13:30 〜 15:30
[PE16] 大学生の就職活動維持過程に関わる要因の検討(1)
自意識の機能に着目して
キーワード:大学生の就職活動, 自意識
目 的
大学生の就職活動には,一般に企業からの不採用経験が不可避である。不採用経験によって個人は,ストレス,不安,挫折感等の不適応的影響を受けることが繰り返し報告されているが(北見・茂木・森, 2009; 嶋, 2000など),日本の一般企業の多くは新卒者に対する一括採用制度を採っているため,個人が就職達成を果たすためには,たとえその過程で企業からの不採用を複数回経験しようとも当該年度のスケジュールに則って就職活動を継続することが求められる。
そうした就職活動の維持そのものを支援する枠組みを構築するための基礎資料として,就職活動を維持するために行なう思考や行動の過程を記述した大学生の就職活動維持過程モデル(輕部他, 2014)がある。本モデルによれば,一般企業への就職活動を行なう大学生は,就職活動の当初から経験される一次的過程と就職活動体験の蓄積に伴って次第に経験されるようになる二次的過程によって就職活動を維持していくとされる。一次的過程では個々の不採用経験に対する具体的対処としての現在志向的行動が,二次的過程ではこれまでの経験を統合した現実的将来に向けた未来志向的行動が行なわれ,特に二次的過程では個人の就労目標の確定とそれに伴う精神的安定がもたらされること,一次的過程も当該二次的過程の進行を促進する素地となることが示された。しかしながら,個人のどういった要因によって一次的過程および二次的過程が促進または抑制されるのかについてはいまだ知見が少ない現状にある。本研究では,就職活動維持過程に影響を与えうる要因として,キャリア形成およびキャリア自立を促す内的側面としての「自意識」を取り上げ,自意識の機能が個人の就職活動の継続にどのような影響を及ぼすのかを検討する。
方 法
対象 2015年4月入社に向けた就職活動を経験した大学4年生・大学院生224名(男性112名,女性112名)。
時期および手続き 2015年1~2月に,インターネット調査会社を通じて,無記名の個別記入形式によるweb質問調査を行なった。
内容 1. 就職活動維持過程尺度:輕部他(2015)。6因子32項目(不採用経験の振り返り,認知的切り替え,他者への自己開示,模索的行動;以上一次的過程,目標の明確化,自分らしい就職活動態度の確立;以上二次的過程)から構成。2. 自意識尺度:菅原(1984)。2因子21項目(公的自意識,私的自意識)から構成。
結 果
各下位尺度得点について,共分散構造分析を行った(Figure 1)。
考 察
「不採用経験の振り返り」および「認知的切り替え」は,公的自意識と私的自意識の双方から正の影響を受けていた。また「他者への自己開示」は公的自意識から,「模索的行動」と「目標の明確化」と「自分らしい就職活動態度の確立」は私的自意識から正の影響を受けていた。
「不採用経験の振り返り」および「認知的切り替え」では,企業から評価を受ける側としての自分と活動主体として企業を選ぶ側の自分の双方についての意識が働いており,企業と自身とのマッチングを模索する営みが行なわれていると考えられる。「他者への自己開示」は,自分が他者にどのように映っているかを確認する機能として,公的自意識によって促されると考えられる。「模索的行動」と「目標の明確化」と「自分らしい就職活動態度の確立」は,就職活動を行なう自身の内面を振り返り,自らの現実的将来を見すえたなかで就職活動における目標を確定させるための機能として,私的自意識によって促されると考えられる。
大学生の就職活動には,一般に企業からの不採用経験が不可避である。不採用経験によって個人は,ストレス,不安,挫折感等の不適応的影響を受けることが繰り返し報告されているが(北見・茂木・森, 2009; 嶋, 2000など),日本の一般企業の多くは新卒者に対する一括採用制度を採っているため,個人が就職達成を果たすためには,たとえその過程で企業からの不採用を複数回経験しようとも当該年度のスケジュールに則って就職活動を継続することが求められる。
そうした就職活動の維持そのものを支援する枠組みを構築するための基礎資料として,就職活動を維持するために行なう思考や行動の過程を記述した大学生の就職活動維持過程モデル(輕部他, 2014)がある。本モデルによれば,一般企業への就職活動を行なう大学生は,就職活動の当初から経験される一次的過程と就職活動体験の蓄積に伴って次第に経験されるようになる二次的過程によって就職活動を維持していくとされる。一次的過程では個々の不採用経験に対する具体的対処としての現在志向的行動が,二次的過程ではこれまでの経験を統合した現実的将来に向けた未来志向的行動が行なわれ,特に二次的過程では個人の就労目標の確定とそれに伴う精神的安定がもたらされること,一次的過程も当該二次的過程の進行を促進する素地となることが示された。しかしながら,個人のどういった要因によって一次的過程および二次的過程が促進または抑制されるのかについてはいまだ知見が少ない現状にある。本研究では,就職活動維持過程に影響を与えうる要因として,キャリア形成およびキャリア自立を促す内的側面としての「自意識」を取り上げ,自意識の機能が個人の就職活動の継続にどのような影響を及ぼすのかを検討する。
方 法
対象 2015年4月入社に向けた就職活動を経験した大学4年生・大学院生224名(男性112名,女性112名)。
時期および手続き 2015年1~2月に,インターネット調査会社を通じて,無記名の個別記入形式によるweb質問調査を行なった。
内容 1. 就職活動維持過程尺度:輕部他(2015)。6因子32項目(不採用経験の振り返り,認知的切り替え,他者への自己開示,模索的行動;以上一次的過程,目標の明確化,自分らしい就職活動態度の確立;以上二次的過程)から構成。2. 自意識尺度:菅原(1984)。2因子21項目(公的自意識,私的自意識)から構成。
結 果
各下位尺度得点について,共分散構造分析を行った(Figure 1)。
考 察
「不採用経験の振り返り」および「認知的切り替え」は,公的自意識と私的自意識の双方から正の影響を受けていた。また「他者への自己開示」は公的自意識から,「模索的行動」と「目標の明確化」と「自分らしい就職活動態度の確立」は私的自意識から正の影響を受けていた。
「不採用経験の振り返り」および「認知的切り替え」では,企業から評価を受ける側としての自分と活動主体として企業を選ぶ側の自分の双方についての意識が働いており,企業と自身とのマッチングを模索する営みが行なわれていると考えられる。「他者への自己開示」は,自分が他者にどのように映っているかを確認する機能として,公的自意識によって促されると考えられる。「模索的行動」と「目標の明確化」と「自分らしい就職活動態度の確立」は,就職活動を行なう自身の内面を振り返り,自らの現実的将来を見すえたなかで就職活動における目標を確定させるための機能として,私的自意識によって促されると考えられる。