1:30 PM - 3:30 PM
[PE05] 就職活動における成長を規定する要因の縦断的検討
Keywords:就職活動, 自己成長感, 縦断的検討
問題と目的
近年,若年者の組織適応の状況が問題視され,社会への移行期にある大学生の支援として入社後の適応やキャリアを視野に入れた施策が求められている。多くの大学生が入社前に経験する就職活動は長期化・複雑化し,ストレスの高い活動となっている(岩脇,2004;リクルートワークス研究所, 2008)。その一方で,就職活動を経験した学生には,能力の向上や精神的成長の実感等の肯定的変化が見られる(小島,2008;浦上,1996)。高橋・岡田(2013)は,入社前と入社後を結びつける要因として,このような就職活動における成長に着目した。ストレスに起因する自己成長感は自律性や意欲を高めるため,教育等への応用が検討されている(Armeli,2001;Park,1996;神藤;1998宅,2004)。高橋・岡田(2013)は,就職活動経験に起因する成長を表す,「就職活動による自己成長感」が,「他者関係の構築」,「自己理解と自己受容」,「社会への積極的関与」,「課題遂行スキルの獲得」,「感情の統制」の5因子で構成されることを明らかにした。さらに髙橋・岡田(2014)では,「就職活動による自己成長感」が入社前の行動を促進し,入社後に仕事の悩みに遭遇した場合の,より適切なコーピングを媒介して,会社への適応感を促進することを実証した。この結果は,就職活動経験が入社後の組織適応を予測すること,大学から社会への移行を円滑に行うには,「就職活動による自己成長感」の喚起が有効であることを示唆する。そこで本研究は,就職活動による自己成長感を規定する要因を縦断調査により明らかにすることを目的とし,髙橋・岡田(2017)の探索的検討の結果に基づき作成した仮説モデルを検証する。
方 法
2016年卒業予定の四年制大学の在学生を対象に,webによるパネル調査を行った。調査協力者は調査会社の保有するwebパネルより任意に抽出された。調査時期は,経団連の「2016年度採用選考に関する指針」(2013)を参考に,広報活動解禁日(2015年3月)直前の2015年2月18~28日(time1),面接選考開始日(2015年8月)前の2015年6月16~25日(time2),正式内定日(2015年10月1日)後の2015年11月11日~24日(time3)に実施した。
質問項目は,①進路探索行動(Stumpf et al,1983;若松,2012),②就職活動ストレスに対するコーピング(坂田,1989より項目を抜粋),③働くイメージの確立(自作),④就職活動満足(自作),⑤就職活動状況(会社説明会参加数・書類選考受験数・面接選考受験数・内定数=実数で回答),⑥就職活動による自己成長感(高橋・岡田,2013の文末表現を変えて使用),⑦属性,とした。
結果と考察
民間企業への就職活動を行い,time2とtime3の両方に回答した86名を分析対象とした。Figure1に示すモデルに基づいて,共分散構造分析を行なった。なお,「就職活動満足」は欠損値があるため,分析から除外した。適合度指標は,GFI=.86, AGFI=.77,CFI=.96,RMSEA=.06,AIC=241.73であり,概ね満足できる適合度が確認された。
パス解析の結果,活動前期の進路探索行動と選考受験が,直接または就職活動ストレスに対するコーピングや仕事イメージの確立(職業的自己概念,就業自己効力)を媒介し,間接的に就職活動による自己成長感を促進することが実証された。
また,就職活動による自己成長感との関連が強いのが,進路探索行動(自己内省・情報収集・外的活動)及び就職活動ストレスに対するコーピングの「経験再評価」である。特に就職活動上の困難やストレスを肯定的に認知する経験再評価は,就職活動による自己成長感の全下位尺度を促進していた。これは,Schaefer & Moos(1992)が,コーピングと自己成長感の関係において示した認知的コーピングの重要性を強調する見解と一致する。就職活動による自己成長感の促進には,進路探索行動及び経験再評価を積極的に行えるようにする働きかけが効果的であると考えられる。
近年,若年者の組織適応の状況が問題視され,社会への移行期にある大学生の支援として入社後の適応やキャリアを視野に入れた施策が求められている。多くの大学生が入社前に経験する就職活動は長期化・複雑化し,ストレスの高い活動となっている(岩脇,2004;リクルートワークス研究所, 2008)。その一方で,就職活動を経験した学生には,能力の向上や精神的成長の実感等の肯定的変化が見られる(小島,2008;浦上,1996)。高橋・岡田(2013)は,入社前と入社後を結びつける要因として,このような就職活動における成長に着目した。ストレスに起因する自己成長感は自律性や意欲を高めるため,教育等への応用が検討されている(Armeli,2001;Park,1996;神藤;1998宅,2004)。高橋・岡田(2013)は,就職活動経験に起因する成長を表す,「就職活動による自己成長感」が,「他者関係の構築」,「自己理解と自己受容」,「社会への積極的関与」,「課題遂行スキルの獲得」,「感情の統制」の5因子で構成されることを明らかにした。さらに髙橋・岡田(2014)では,「就職活動による自己成長感」が入社前の行動を促進し,入社後に仕事の悩みに遭遇した場合の,より適切なコーピングを媒介して,会社への適応感を促進することを実証した。この結果は,就職活動経験が入社後の組織適応を予測すること,大学から社会への移行を円滑に行うには,「就職活動による自己成長感」の喚起が有効であることを示唆する。そこで本研究は,就職活動による自己成長感を規定する要因を縦断調査により明らかにすることを目的とし,髙橋・岡田(2017)の探索的検討の結果に基づき作成した仮説モデルを検証する。
方 法
2016年卒業予定の四年制大学の在学生を対象に,webによるパネル調査を行った。調査協力者は調査会社の保有するwebパネルより任意に抽出された。調査時期は,経団連の「2016年度採用選考に関する指針」(2013)を参考に,広報活動解禁日(2015年3月)直前の2015年2月18~28日(time1),面接選考開始日(2015年8月)前の2015年6月16~25日(time2),正式内定日(2015年10月1日)後の2015年11月11日~24日(time3)に実施した。
質問項目は,①進路探索行動(Stumpf et al,1983;若松,2012),②就職活動ストレスに対するコーピング(坂田,1989より項目を抜粋),③働くイメージの確立(自作),④就職活動満足(自作),⑤就職活動状況(会社説明会参加数・書類選考受験数・面接選考受験数・内定数=実数で回答),⑥就職活動による自己成長感(高橋・岡田,2013の文末表現を変えて使用),⑦属性,とした。
結果と考察
民間企業への就職活動を行い,time2とtime3の両方に回答した86名を分析対象とした。Figure1に示すモデルに基づいて,共分散構造分析を行なった。なお,「就職活動満足」は欠損値があるため,分析から除外した。適合度指標は,GFI=.86, AGFI=.77,CFI=.96,RMSEA=.06,AIC=241.73であり,概ね満足できる適合度が確認された。
パス解析の結果,活動前期の進路探索行動と選考受験が,直接または就職活動ストレスに対するコーピングや仕事イメージの確立(職業的自己概念,就業自己効力)を媒介し,間接的に就職活動による自己成長感を促進することが実証された。
また,就職活動による自己成長感との関連が強いのが,進路探索行動(自己内省・情報収集・外的活動)及び就職活動ストレスに対するコーピングの「経験再評価」である。特に就職活動上の困難やストレスを肯定的に認知する経験再評価は,就職活動による自己成長感の全下位尺度を促進していた。これは,Schaefer & Moos(1992)が,コーピングと自己成長感の関係において示した認知的コーピングの重要性を強調する見解と一致する。就職活動による自己成長感の促進には,進路探索行動及び経験再評価を積極的に行えるようにする働きかけが効果的であると考えられる。