日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PE(01-80)

ポスター発表 PE(01-80)

2017年10月8日(日) 13:30 〜 15:30 白鳥ホールB (4号館1階)

13:30 〜 15:30

[PE10] 友人関係における傷つき経験の影響尺度の構成

信頼性と妥当性の検討

永井暁行 (中央大学)

キーワード:友人関係, 青年期, 傷つき経験

目   的
 青年にとって友人関係は心理的な安定をもたらすものである(松井, 1990)が,一方では友人関係の中で青年が傷ついていることも報告されている(Leary et al., 1998; 小田部他, 2009)。傷つくという経験は一般的に好ましくない経験であるが,このような経験の影響は否定的なものだけとは限らない。否定的な出来事に対して意味づけが行われることによって肯定的な影響の認知に繋がることが指摘されている(Park, 2010)。
 友人関係における傷つきの長期的な影響はこれまであまり検討されてこなかった。そこで本研究では傷つき経験の影響を青年がどのように感じているかを測定できる尺度の構成を目的とする。
 構成概念妥当性の検討には石川(2013)の過去のとらえ方尺度と,堀田・杉江(2013)の意味づけによる同化・調節尺度を用いる。過去への全般的な態度が肯定的であれば,傷つき経験についても肯定的に評価されやすく,否定的であれば傷つき経験の影響も否定的なものとなると予測される。また,意味づけが積極的に行われることによって,傷つき経験が肯定的に評価されると予測される。
方   法
 調査は2017年4月~7月に行った。調査協力者は大学生319名(男性120名,女性195名,その他・不明4名),であり,平均年齢は19.04歳 (SD= 1.20)であった。本研究における調査内容は1.フェイスシート,2.過去のとらえ方尺度(石川,2013),3.意味づけによる同化・調節尺度(堀田・杉江,2013),4.友人関係における傷つき経験の影響尺度から構成された。
 友人関係における傷つき経験の影響尺度は,予備調査の結果を基に45項目を選定した。予備調査では友人関係における過去の傷つき経験と,その経験による変化や影響を自由記述形式によって調査した。予備調査では大学生47名から協力を得られた。
結   果
 まず,友人関係における傷つきの影響尺度に因子分析(最尤法,プロマックス回転)を行った。固有値が1以上になること,単一の因子にのみ因子負荷量が高くなっている(|.40|以上)項目を残すことを基準として因子分析を繰り返した。最終的に6因子33項目にまとまった(Table 1)。
 次に,構成概念妥当性の検討のために,傷つきの影響と過去のとらえ方,意味づけとの相関係数を算出した(Table 2)。
考   察
 本研究は友人関係における傷つきの影響を測定する尺度の構成を目的とした。
 過去を肯定的にとらえているほど,傷つき経験の影響は対人関係などの成長を促すものとなり,このような傷つき経験の影響は意味づけに積極的であるほど高くなることが明らかになった。また,過去のとらえ方の否定的な側面は傷つき経験の否定的な影響に関連が見られた。これらの関連は既存の尺度との関係から,傷つきの影響について予測された結果である。そのため,本尺度にはある程度の妥当性が確認されたと言える。