1:30 PM - 3:30 PM
[PE22] 漢字の読み方の学習におけるVAシャドーイング法の効果
非漢字圏日本語学習者を対象として
Keywords:VAシャドーイング, 音読, シャドーイング
問題と目的
近年シャドーイングに加え,シャドーイングとビジュアル・シャドーイング(オンライン音読)を組み合わせたビジュアル・オーディトリー・シャドーイング法(以下VA法)という聴解指導法が,日本語教育において注目されつつある。中山(2016)は漢字圏出身の日本語学習者を対象に,中山・古本(2016)は,非漢字圏出身の日本語学習者を対象として, VA法は他の方法(ビジュアル・シャドーイング法およびシャドーイング法)と比較して,漢字の読み方の学習を促進するかについて予備的な検討を行った。本研究では,これら2つの研究の成果に基づいて,さらに非漢字圏出身者を対象に,VA法の実証性について検討する。
方 法
1.実験協力者
オランダの国立大学日本語学科在籍の学生30名が実験に参加した。実験協力者の日本語学習歴の平均は,12ヶ月であった。30名の協力者を10名ごとに,VA群,ビジュアル・シャドーイング群(以下VS群),およびシャドーイング群(以下AS群),に割りあてた。
2.実験計画
本実験は,3×1の要因配置を用いた。第1の要因は,トレーニング方法の違い(VA法・VS法・シャドーイング法)であった。第2の要因は漢字読み取りテストの変化(事前・事後テスト)であった。
3.調査材料
中山(2016)と中山・古本(2016)を参考に以下の材料を作成した。
言語材料:発表者が作成した日本語教材「お年玉こわい」(316文字)を材料とした。この材料に基づき,以下の4つの教材を作成した(以下読解材料)。
漢字の聞き取りテスト(教材1):介入の効果を測定するため,読解材料を参考に20問(ダミー問題2問を含む)からなる漢字の聞き取りテストを作成した。日本語の音声を聞き,その音声が示す漢字を4つの選択肢から1つ選ぶ問題であった。このテストは出題順序を変えて,実験の前後に実施された。
音声教材(教材2):VA法とシャドーイング法で使用する音声教材として,読解材料を音読した音声を録音した教材を作成した。
VAシャドーイング用教材(教材3):マイクロソフト社のパワーポイントを利用して作成した。読解材料全文を音声情報で5回,文字情報で5回呈示できるようスライドを作成した。その結果,
①表紙,②シャドーイングとビジュアル・シャドーイングの説明,③カウントダウン,④ターゲット文の呈示,⑤シャドーイング音声呈示,⑤ビジュアル・シャドーイング本文呈示,⑥終了告知の合計158枚のスライドで教材3は構成された。
VSシャドーイング用教材(教材4):教材3と同様にマイクロソフト社のパワーポイントを利用して作成した。読解材料全文を漢字を含む文字情報で5回,ひらがなのみで5回呈示できるようスライドを作成した。その結果,①表紙,②ビジュアル・シャドーイングの説明,③カウントダウン,④ターゲット文の呈示,⑤ビジュアル・シャドーイング本文呈示(漢字入り),⑤ビジュアル・シャドーイング本文呈示(ひらがなのみ),⑥終了告知の合計158枚のスライドで教材4は構成された。
4. 手順
実験は集団で行われた。実験協力者は,②漢字聞き取りテスト(事前テスト),③指定された方法によるトレーニング,④漢字聞き取りテスト(事後テスト)の順に,実験に参加した。各実験にかかった時間は約60分であった。
結 果
漢字書き取りテストの結果をTable 1. に示す。トレーニング方法の違いを要因1(被験者間),漢字聞き取りテストの結果を要因2(被験者内)として,2要因の分散分析を行った結果,交互作用が有意であり(F(2,27)=6.58, p>.01),その後の分析の結果,事前テストの結果には,3つの群の間に差がなかったこと(p>.05),VA群とVS群についてのみ,事後テストの結果が,事前テストの結果と比較して有意に高いことがわかった(p<.01).
近年シャドーイングに加え,シャドーイングとビジュアル・シャドーイング(オンライン音読)を組み合わせたビジュアル・オーディトリー・シャドーイング法(以下VA法)という聴解指導法が,日本語教育において注目されつつある。中山(2016)は漢字圏出身の日本語学習者を対象に,中山・古本(2016)は,非漢字圏出身の日本語学習者を対象として, VA法は他の方法(ビジュアル・シャドーイング法およびシャドーイング法)と比較して,漢字の読み方の学習を促進するかについて予備的な検討を行った。本研究では,これら2つの研究の成果に基づいて,さらに非漢字圏出身者を対象に,VA法の実証性について検討する。
方 法
1.実験協力者
オランダの国立大学日本語学科在籍の学生30名が実験に参加した。実験協力者の日本語学習歴の平均は,12ヶ月であった。30名の協力者を10名ごとに,VA群,ビジュアル・シャドーイング群(以下VS群),およびシャドーイング群(以下AS群),に割りあてた。
2.実験計画
本実験は,3×1の要因配置を用いた。第1の要因は,トレーニング方法の違い(VA法・VS法・シャドーイング法)であった。第2の要因は漢字読み取りテストの変化(事前・事後テスト)であった。
3.調査材料
中山(2016)と中山・古本(2016)を参考に以下の材料を作成した。
言語材料:発表者が作成した日本語教材「お年玉こわい」(316文字)を材料とした。この材料に基づき,以下の4つの教材を作成した(以下読解材料)。
漢字の聞き取りテスト(教材1):介入の効果を測定するため,読解材料を参考に20問(ダミー問題2問を含む)からなる漢字の聞き取りテストを作成した。日本語の音声を聞き,その音声が示す漢字を4つの選択肢から1つ選ぶ問題であった。このテストは出題順序を変えて,実験の前後に実施された。
音声教材(教材2):VA法とシャドーイング法で使用する音声教材として,読解材料を音読した音声を録音した教材を作成した。
VAシャドーイング用教材(教材3):マイクロソフト社のパワーポイントを利用して作成した。読解材料全文を音声情報で5回,文字情報で5回呈示できるようスライドを作成した。その結果,
①表紙,②シャドーイングとビジュアル・シャドーイングの説明,③カウントダウン,④ターゲット文の呈示,⑤シャドーイング音声呈示,⑤ビジュアル・シャドーイング本文呈示,⑥終了告知の合計158枚のスライドで教材3は構成された。
VSシャドーイング用教材(教材4):教材3と同様にマイクロソフト社のパワーポイントを利用して作成した。読解材料全文を漢字を含む文字情報で5回,ひらがなのみで5回呈示できるようスライドを作成した。その結果,①表紙,②ビジュアル・シャドーイングの説明,③カウントダウン,④ターゲット文の呈示,⑤ビジュアル・シャドーイング本文呈示(漢字入り),⑤ビジュアル・シャドーイング本文呈示(ひらがなのみ),⑥終了告知の合計158枚のスライドで教材4は構成された。
4. 手順
実験は集団で行われた。実験協力者は,②漢字聞き取りテスト(事前テスト),③指定された方法によるトレーニング,④漢字聞き取りテスト(事後テスト)の順に,実験に参加した。各実験にかかった時間は約60分であった。
結 果
漢字書き取りテストの結果をTable 1. に示す。トレーニング方法の違いを要因1(被験者間),漢字聞き取りテストの結果を要因2(被験者内)として,2要因の分散分析を行った結果,交互作用が有意であり(F(2,27)=6.58, p>.01),その後の分析の結果,事前テストの結果には,3つの群の間に差がなかったこと(p>.05),VA群とVS群についてのみ,事後テストの結果が,事前テストの結果と比較して有意に高いことがわかった(p<.01).