The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PE(01-80)

ポスター発表 PE(01-80)

Sun. Oct 8, 2017 1:30 PM - 3:30 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

1:30 PM - 3:30 PM

[PE30] 数学の文章題解決と中学生のワーキングメモリ

COMPASSを用いた分析

福丸奈津子1, 湯澤正通2 (1.広島大学, 2.広島大学)

Keywords:ワーキングメモリ, COMPASS

目   的
 ワーキングメモリ (以下WM) は,学力と密接な関係があることが明らかにされている。しかし,各教科の学力において,下位要素(例えば,数学における知識・スキル,思考力,メタ認知),WMとの関係性については十分わかっていない。市川ら (2009) は,算数・数学の課題に関して,従来の内容領域別に結果が出る学力テストに対して,問題理解と問題解決というプロセスに必要な学力の構成要素 (コンポーネント) を領域横断的に抽出し診断するためのテストを開発し,COMPASSと名付けた。そこで,本研究は,中学校生徒のWMを調べ,同時に,COMPASS結果との関係を調べることで,COMPASSは,脳の作業場であるといわれるWMが具体的にどのような学力の構成要素と関係があるのかを調べ,数学の文章題解決の下位要素の遂行において,WMがどのような役割を果たしているのかを検討した。
方   法
対象 中学1年生52名
課題 WM:HUCRoW (Hiroshima University Rating of Working Memory :http://home.hiroshima-u.ac.jp/hama8/assessment.html,2017年5月6日) を実施した。HUCRoWは,WMモデルに基づいたWMの4つの構成要素 (言語的短期記憶,視空間的短期記憶,言語性WM,視空間性WM) を測定する各2課題から構成される。数学:COMPASSを実施した。文章題の理解過程に関わる「数学的概念に関する知識 (以下数概)」「図表作成による表象形成」「数学的表現間の対応」,解決過程に関わる「演算の選択」「論理的推論」「図表を用いた解法探索」「計算ルールの基本的知識」「計算の迅速な遂行 (以下計迅)」から構成。

結果と考察
 WMとCOMPASS課題の各構成要素得点との相関を調べた (Table1)。また,WM低群・高群に分け,構成要素別に,得点差についてt検定を行った。「数概」「計迅」について,それぞれ高群が低群より有意に高かった (t(37)=-2.18, p<.05, t(49)=-1.84, p<.05)。
以上の結果から,中学生において,「数概」「計迅」がWMと関係していることがわかった。一方で,他の構成要素では有意な差がみられなかったことから,構成要素によってWMの影響に差がみられることがわかった。また,「数概」は理解過程,「計迅」は解決過程の構成要素であり,WM容量がどちらの過程にも関係していることを示唆している。今後は,WMと構成要素や学習過程との関係性についてより具体的に検討する必要がある。