13:30 〜 15:30
[PE32] オーセンティック概念に基づく算数授業デザインの提案
キーワード:オーセンティック概念, 算数
目 的
近年,日本の児童の算数・数学リテラシーの獲得状況の問題点が多様に報告されている。例えば,奈須(2014)は,2007年度の全国学力・学習状況調査を取り上げて,A問題とB問題間における正答率の圧倒的な落差について「子どもたちが身に付けている学力が,その意味の理解や活用の効く範囲において深刻な問題をはらんでいる」と指摘した。
本研究の目的は,児童にそのような活用の範囲の狭い学力の形成がなされる現状を解決するために,オーセンティク概念(真正性)に着目した算数授業の実践を提案し,その効果を検証する上での課題を整理することである。
方 法
本研究は,前述の目的を達成するために,次の二つの手順で行う。第一に,従来型の算数授業実践や,オーセンティックな学習に関する先行研究を省察し,オーセンティックな学習を成立させる授業に求められる要件を導出する。第二に,第一で導出した要件に依拠した算数実践授業をデザインする。なお,本研究では小学校第3学年「表とグラフ」の学習を事例として取り上げる。また,この授業の調査対象は,東京都内の国立大学附属小学校3年生の児童104名とする。
結 果
オーセンティックな学習を成立させる要件 認知科学に基づく真正実践の先行研究,及び従来の算数授業実践の観察に基づく事例研究等を整理した結果,オーセンティックな学習を成立させる可能性のある要件を,以下のように導出した。
「学習者にとって有意味な状況に真正な課題を埋め込むこと」
「学習者にとって認知的負荷を軽減するために,適切な問題解決の枠組みを設定すること」
「学習者が,教師の持つ学習の見通しを効果的に共有すること」
「学習者の既有知識・能力・経験が生かされるような学習環境を整えること」
授業デザイン 小学校第3学年「表とグラフ」の学習について,真正性を授業デザインに取り入れる程度から,Table1に示す3つの学習集団を仮定した。
学習集団Ⅰが,最も多くの要件に依拠した真正性が高いと考えられる授業デザイン。学習集団Ⅱが,要件の一部に依拠した中程度の真正性であると考えられる授業デザイン。第三が,基本的に検定教科書に則った従来型の授業デザインであった。
考 察
成果 認知科学に基づく研究及び,従来の算数授業研究から観察される幅広い観点から,オーセンティックな学習を成立させる可能性のある要件を導出し,それらを内包する3つの授業をデザインできた点が成果であった。
課題 一方,本研究でデザインした授業を実践するにあたって,以下のような留意事項が課題として挙げられた。すなわち,オーセンティックな学習を成立させる要件の一つとして挙げた「学習者の既有知識・能力・経験が生かされるような学習環境を整えること」に関連して,対象となる児童の既有知識・能力・経験及び学習観等を,あらかじめ把握した上で授業実践を行うことが,課題であった。
近年,日本の児童の算数・数学リテラシーの獲得状況の問題点が多様に報告されている。例えば,奈須(2014)は,2007年度の全国学力・学習状況調査を取り上げて,A問題とB問題間における正答率の圧倒的な落差について「子どもたちが身に付けている学力が,その意味の理解や活用の効く範囲において深刻な問題をはらんでいる」と指摘した。
本研究の目的は,児童にそのような活用の範囲の狭い学力の形成がなされる現状を解決するために,オーセンティク概念(真正性)に着目した算数授業の実践を提案し,その効果を検証する上での課題を整理することである。
方 法
本研究は,前述の目的を達成するために,次の二つの手順で行う。第一に,従来型の算数授業実践や,オーセンティックな学習に関する先行研究を省察し,オーセンティックな学習を成立させる授業に求められる要件を導出する。第二に,第一で導出した要件に依拠した算数実践授業をデザインする。なお,本研究では小学校第3学年「表とグラフ」の学習を事例として取り上げる。また,この授業の調査対象は,東京都内の国立大学附属小学校3年生の児童104名とする。
結 果
オーセンティックな学習を成立させる要件 認知科学に基づく真正実践の先行研究,及び従来の算数授業実践の観察に基づく事例研究等を整理した結果,オーセンティックな学習を成立させる可能性のある要件を,以下のように導出した。
「学習者にとって有意味な状況に真正な課題を埋め込むこと」
「学習者にとって認知的負荷を軽減するために,適切な問題解決の枠組みを設定すること」
「学習者が,教師の持つ学習の見通しを効果的に共有すること」
「学習者の既有知識・能力・経験が生かされるような学習環境を整えること」
授業デザイン 小学校第3学年「表とグラフ」の学習について,真正性を授業デザインに取り入れる程度から,Table1に示す3つの学習集団を仮定した。
学習集団Ⅰが,最も多くの要件に依拠した真正性が高いと考えられる授業デザイン。学習集団Ⅱが,要件の一部に依拠した中程度の真正性であると考えられる授業デザイン。第三が,基本的に検定教科書に則った従来型の授業デザインであった。
考 察
成果 認知科学に基づく研究及び,従来の算数授業研究から観察される幅広い観点から,オーセンティックな学習を成立させる可能性のある要件を導出し,それらを内包する3つの授業をデザインできた点が成果であった。
課題 一方,本研究でデザインした授業を実践するにあたって,以下のような留意事項が課題として挙げられた。すなわち,オーセンティックな学習を成立させる要件の一つとして挙げた「学習者の既有知識・能力・経験が生かされるような学習環境を整えること」に関連して,対象となる児童の既有知識・能力・経験及び学習観等を,あらかじめ把握した上で授業実践を行うことが,課題であった。