13:30 〜 15:30
[PE18] 子どもの思考を基にしたカリキュラム構成による教授介入
割合概念の保持について
キーワード:子どもの思考, 割合概念, 教授介入
問題と目的
数学教育では,教科の論理体系の構造によるカリキュラム構成を行っており,子どもの思考や知識を基にしたカリキュラム構成については,その重要性は指摘されながらもほとんど考慮されていない。栗山・吉田・中島(2016)は,割合概念について,子どものインフォーマルな知識と,新しい概念を学習する際の認知的な障害を組み込んだカリキュラムを構成し,教授介入を行った。その結果,概念的知識の獲得を促進させ,認知的障害としての等全体の概念も理解させることが明らかになった。
ところで,Jitendra et al.,(2011)では,割合概念のスキーマ学習をおこなったところ保持効果がみられていない。そこで,本研究の目的は,子どもの思考を基にしたカリキュラム構成における教授介入の効果が,4ヶ月の期間が過ぎた後の保持においてもみられるかについて検討する。また,認知的障害としての等全体について新たな課題を加えて,教授介入の効果について検討する。
方 法
被験者:実験群にはA小学校6年生59名,テキスト群にはB小学校6年生66名が参加した。
課題:5年生の割合単元(啓林館)14時間。事前テストでは,割合の単元を学習する前に,割合に関するインフォ-マルな知識について尋ねた。割合単元を学習して,4ヶ月を経過した6年生で保持テストを実施した。保持テストでは以下の内容の一斉テストが行われた。(1)割合の3用法の解決課題2問,(2)作図課題2問,(3)等全体の表問題1問,(4)等全体の文章問題1問,(5)等全体のグラフ問題1問,(6)割合の構成要素の課題3問。
手続き:テキスト群のカリキュラムは,最初の1時間で割合の意味を導入し,その後の4時間で小数倍としての割合の3用法を指導した。第6時から第8時まで,%としての小数倍の関係を指導し,%としての割合の3用法を指導した。第9時はまとめであった。第10時から第14時までは割合のグラフについて指導された。
実験群のカリキュラムは,第1時から第2時までは,量概念を強調する割合モデルに基づく教材を用いて,割合を部分と全体といった点から指導し,量としての大きさが指導された。第3時では,比較すべき割合について,基準量が異なると%を比較することはできないことを,子ども同士の討論から指導した。第4時では,比較する割合の全体の大きさは等しいという概念図を導入し,全体が等しいときに%の比較が可能であることについて子ども同士の討論から指導した。第5時で,小数倍が導入された,第6時で第2用法,第7時で第1用法,第8時で第3用法が教えられ,第9時がまとめであった。第10時から第14時まではテキスト群と同じであった。
結 果
事前テスト:割合を学習する前の5年生において,意味表象,量的表象とも,実験群と統制群において統計的な差はみられなかった。
保持テスト:割合の3用法課題の正答率は,実験群68%,テキスト群41%で,両群の差は有意であった(t(123)=3.96, p<.01)。等全体の基準量が異なる場合の表問題,文章問題,グラフ問題,3用法課題の正答率をFigure1に示した。等全体の表問題,文章問題,グラフ問題において,それぞれ実験群はテキスト群より有意に成績の高いことが示された(χ2 = 9.43,df=1,p<.01; χ2 = 17.04, df=1,p<.01; χ2 = 13.96,df=1,p<.01)。割合の3用法の構成要素は,実験群73%, テキスト群38%で,両群の差は有意であった (t(123)=6.70, p<.01)。
考 察
子どもの思考を基にしたカリキュラム構成からの教授介入による保持効果は,割合の3用法問題,等全体の理解,概念的理解を大きく深化させることが示された。
数学教育では,教科の論理体系の構造によるカリキュラム構成を行っており,子どもの思考や知識を基にしたカリキュラム構成については,その重要性は指摘されながらもほとんど考慮されていない。栗山・吉田・中島(2016)は,割合概念について,子どものインフォーマルな知識と,新しい概念を学習する際の認知的な障害を組み込んだカリキュラムを構成し,教授介入を行った。その結果,概念的知識の獲得を促進させ,認知的障害としての等全体の概念も理解させることが明らかになった。
ところで,Jitendra et al.,(2011)では,割合概念のスキーマ学習をおこなったところ保持効果がみられていない。そこで,本研究の目的は,子どもの思考を基にしたカリキュラム構成における教授介入の効果が,4ヶ月の期間が過ぎた後の保持においてもみられるかについて検討する。また,認知的障害としての等全体について新たな課題を加えて,教授介入の効果について検討する。
方 法
被験者:実験群にはA小学校6年生59名,テキスト群にはB小学校6年生66名が参加した。
課題:5年生の割合単元(啓林館)14時間。事前テストでは,割合の単元を学習する前に,割合に関するインフォ-マルな知識について尋ねた。割合単元を学習して,4ヶ月を経過した6年生で保持テストを実施した。保持テストでは以下の内容の一斉テストが行われた。(1)割合の3用法の解決課題2問,(2)作図課題2問,(3)等全体の表問題1問,(4)等全体の文章問題1問,(5)等全体のグラフ問題1問,(6)割合の構成要素の課題3問。
手続き:テキスト群のカリキュラムは,最初の1時間で割合の意味を導入し,その後の4時間で小数倍としての割合の3用法を指導した。第6時から第8時まで,%としての小数倍の関係を指導し,%としての割合の3用法を指導した。第9時はまとめであった。第10時から第14時までは割合のグラフについて指導された。
実験群のカリキュラムは,第1時から第2時までは,量概念を強調する割合モデルに基づく教材を用いて,割合を部分と全体といった点から指導し,量としての大きさが指導された。第3時では,比較すべき割合について,基準量が異なると%を比較することはできないことを,子ども同士の討論から指導した。第4時では,比較する割合の全体の大きさは等しいという概念図を導入し,全体が等しいときに%の比較が可能であることについて子ども同士の討論から指導した。第5時で,小数倍が導入された,第6時で第2用法,第7時で第1用法,第8時で第3用法が教えられ,第9時がまとめであった。第10時から第14時まではテキスト群と同じであった。
結 果
事前テスト:割合を学習する前の5年生において,意味表象,量的表象とも,実験群と統制群において統計的な差はみられなかった。
保持テスト:割合の3用法課題の正答率は,実験群68%,テキスト群41%で,両群の差は有意であった(t(123)=3.96, p<.01)。等全体の基準量が異なる場合の表問題,文章問題,グラフ問題,3用法課題の正答率をFigure1に示した。等全体の表問題,文章問題,グラフ問題において,それぞれ実験群はテキスト群より有意に成績の高いことが示された(χ2 = 9.43,df=1,p<.01; χ2 = 17.04, df=1,p<.01; χ2 = 13.96,df=1,p<.01)。割合の3用法の構成要素は,実験群73%, テキスト群38%で,両群の差は有意であった (t(123)=6.70, p<.01)。
考 察
子どもの思考を基にしたカリキュラム構成からの教授介入による保持効果は,割合の3用法問題,等全体の理解,概念的理解を大きく深化させることが示された。