13:30 〜 15:30
[PE15] 困り感を持つ生徒への発達支援(3)
協働的な学習に対して学習者が抱える苦手意識
キーワード:アクティブ・ラーニング, 協働的な学習, 苦手意識
問題と目的
文部科学省(2012)はアクティブ・ラーニングの有効な方法として「グループ・ディスカッション,ディベート,グループ・ワーク等」といった学習者同士の協働的な学習を挙げている。阿部(2016)は言語活動の充実(文部科学省,2008)の有効性から,協働的な学習の意義を述べている。しかし,樋口(2014),石橋ら(2014),西川(2014)は,協働的な学習に心配や不安,苦手意識を抱えて満足に参加できない学習者の存在を指摘している。協働的な学習の意義が示されている一方で,すべての学習者にその効果が期待されるとは限らない。
学習者が協働的な学習に抱える苦手意識を明らかにすることは,誰もが満足に参加できる協働的な学習を実践するための有効な手立てとなると考えられる。本研究の目的は,協働的な学習に苦手意識を抱える学習者と抱えない学習者との間に,どのような意識の差が生じているかを明らかにすることである。
方 法
2016年8月下旬に関東の公立高等学校において,A教諭が担当する授業を受講していた生徒(2年生57名,3年生45名)に対し質問紙調査を行なった。A教諭は協働的な学習を積極的に実践しており,本調査に適していると考えた。質問紙は,(1)協働的な学習に対する意識を「4.あてはまる」から「1.あてはまらない」の4件法で尋ねる19項目,(2)苦手意識を持ったことが「ある」か「ない」かを尋ねる項目,(3)(2)で「ある」と答えた場合はその具体的な場面・状況を自由記述で尋ねる項目で作成した。(1)は阿部(2016),樋口(2014),石橋ら(2014),西川(2014)を参考に,「態度」「意義の認識」「傍観・個人志向」「発言のためらい」「表現」を設定して項目を作成した。(3)で得られた記述は類似した場面・状況ごとに分類した。
結 果
回答に不足があった2名を除き100名の回答が得られた。(2)の回答から,苦手意識を持ったことが「ある」と回答した「あり群」54名と,「ない」と回答した「なし群」46名に分けられた。2群のそれぞれで(1)の19項目の平均を求め,対応のないt検定を行なったところ,13項目において有意差が認められた(表1)。また,「あり群」の(3)の記述から62の場面・状況が得られ,「対人不安」「沈黙」「発言」「その他」に分けられた(表2)。
考 察
(1)では「態度」「傍観・個人志向」「発言のためらい」「表現」の項目において,苦手意識を持ったことがある群とない群の 2群間で有意差が認められた。(3)では「対人不安」「沈黙」に関する記述が全体の77.5%を占めた。「発言のためらい」や「表現」の困難,「対人不安」が,消極的な「態度」や「傍観・個人志向」といった行動につながっている可能性がある。また,こうした状況から「沈黙」が起こり,学習者の協働的な学習に対する苦手意識を誘引している可能性がある。協働的な学習をすべての学習者にとって有意義なものとするためには,人間関係形成や表現に困難を抱える学習者が存在することを意識した授業展開が望まれる。
文部科学省(2012)はアクティブ・ラーニングの有効な方法として「グループ・ディスカッション,ディベート,グループ・ワーク等」といった学習者同士の協働的な学習を挙げている。阿部(2016)は言語活動の充実(文部科学省,2008)の有効性から,協働的な学習の意義を述べている。しかし,樋口(2014),石橋ら(2014),西川(2014)は,協働的な学習に心配や不安,苦手意識を抱えて満足に参加できない学習者の存在を指摘している。協働的な学習の意義が示されている一方で,すべての学習者にその効果が期待されるとは限らない。
学習者が協働的な学習に抱える苦手意識を明らかにすることは,誰もが満足に参加できる協働的な学習を実践するための有効な手立てとなると考えられる。本研究の目的は,協働的な学習に苦手意識を抱える学習者と抱えない学習者との間に,どのような意識の差が生じているかを明らかにすることである。
方 法
2016年8月下旬に関東の公立高等学校において,A教諭が担当する授業を受講していた生徒(2年生57名,3年生45名)に対し質問紙調査を行なった。A教諭は協働的な学習を積極的に実践しており,本調査に適していると考えた。質問紙は,(1)協働的な学習に対する意識を「4.あてはまる」から「1.あてはまらない」の4件法で尋ねる19項目,(2)苦手意識を持ったことが「ある」か「ない」かを尋ねる項目,(3)(2)で「ある」と答えた場合はその具体的な場面・状況を自由記述で尋ねる項目で作成した。(1)は阿部(2016),樋口(2014),石橋ら(2014),西川(2014)を参考に,「態度」「意義の認識」「傍観・個人志向」「発言のためらい」「表現」を設定して項目を作成した。(3)で得られた記述は類似した場面・状況ごとに分類した。
結 果
回答に不足があった2名を除き100名の回答が得られた。(2)の回答から,苦手意識を持ったことが「ある」と回答した「あり群」54名と,「ない」と回答した「なし群」46名に分けられた。2群のそれぞれで(1)の19項目の平均を求め,対応のないt検定を行なったところ,13項目において有意差が認められた(表1)。また,「あり群」の(3)の記述から62の場面・状況が得られ,「対人不安」「沈黙」「発言」「その他」に分けられた(表2)。
考 察
(1)では「態度」「傍観・個人志向」「発言のためらい」「表現」の項目において,苦手意識を持ったことがある群とない群の 2群間で有意差が認められた。(3)では「対人不安」「沈黙」に関する記述が全体の77.5%を占めた。「発言のためらい」や「表現」の困難,「対人不安」が,消極的な「態度」や「傍観・個人志向」といった行動につながっている可能性がある。また,こうした状況から「沈黙」が起こり,学習者の協働的な学習に対する苦手意識を誘引している可能性がある。協働的な学習をすべての学習者にとって有意義なものとするためには,人間関係形成や表現に困難を抱える学習者が存在することを意識した授業展開が望まれる。