10:00 〜 12:00
[PD51] 好きな人と嫌いな人に対する性格の評価の違いは何を意味するか
キーワード:対人関係, 対人魅力, 対人好悪
目 的
他者の魅力を評価するときに,態度や性格の類似度が高まるほど,魅力も高くなることが示されている(Byrne & Nelson, 1965)。そこで,梶原・梶原(2012)は,その逆に,自分の性格が,好きな人とは似ていて,嫌いな人とは似ていないといえるのかを調べた。その際,主要5因子を性格の評価点にして,調査対象者自身が,自分と好きな人,嫌いな人の三者すべての性格を5段階で評価した。そのため,その結果が,好きな人・嫌いな人の性格の実像というよりは,評価をする側の,好きや嫌いという感情によってもたらされたことも考えられた。そこで,本研究では,自分と,好きな人と嫌いな人の性格が,主要5因子において,どのように異なり,何が示されたのかを調べた。
方 法
調査対象者 調査の対象は,19歳から78歳の382名(女性247名,男性135名)の通信制大学生であった。平均年齢は,47.6歳(SD=9.9歳)であった。
調査内容 村上・村上(1999)による,主要5因子性格検査の5因子である外向性,協調性,勤勉性,情緒安定性,知性を評価項目とした。5段階評価では,外向性は,内向的と外向的,協調性は,冷たいと暖かい,勤勉性は,怠惰と勤勉,情緒安定性は,神経質と気楽,知性は,浅はかと思慮深い,を両端として5段階に区切り,評価スコアを,左から右へ1点から5点とした。
手続き はじめに主要5因子の説明をしたあと,その5項目について,対象者に,同性で好きな人と嫌いな人,そして自分自身の性格を,5段階で評価させた。回答順序は,好き,嫌い,自分による6通りの順列のいずれかとした。
結 果
評価対象ごとに,5因子それぞれの5段階評価のスコアについて,平均値を求めた(Table 1)。この値について, 3(評価対象)×5(因子)の2要因の分散分析を行った。その結果,評価対象と因子の主効果はともに有意であったが,交互作用も有意であった(F(8, 3048)=96.83, p<.001)。そこで,単純主効果の検定を行った結果,評価対象については,外向性以外は,すべて,好き>自分>嫌い,であった。外向性では,好き>嫌い>自分,となった。5因子については,自分では,勤勉性と知性がもっとも高く,情緒安定性がもっとも低かった。好きな人では,協調性がもっとも高く,情緒安定性がもっとも低かった。嫌いな人では,外向性がもっとも高く,協調性がもっとも低かった。
考 察
評価対象については,全体的には,自分をはさんで,好きの評価スコアが高く,嫌いが低くなった。特に,好きな人の外向性と協調性の高さや,嫌いな人の協調性の低さは,対人好悪に大きな影響を与える可能性があるといえるだろう。
たが,好きな人の評価スコアが,5因子のすべてでもっとも高く,嫌いな人が,外向性以外のすべてでもっとも低かった,ということからは,評価が,その対象の実像というよりは,好きや嫌いという感情がそうさせたということの方が,よりありそうに思われる。
引用文献
Byrne, D, & Nelson, D. (1965). Journal of Personality and Social Psychology, 1, 659-663.
梶原直樹・梶原和子 (2012). 日本心理学会第76大会発表論文集,2AMB11.
村上宣寛・村上千恵子 (1999). 性格は5次元だった 培風館
他者の魅力を評価するときに,態度や性格の類似度が高まるほど,魅力も高くなることが示されている(Byrne & Nelson, 1965)。そこで,梶原・梶原(2012)は,その逆に,自分の性格が,好きな人とは似ていて,嫌いな人とは似ていないといえるのかを調べた。その際,主要5因子を性格の評価点にして,調査対象者自身が,自分と好きな人,嫌いな人の三者すべての性格を5段階で評価した。そのため,その結果が,好きな人・嫌いな人の性格の実像というよりは,評価をする側の,好きや嫌いという感情によってもたらされたことも考えられた。そこで,本研究では,自分と,好きな人と嫌いな人の性格が,主要5因子において,どのように異なり,何が示されたのかを調べた。
方 法
調査対象者 調査の対象は,19歳から78歳の382名(女性247名,男性135名)の通信制大学生であった。平均年齢は,47.6歳(SD=9.9歳)であった。
調査内容 村上・村上(1999)による,主要5因子性格検査の5因子である外向性,協調性,勤勉性,情緒安定性,知性を評価項目とした。5段階評価では,外向性は,内向的と外向的,協調性は,冷たいと暖かい,勤勉性は,怠惰と勤勉,情緒安定性は,神経質と気楽,知性は,浅はかと思慮深い,を両端として5段階に区切り,評価スコアを,左から右へ1点から5点とした。
手続き はじめに主要5因子の説明をしたあと,その5項目について,対象者に,同性で好きな人と嫌いな人,そして自分自身の性格を,5段階で評価させた。回答順序は,好き,嫌い,自分による6通りの順列のいずれかとした。
結 果
評価対象ごとに,5因子それぞれの5段階評価のスコアについて,平均値を求めた(Table 1)。この値について, 3(評価対象)×5(因子)の2要因の分散分析を行った。その結果,評価対象と因子の主効果はともに有意であったが,交互作用も有意であった(F(8, 3048)=96.83, p<.001)。そこで,単純主効果の検定を行った結果,評価対象については,外向性以外は,すべて,好き>自分>嫌い,であった。外向性では,好き>嫌い>自分,となった。5因子については,自分では,勤勉性と知性がもっとも高く,情緒安定性がもっとも低かった。好きな人では,協調性がもっとも高く,情緒安定性がもっとも低かった。嫌いな人では,外向性がもっとも高く,協調性がもっとも低かった。
考 察
評価対象については,全体的には,自分をはさんで,好きの評価スコアが高く,嫌いが低くなった。特に,好きな人の外向性と協調性の高さや,嫌いな人の協調性の低さは,対人好悪に大きな影響を与える可能性があるといえるだろう。
たが,好きな人の評価スコアが,5因子のすべてでもっとも高く,嫌いな人が,外向性以外のすべてでもっとも低かった,ということからは,評価が,その対象の実像というよりは,好きや嫌いという感情がそうさせたということの方が,よりありそうに思われる。
引用文献
Byrne, D, & Nelson, D. (1965). Journal of Personality and Social Psychology, 1, 659-663.
梶原直樹・梶原和子 (2012). 日本心理学会第76大会発表論文集,2AMB11.
村上宣寛・村上千恵子 (1999). 性格は5次元だった 培風館