The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PD(01-83)

ポスター発表 PD(01-83)

Sun. Oct 8, 2017 10:00 AM - 12:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

10:00 AM - 12:00 PM

[PD44] 幼稚園教諭養成課程における教育実践研究Ⅳ

個人ならびに集団における効力感と学習効果との関連

金子智栄子1, 金子智昭2, 金子功一3 (1.文京学院大学, 2.埼玉純真短期大学, 3.植草学園大学)

Keywords:幼稚園教諭養成, 効力感, マイクロティーチング

問題と目的
 金子ら(研究Ⅱ,教心58回総会)は,動機づけ理論における達成目標理論の観点から,幼稚園教諭志望学生の達成目標志向性が簡易型マイクロティーチング(以下,MT)の成果に及ぼす影響性を検討した。その結果,マスタリー目標のみがMTの有効性や力量形成の認知に対して正の影響を及ぼしていることが示された。そこで本研究では,他の動機づけ指標として新たに「効力感」の概念を取り上げて,MTの成果との関連性を検討することを目的とする。その際,個人が保有する効力感と集団が持つ効力感の2つに着目する。教師効力研究において,一人ひとりの教師が持つ「教師効力感」と教師集団が持つ「教師集団効力感」は,異なる概念として研究が展開されている(e.g.,Klassen,Tze,Betts,& Gordon,2011)。MTは,グループ活動を重視した演習形式の授業という点において,グループとしての集団効力感もMTの成果を規定する要因の一つとして考えられる。但し,保育者集団効力感は既存の尺度が散見されないため,尺度作成をも合わせて行う。

方   法
対象者:埼玉県内の4年制A大学1年生の保育者志望学生117名(3クラス構成で1クラス39名,男性13名,女性104名)。
訓練期間:2016年11月から翌1月。保育心理学(演習)のアクティブラーニングとして6コマ(1コマ90分)を使用した。
訓練手続き:学生が幼児役になる簡易型MTを実施。クラス別に3班に分け,1つの班の12人程度が幼児役となり2つに分かれて,他の2つの班の教師役から指導を受ける。教師役ではない学生は,観察者となり記録をとる。手順は,(1)各班で指導案と教材作り,(2)各班で模擬保育の練習,(3)指導実践,(4)前回の反省を生かして再度指導実践,(5)班別反省会,(6)学習成果の公表と教員の総評。訓練終了の1週間後,アンケートに回答。
調査内容:MTの成果を測定する指標として,(1)実習未経験者用簡易型MT有効性測定尺度(研究Ⅰ,教心58回総会)の5下位尺度29項目(4段階評定),(2)力量形成の尺度(研究Ⅰ)の16項目(4段階評定),(3)保育者効力感尺度(三木・桜井,1998)の10項目(3段階評定)を用いた。保育者集団効力感は,筆者ら3人が,淵上ら(2006)の「教師集団効力感尺度」の第1因子である『組織活動・校務分掌に関する集団効力感』の項目を参考に11項目を作成した(4段階評定)。

結果と考察
1.保育者効力感と有効性・力量形成の関連性 保育者効力感と有効性及び力量形成のピアソンの相関係数を算出した。有効性の「保育者としての自覚と指導技術」「学習状態の認識と学習意欲」は順にr=.21(p<.05),.18(p<.05),力量形成の「連携」「態度」「技術」「視野の拡大・深化」は順にr=.34(p<.01),.40(p<.01),.36 (p<.01),.43(p<.01)であった。学習者が指導技術の熟達や意欲の向上を実感することに伴い,保育者効力感が形成される可能性が示された。
2.保育者集団効力感尺度の作成と関連性
因子分析(最尤法・promax回転)の結果,1因子構造が確認され,全項目の負荷量が.68以上と高い値を示していた。「保育者集団効力感尺度」(α=.94,M=3.45,SD=.54)と保育者効力感と有効性・力量形成のピアソンの相関係数を算出した結果,有意な関連性が得られなかった。本研究の対象者は学生であり,専門職である保育者としての集団凝集性が高まっていなかったためと考えられる。