1:30 PM - 3:30 PM
[PE01] 他者が人とロボットのときの心の理解は?
感情に着目して
Keywords:他者理解, 心の理論, 感情
問 題
これまでも,幼児期を中心にした「心の理論」をテーマにした研究は数多くなされてきている(Wellman&Liu,2004)。その際,子どもは他者理解を尋ねる課題で抽象的な直接には観察不可能な心的状態の理解を求められるのだが,社会性の発達の側面では感情的理解も求められてくる。Ekman(1978)では,基本感情カテゴリーとして,6種類(驚き,喜び,怒り,嫌悪,恐怖,悲しみ)があげられる。この感情分化は生後6カ月頃には行われ,年少児以降の幼児では,年齢や言語能力が同程度なら,「心の理論」が発達しているほど感情理解も発達している傾向があるとされる。しかし,「心の理論」発達と感情理解の発達には異なった側面が存在する可能性も示唆されている(森野,2005)。また,子どもだけでなく,大人でも他者の心の理解には性差などの一定の傾向が示唆される(小沢,2015)。そこで,ここでは,大人(大学生文系女子)に関する「感情」に焦点を当てた心の理解に関して検討を進めることとした。とくに,従来,心は,「知(思考,推論,判断)」,「情(喜怒哀楽)」,「意(意識,注意,意志)」に関連する側面をもつとされる。したがって,他者の心の状態の理解について,「知」が中心であるロボットとの比較検討を行うことで,大人の他者の心の理解の検討における手がかりが得られると考えた。
方 法
1,調査概要:調査協力者大学生(女子)20名(欠損値データを除く)。集団一斉方式。初めに
調査の主旨を説明した後,参加者の協力への同意を得て用紙を配布実施した。ここでは,人/ロボットの心の有無と理由づけと両者共通の内容を尋ねた項目結果を整理して分析・考察する。
結 果
1.人の心の理解と理由づけ,感情の言及:Table1参照。(1)人には心があるかないかの回答では19人(95%)がありと回答し,(2)理由づけの感情に関する語では「感情」が多く,項目分類に対応する内容をみると,「驚き(楽しみ)」「喜び」「怒り」「悲しみ」が各4件(15%),「嫌悪」
「恐怖」は0件(0%)だった。(3)心という概念の説明を尋ねた際も「恐怖」が0件(0%),「嫌悪」は1件(4%)に留まった。
2.ロボットの心の理解に関する感情との関連:回答の自由記述について,語と語のネットワークを調べるためKH Coderによる共起ネットワークによる分析を行った。Fig.1では,「人」「思う」が, また,ロボットに心が無いと考えた回答では「考える」「思う」が,「固有ベクトル中心性」だった。
3.人とロボットの心において共通するもの:
2と同様の分析では全て「媒介中心性」だった。
考 察
本結果からは,人の心の理解の感情の側面では「喜怒哀楽」が意識され,「恐怖」「嫌悪」は意識されにくいと考えられる。2種の心の相違として「思う」が重視された。人のロボットの心の理解での意図スタンスの重要性(寺田ら,2012)に関連しては,コミュニケーション可能な個々の側面の記述に留まった。
これまでも,幼児期を中心にした「心の理論」をテーマにした研究は数多くなされてきている(Wellman&Liu,2004)。その際,子どもは他者理解を尋ねる課題で抽象的な直接には観察不可能な心的状態の理解を求められるのだが,社会性の発達の側面では感情的理解も求められてくる。Ekman(1978)では,基本感情カテゴリーとして,6種類(驚き,喜び,怒り,嫌悪,恐怖,悲しみ)があげられる。この感情分化は生後6カ月頃には行われ,年少児以降の幼児では,年齢や言語能力が同程度なら,「心の理論」が発達しているほど感情理解も発達している傾向があるとされる。しかし,「心の理論」発達と感情理解の発達には異なった側面が存在する可能性も示唆されている(森野,2005)。また,子どもだけでなく,大人でも他者の心の理解には性差などの一定の傾向が示唆される(小沢,2015)。そこで,ここでは,大人(大学生文系女子)に関する「感情」に焦点を当てた心の理解に関して検討を進めることとした。とくに,従来,心は,「知(思考,推論,判断)」,「情(喜怒哀楽)」,「意(意識,注意,意志)」に関連する側面をもつとされる。したがって,他者の心の状態の理解について,「知」が中心であるロボットとの比較検討を行うことで,大人の他者の心の理解の検討における手がかりが得られると考えた。
方 法
1,調査概要:調査協力者大学生(女子)20名(欠損値データを除く)。集団一斉方式。初めに
調査の主旨を説明した後,参加者の協力への同意を得て用紙を配布実施した。ここでは,人/ロボットの心の有無と理由づけと両者共通の内容を尋ねた項目結果を整理して分析・考察する。
結 果
1.人の心の理解と理由づけ,感情の言及:Table1参照。(1)人には心があるかないかの回答では19人(95%)がありと回答し,(2)理由づけの感情に関する語では「感情」が多く,項目分類に対応する内容をみると,「驚き(楽しみ)」「喜び」「怒り」「悲しみ」が各4件(15%),「嫌悪」
「恐怖」は0件(0%)だった。(3)心という概念の説明を尋ねた際も「恐怖」が0件(0%),「嫌悪」は1件(4%)に留まった。
2.ロボットの心の理解に関する感情との関連:回答の自由記述について,語と語のネットワークを調べるためKH Coderによる共起ネットワークによる分析を行った。Fig.1では,「人」「思う」が, また,ロボットに心が無いと考えた回答では「考える」「思う」が,「固有ベクトル中心性」だった。
3.人とロボットの心において共通するもの:
2と同様の分析では全て「媒介中心性」だった。
考 察
本結果からは,人の心の理解の感情の側面では「喜怒哀楽」が意識され,「恐怖」「嫌悪」は意識されにくいと考えられる。2種の心の相違として「思う」が重視された。人のロボットの心の理解での意図スタンスの重要性(寺田ら,2012)に関連しては,コミュニケーション可能な個々の側面の記述に留まった。