10:00 〜 12:00
[PD69] 中学生の学校適応感と進路目標との関連についての縦断的検討
キーワード:中学生, 学校適応感, 進路目標
問題と目的
思春期の子どもの不登校やいじめなど,学校適応に関する諸問題が社会的にも注目されている。学校適応感は,個人の行動と環境との相互作用によって生じるものであり(大対ら,2007),個人-環境の適合性の視点から研究を進めていく必要性が指摘されている。中学校においては3年生での進路の選択が学校生活での最終目標とされている。そこで,学校適応感についての6年間の縦断調査の結果得られた4群のコホートデータから,各コホート間の共通点と差異を,進路目標との関連から検討し,中学生の学校適応感の実態を明らかにすることを研究の目的とした。
方 法
1.調査協力者
B県内の公立中学校,A校に在籍する1~3年生を対象にX年~X+5年の6年間に渡って,学年末の2月~3月に調査を実施した。1年時から卒業を迎える3年時までの集団を1つのコホートとして,4コホートのデータを得た。各時点の調査で回答に不備のなかったコホートA1=194~170名,A2=240~229名,A3=234~210名,A4=221~209名を分析対象とした。
2.質問紙
・6領域学校適応感尺度(ASSESS)(栗原・井上,2010)。6因子×5項目+crit項4項目の計34項目,5件法。
・進路目標尺度。2因子×5項目の計10項目,5件法。
結果と考察
結果
各群の基本統計量(6領域と平均値の計7領域)を元に,まず,学年毎にコホートA1~A4(4)×性(2)の2要因分散分析を行った。1年生では友人サポートと学習を除く5領域で有意差が見られ,コホートA2が4領域で最上位であった。2年生では教師,非侵害,学校適応感の3領域で有意差が見られ,A2が2領域で最上位であった。3年生では教師,非侵害の2領域で有意差が見られ,A2が1領域で最上位であった。性差は学年を通して,生活満足感と学習的適応が男>女,友人と向社会的スキルが女>男であった。教師サポートは1年生では男>女だった。3年の向社会的スキルでは,女>男の交互作用が見られた。(Figure1~4)
次に,性別にコホートA1~A4(4)×学年(3)の
2要因分散分析を行った。男子では教師で1・3年>2年の,女子では非侵害と学校適応感で3年>2年の有意差が見られた。交互作用は男女ともに教師で見られ,女子は非侵害でも見られた。
進路目標尺度は分散分析の結果,進路不安,進路努力ともに3年>1・2年であり,重回帰分析の結果は,進路努力-向社会(β=.38***),進路不安-学習(β=.47***)などの関連が見られた。
考察
縦断調査から,コホートによって学校適応感の推移に違いがあることが明らかになった。特にコホートA2は1年生で高かったが,3年生では他のコホートとの差が小さくなってきている。全体的には2年生で低下するものの,進路目標のはっきりする3年生では上昇している点に注目したい。また,領域による性差はコホート,学年ともにほぼ1貫していた。教師サポートや非侵害的関係のように,性差よりもコホートの差を反映している領域も見られた。
思春期の子どもの不登校やいじめなど,学校適応に関する諸問題が社会的にも注目されている。学校適応感は,個人の行動と環境との相互作用によって生じるものであり(大対ら,2007),個人-環境の適合性の視点から研究を進めていく必要性が指摘されている。中学校においては3年生での進路の選択が学校生活での最終目標とされている。そこで,学校適応感についての6年間の縦断調査の結果得られた4群のコホートデータから,各コホート間の共通点と差異を,進路目標との関連から検討し,中学生の学校適応感の実態を明らかにすることを研究の目的とした。
方 法
1.調査協力者
B県内の公立中学校,A校に在籍する1~3年生を対象にX年~X+5年の6年間に渡って,学年末の2月~3月に調査を実施した。1年時から卒業を迎える3年時までの集団を1つのコホートとして,4コホートのデータを得た。各時点の調査で回答に不備のなかったコホートA1=194~170名,A2=240~229名,A3=234~210名,A4=221~209名を分析対象とした。
2.質問紙
・6領域学校適応感尺度(ASSESS)(栗原・井上,2010)。6因子×5項目+crit項4項目の計34項目,5件法。
・進路目標尺度。2因子×5項目の計10項目,5件法。
結果と考察
結果
各群の基本統計量(6領域と平均値の計7領域)を元に,まず,学年毎にコホートA1~A4(4)×性(2)の2要因分散分析を行った。1年生では友人サポートと学習を除く5領域で有意差が見られ,コホートA2が4領域で最上位であった。2年生では教師,非侵害,学校適応感の3領域で有意差が見られ,A2が2領域で最上位であった。3年生では教師,非侵害の2領域で有意差が見られ,A2が1領域で最上位であった。性差は学年を通して,生活満足感と学習的適応が男>女,友人と向社会的スキルが女>男であった。教師サポートは1年生では男>女だった。3年の向社会的スキルでは,女>男の交互作用が見られた。(Figure1~4)
次に,性別にコホートA1~A4(4)×学年(3)の
2要因分散分析を行った。男子では教師で1・3年>2年の,女子では非侵害と学校適応感で3年>2年の有意差が見られた。交互作用は男女ともに教師で見られ,女子は非侵害でも見られた。
進路目標尺度は分散分析の結果,進路不安,進路努力ともに3年>1・2年であり,重回帰分析の結果は,進路努力-向社会(β=.38***),進路不安-学習(β=.47***)などの関連が見られた。
考察
縦断調査から,コホートによって学校適応感の推移に違いがあることが明らかになった。特にコホートA2は1年生で高かったが,3年生では他のコホートとの差が小さくなってきている。全体的には2年生で低下するものの,進路目標のはっきりする3年生では上昇している点に注目したい。また,領域による性差はコホート,学年ともにほぼ1貫していた。教師サポートや非侵害的関係のように,性差よりもコホートの差を反映している領域も見られた。