13:30 〜 15:30
[PE09] 就職活動における情報探索方略使用の縦断的検討
キーワード:大学生, 就職活動, 縦断研究
目 的
就職活動とは企業からの内定獲得および就職達成に向け,動機づけや活動方略を自らで制御する自己調整過程である。中でも情報探索方略は内定に大きく寄与する要因として,現在までに焦点型方略,探索型方略,場当たり型方略の3つが認められている(Stevens &Turban, 2001)。しかし本概念は「情報探索のタイプの違い」として概念化された背景から,現状では類型論的な扱いにとどまり,活動過程での変化を捉えた研究がない。したがって本調査では,4時点の縦断調査から個人の就職活動過程において使用される情報探索方略の変化を検討することを目的とした。
方 法
調査協力者 関東圏内の私立大学2校に通う就職活動中の大学3年生110名(調査期間中に4年生へ進学)のうち,全4回の調査に参加し,回答に不備のなかった78名を分析対象とした(男性53名,女性25名;平均年齢21.3歳,SD=0.8)。
調査時期と手続き 心理学講義受講者に調査協力の依頼をし,同意を得られた学生にWeb上での回答を依頼した。計4回の調査(T1:2016年3月下旬~5月,T2:6月下旬~7月,T3:8月下旬~9月,T4:10月下旬~12月)に,参加者が自身のPCもしくはスマートフォンを利用して回答した。
調査内容 ①内定獲得数,②情報探索方略:Stevens & Turban(2001)の焦点型方略(例「私の情報収集努力は特定の職業に焦点化している」),探索型方略(例「私は集められる全ての企業について,できる限りの情報を集める」),場当たり型方略(例「私は職業を探すときこれといったプランをもっていない」)の計16項目を邦訳し使用。「以下の質問は○月現在(調査時点)のあなたの行動にどのくらい当てはまりますか」と教示し,5件法で回答させた。
結 果
各調査時点での内定状況はTable1に示した。
方略について,場当たり型方略と探索型方略の使用はT1からT4にかけて有意に減少しており,焦点型方略の使用はT1からT2にかけて有意に増加し,その後維持された(Table2,Figure1参照)。
Table3の情報探索方略の相関については,時点の異なる同方略間で有意に高い正の相関を示した。
考 察
公的な説明会開始期のT1から,面接開始期のT2にかけ内定獲得者が急増した。T1では志望企業同定のために場当たり型と探索型という模索的な2方略が使用され,T2では志望企業が明瞭になったことで先の2方略の使用が減る一方,焦点型方略の使用が増加したものと推察される。以上から活動進捗により用いられる方略は異なり,個人内の活動過程としては幅広い探索から狭い探索へと移行することが示された。ただし同方略間での相関の高さからは,活動過程中に同じ方略が継続使用されやすい可能性も示唆された。活動の仕方として,場当たり型方略のように非効率とされる方略を使用し続けるのは,内定獲得のために適切とはいえない。今後は方略変化の規定因の検討に加え,同じ方略を継続するもしくは変えることのいずれが内定獲得を導くかを検討する必要がある。
就職活動とは企業からの内定獲得および就職達成に向け,動機づけや活動方略を自らで制御する自己調整過程である。中でも情報探索方略は内定に大きく寄与する要因として,現在までに焦点型方略,探索型方略,場当たり型方略の3つが認められている(Stevens &Turban, 2001)。しかし本概念は「情報探索のタイプの違い」として概念化された背景から,現状では類型論的な扱いにとどまり,活動過程での変化を捉えた研究がない。したがって本調査では,4時点の縦断調査から個人の就職活動過程において使用される情報探索方略の変化を検討することを目的とした。
方 法
調査協力者 関東圏内の私立大学2校に通う就職活動中の大学3年生110名(調査期間中に4年生へ進学)のうち,全4回の調査に参加し,回答に不備のなかった78名を分析対象とした(男性53名,女性25名;平均年齢21.3歳,SD=0.8)。
調査時期と手続き 心理学講義受講者に調査協力の依頼をし,同意を得られた学生にWeb上での回答を依頼した。計4回の調査(T1:2016年3月下旬~5月,T2:6月下旬~7月,T3:8月下旬~9月,T4:10月下旬~12月)に,参加者が自身のPCもしくはスマートフォンを利用して回答した。
調査内容 ①内定獲得数,②情報探索方略:Stevens & Turban(2001)の焦点型方略(例「私の情報収集努力は特定の職業に焦点化している」),探索型方略(例「私は集められる全ての企業について,できる限りの情報を集める」),場当たり型方略(例「私は職業を探すときこれといったプランをもっていない」)の計16項目を邦訳し使用。「以下の質問は○月現在(調査時点)のあなたの行動にどのくらい当てはまりますか」と教示し,5件法で回答させた。
結 果
各調査時点での内定状況はTable1に示した。
方略について,場当たり型方略と探索型方略の使用はT1からT4にかけて有意に減少しており,焦点型方略の使用はT1からT2にかけて有意に増加し,その後維持された(Table2,Figure1参照)。
Table3の情報探索方略の相関については,時点の異なる同方略間で有意に高い正の相関を示した。
考 察
公的な説明会開始期のT1から,面接開始期のT2にかけ内定獲得者が急増した。T1では志望企業同定のために場当たり型と探索型という模索的な2方略が使用され,T2では志望企業が明瞭になったことで先の2方略の使用が減る一方,焦点型方略の使用が増加したものと推察される。以上から活動進捗により用いられる方略は異なり,個人内の活動過程としては幅広い探索から狭い探索へと移行することが示された。ただし同方略間での相関の高さからは,活動過程中に同じ方略が継続使用されやすい可能性も示唆された。活動の仕方として,場当たり型方略のように非効率とされる方略を使用し続けるのは,内定獲得のために適切とはいえない。今後は方略変化の規定因の検討に加え,同じ方略を継続するもしくは変えることのいずれが内定獲得を導くかを検討する必要がある。