p < 。05),保持時間条件の主効果も有意であった(F(2, 49)= 24。10, MSe = 1。42, p < 。001)。また,習得条件×保持時間の交互作用が有意傾向であったため(F(2, 49)= 3。16, MSe = 1。20, p < 。06),下位分析を実施した結果,直後は誘導条件と検索条件に差はみられない(F < 1, ns)が,一日後では検索条件の方が誘導条件よりも成績が高かった(F(1, 49)= 10。59, MSe = 。38, p < 。01)。しかし,一週間後では誘導条件と検索条件に差がみられないことがわかった(F < 1, ns)。
本研究でも一日後において,検索による学習の方が,実験者が子どもと一緒に置く符号化に基づく学習よりも成績が高かった。しかし一週間後においては両学習条件に差がなかった。よって一週間という時間が経つと誘導における学習と検索における学習の違いは消失し,数時間や数日後の時間の範囲でしか検索の学習の有効性は認められないことが示唆された。