日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PD(01-83)

ポスター発表 PD(01-83)

2017年10月8日(日) 10:00 〜 12:00 白鳥ホールB (4号館1階)

10:00 〜 12:00

[PD38] 創造性に関する心理学的研究の動向

テーマ別の件数の推移を中心として

山口洋介1, 三宮真智子2 (1.大阪大学大学院, 2.大阪大学大学院)

キーワード:創造性, 創造的思考, アイデア生成

問   題
 2007年にAPA(米国心理学会)から『Psychology of Creativity, Aesthetics and the Arts』が創刊されたことを筆頭に,ここ10年間で10誌を超える創造性関連の論文誌が創刊されている。創造性に対する社会的ニーズの高まりを背景として,学術的にも大きな関心が向けられていると推測される。本稿では,これまでどのような観点から研究が行われてきたのか,テーマ別に発表件数の推移を分析することで,創造性に関する心理学的研究の動向を探ることを目的とした。
方   法
 Sternberg & Lubart(1999)や孫・井上(2003)の手法を参考に,心理学文献に関するデータベースである「PsycINFO」を利用し,文献検索を行った。1960年から2016年までに発表された研究を対象に,基本的に5年ごとに区切って件数を集計することとした。創造性関連の文献は,「Subject Headings」として登録のある「creativity/ creativity measurement/ divergent thinking/ brainstorming/ ideation」の5項目を用いて検索した。テーマの検索においては,「PsycINFO Classification Code」の分類を基に,創造性と結びつきが深いと想定されるカテゴリを抽出した。なお,内容的に近いと判断された一部のカテゴリについては合算した。

結果および考察
 各年代において発表された創造性研究のうち,それぞれの研究テーマが占める割合を算出した結果を,Figure 1に示す。1960年代は創造的パーソナリティに関する研究が40%前後であり,中心的な位置づけを占めていたことがうかがわれた。その後,創造的パーソナリティ研究の割合は全体的に緩やかな下降傾向にあり,1980年代には発達心理学の観点から大きな関心が寄せられていたことが見て取れる。1990年代以降,産業・組織心理学における研究が徐々に増加し始め,近年では最も高い割合を占めるテーマの一つとなっていることが分かる。また,教育心理学の観点からは,どの年代においても平均的に高い関心が向けられていることが示唆された。その他,心理測定法や実験心理学,生理学・神経科学等の観点からも,割合はそれほど高くないものの,常に検討が加えられ続けていることがうかがわれた。
引用・参考文献
孫媛・井上俊哉 (2003). 創造性に関する心理学的研究の動向 NII Journal, 5, 65-73.
Sternberg, R.J. & Lubart, T.I. (1999). The concept of creativity: Prospects and paradigms. In R.J. Sternberg (Ed.), Handbook of creativity (pp. 3-15). NY: Cambridge University Press.