The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PD(01-83)

ポスター発表 PD(01-83)

Sun. Oct 8, 2017 10:00 AM - 12:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

10:00 AM - 12:00 PM

[PD45] 幼稚園教諭養成課程における教育実践研究Ⅴ

友人関係の特徴が効力感,学習効果に及ぼす影響性

金子功一1, 金子智昭2, 金子智栄子3 (1.植草学園大学, 2.埼玉純真短期大学, 3.文京学院大学)

Keywords:幼稚園教諭養成, 効力感, 友人関係

問題と目的
 金子ら (研究Ⅳ) では,MTによる有効性や力量形成が高まると共に,保育者効力感が形成される可能性が示された。しかし,MTはグループ活動を重視した演習形式の授業であるにも関わらず,保育者集団効力感との関連は得られなかった。これは,専門職としての保育者意識が低かったためだと考えられる。そこで,対象が大学生であることを考慮し,大学生の友人関係に着目する。金子ら (研究Ⅲ) は,MTによる授業場面では,友人との葛藤を適切に解決できる効力感をもつことが学習効果と関連することを示している。ただし,金子・中谷 (2014) は友人との葛藤を適切に解決できる効力感をもつだけでなく,葛藤解決を促す友人に対する価値観の高さも重要であるとしている。
 したがって本研究では,青年期の友人関係の特徴をとらえる尺度 (金子・中谷,2014) がMTによる有効性や力量形成,保育者効力感と保育者集団効力感にどのような影響を及ぼすかについて検討することを目的とする。
方   法
1. 対象者・訓練期間・手続き:研究Ⅳを参照。
2. 調査内容:1) MTの効果として,有効性と力量形成の各尺度,保育者効力感と保育者集団効力感の各尺度 (研究Ⅳ参照)。2) 青年期の友人関係をとらえる尺度 (金子・中谷, 2014) の下位尺度である「友人に対する価値観 (13項目;以下,価値観)」と「友人との葛藤解決効力感 (6項目;以下,葛藤解決効力感)」を用いた。なお1) は結果変数,2) は状態変数として設問を工夫した。
結果と考察
1. 友人関係の特徴をとらえる尺度 (価値観,葛藤解決効力感) との関連性
 保育者効力感,保育者集団効力感及びMTの有効性,力量形成との相関分析を行ったところ,価値観は有効性の「学習意欲 (r=.23 (p<.05))」と「幼児理解 (.37 (p<.01))」との間に有意な正の相関があった。また,葛藤解決効力感は保育者効力感,保育者集団効力感と有意な正の相関 (r=.24, .30 (p<.01)) があり,有効性の「保育者としての自覚と指導技術」「学習意欲」「幼児理解」「指導案の書き方」との間に有意な正の相関 (r=.19~.40 (p<.01:p<.05)) がそれぞれ示された。
 価値観が高いほど,MTの有効性を高め,葛藤解決効力感が高いほど,保育者個人及び集団効力感,有効性や力量形成を高める可能性が示された。
2. 価値観×葛藤解決効力感の上位下位の区分による学習効果の検討
 中央値より高い場合を上位群,以下を下位群とした,価値観×葛藤解決効力感からHH群 (30人, 25.2%),HL群 (13人, 10.9%),LH群 (21人, 15.9%),LL群 (57人, 47.8%) の4群を構成し,学習効果 (有効性,力量形成) の各下位尺度による一要因被験者間の分散分析を行った。分散分析の結果,群間は,有効性の「保育者としての自覚と指導技術」(F (3,109)=4.87, p<.01)「学習意欲」(F (3,114)=3.21, p<.05)「幼児理解」(F (3,112) =3.23, p<.05)「指導案の書き方」(F (3,115) =3.44, p<.05) にて有意となった。TukeyのHSD法よる多重比較を行ったところ,「保育者としての自覚と指導技術」はHH群 (M=3.49, SD=.31) がLL群 (M=3.16, SD=.40) よりもp<.01,「学習意欲」はHH群 (M=3.71, SD=.31) がLL群(M=3.48, SD=.45) よりもp<.05,「幼児理解」はHH群 (M=3.82, SD=.32) がLL群 (M=3.50, SD=.51) よりもp<.05,「指導案の書き方」はLH群 (M=3.68, SD=.42) がLL群 (M=3.33, SD=.51) よりもp<.05で有意に高かった。
 価値観と葛藤解決効力感の両方が高かった者は,低い者よりも「保育者としての自覚や技能」「学習意欲」「幼児理解」を高めていた。また,価値観が低く葛藤解決効力感が高い者であっても,「指導案の書き方」を向上させる可能性が示された。
 友人関係の特徴によって保育者個人及び集団の効力感,学習効果を高めることが示された。そこで,演習形式の授業の学習効果を高めるためには,友人との関係を考慮する必要があると考える。