13:30 〜 15:30
[PE41] 「自分を主人公とした具体例」の生成による効果の検討
自己関連づけ効果の観点から
キーワード:具体例, 生成, 自己関連付け効果
用語名と定義文から構成される専門用語を学習する際,学習者が自ら具体例を生成することで,記憶の保持や理解の深化が促進されることが先行研究から示唆されている(Oshio, 2016;Rawson & Dunlosky, 2016)。しかし,例生成は現象として報告されるのみで,そのメカニズムについての実証的な検討はほとんどなされていない。
例生成に効果が見られる理由として,既有知識が最大限に活性化されるという点が挙げられる。具体例を自己生成するという活動においては,まず定義文を理解した後,類似した情報の検索が行われる。学習材料と類似性の高い特定の既有知識が活性化された状態で記銘を行うため,新規の学習材料と,関連性の高い既有知識の間にリンクが作られると考えられる。こういったことから,例生成は既有知識を多く活用することのできる学習活動であるため,学習効果を持つと予想される。
例生成において最大限に既有知識を活用するには,単に「具体例を考えよ」といった方向付けではなく,「自己の体験や経験といった,自己に関連する情報をベースとした具体例を考えよ」という方向付けを行うと良いと考えられる。記憶研究の枠組みにおいては,記銘時に自己に関連させた処理を行うと記憶保持が促進されるといった,自己関連付け効果(堀内,2008)が知られている。そこで本研究は,一般的な例生成と自己関連例生成において学習効果の違いが見られるかを検討することを目的とする。
方 法
実験参加者 都内の大学に通う大学1年生47名。
実験計画 参加者間計画:例の処理様式3(例呈示/例生成/自己関連例生成)の1要因3水準計画。
材料とテスト 押尾(印刷中)で作成された心理学用語(ex. 心の理論,バーナム効果)についての刺激40項目(用語の定義文,具体例)。また,すべての用語に対し,“ロープウェイ思考”や“設備効果”といった無関連な有意味語からなる新奇の名を付した。テストは,学習試行の用語名12語と定義文24個からなるマッチングテストと,各用語に対して4つの具体例のうち最も正しいものを選択する理解度テストの2つを使用した。
手続き 全参加者を“例呈示群”,“例生成群”, “自己関連例生成群”に群分けした。例呈示群では,用語名・定義文・模範例を読み上げさせた。例生成群では,用語名・定義文を読み上げた後,定義文に合う具体例を発話させた。自己関連例生成群では,用語名・定義文を読み上げた後,自分の体験談や自分に馴染みのあるものを登場させた具体例を発話させた。いずれの条件においても画面が切り替わるまで,用語名と定義について自由学習を求めた。1項目あたりの呈示時間は1分であった。また,意図学習であった。各条件ごとに,学習終了後に4分間の妨害課題の後,マッチングテスト,理解度テストの順にテストを実施した。
結 果
分散分析の結果,マッチングテストにおいては,具体例の処理様式の主効果(F(2, 44)=0.60, p=.06)が有意傾向で,Oshio (2016) の結果とは異なり,例呈示条件と生成条件に差は見られなかった。それぞれの効果量Cohen’s dの値については,自己関連例生成条件と例呈示条件の差はd=0.26(小さい),例生成条件と例呈示条件の差はd=0.43(小さい),自己関連例生成条件と例生成条件の差はd=0.14(ほとんど差がない)であった。
理解度テストにおいては,具体例の処理様式の主効果(F(2, 44)=5.62, p<.01)が有意で,呈示条件よりも自己関連例生成条件の得点が高かった。それぞれの効果量Cohen’s dの値については,自己関連例生成条件と例呈示条件の差はd=1.21(大きい),例生成条件と例呈示条件の差はd=0.58(中程度),自己関連例生成条件と例生成条件の差はd=0.68(中程度)であった。
考 察
以上から,例生成に学習効果が見られる理由の1つとして,既有知識が強く活性化されていることが考えられる。また,実践介入としては,宣言的知識の学習をする際,自分を主人公とし,自己に関連したものを登場させた具体例を作ることで理解が深まる可能性が示唆された。
今後は,本研究から得られた知見を基にして,授業や個別介入における実践的な検討が必要である。また,本研究ではOshio (2016) の検討で得られた結果と同様の結果を得ることができなかった。そのため,例生成がどういった条件下では効果を持ち,どういった条件下では効果を持たないのか明らかにする必要がある。
例生成に効果が見られる理由として,既有知識が最大限に活性化されるという点が挙げられる。具体例を自己生成するという活動においては,まず定義文を理解した後,類似した情報の検索が行われる。学習材料と類似性の高い特定の既有知識が活性化された状態で記銘を行うため,新規の学習材料と,関連性の高い既有知識の間にリンクが作られると考えられる。こういったことから,例生成は既有知識を多く活用することのできる学習活動であるため,学習効果を持つと予想される。
例生成において最大限に既有知識を活用するには,単に「具体例を考えよ」といった方向付けではなく,「自己の体験や経験といった,自己に関連する情報をベースとした具体例を考えよ」という方向付けを行うと良いと考えられる。記憶研究の枠組みにおいては,記銘時に自己に関連させた処理を行うと記憶保持が促進されるといった,自己関連付け効果(堀内,2008)が知られている。そこで本研究は,一般的な例生成と自己関連例生成において学習効果の違いが見られるかを検討することを目的とする。
方 法
実験参加者 都内の大学に通う大学1年生47名。
実験計画 参加者間計画:例の処理様式3(例呈示/例生成/自己関連例生成)の1要因3水準計画。
材料とテスト 押尾(印刷中)で作成された心理学用語(ex. 心の理論,バーナム効果)についての刺激40項目(用語の定義文,具体例)。また,すべての用語に対し,“ロープウェイ思考”や“設備効果”といった無関連な有意味語からなる新奇の名を付した。テストは,学習試行の用語名12語と定義文24個からなるマッチングテストと,各用語に対して4つの具体例のうち最も正しいものを選択する理解度テストの2つを使用した。
手続き 全参加者を“例呈示群”,“例生成群”, “自己関連例生成群”に群分けした。例呈示群では,用語名・定義文・模範例を読み上げさせた。例生成群では,用語名・定義文を読み上げた後,定義文に合う具体例を発話させた。自己関連例生成群では,用語名・定義文を読み上げた後,自分の体験談や自分に馴染みのあるものを登場させた具体例を発話させた。いずれの条件においても画面が切り替わるまで,用語名と定義について自由学習を求めた。1項目あたりの呈示時間は1分であった。また,意図学習であった。各条件ごとに,学習終了後に4分間の妨害課題の後,マッチングテスト,理解度テストの順にテストを実施した。
結 果
分散分析の結果,マッチングテストにおいては,具体例の処理様式の主効果(F(2, 44)=0.60, p=.06)が有意傾向で,Oshio (2016) の結果とは異なり,例呈示条件と生成条件に差は見られなかった。それぞれの効果量Cohen’s dの値については,自己関連例生成条件と例呈示条件の差はd=0.26(小さい),例生成条件と例呈示条件の差はd=0.43(小さい),自己関連例生成条件と例生成条件の差はd=0.14(ほとんど差がない)であった。
理解度テストにおいては,具体例の処理様式の主効果(F(2, 44)=5.62, p<.01)が有意で,呈示条件よりも自己関連例生成条件の得点が高かった。それぞれの効果量Cohen’s dの値については,自己関連例生成条件と例呈示条件の差はd=1.21(大きい),例生成条件と例呈示条件の差はd=0.58(中程度),自己関連例生成条件と例生成条件の差はd=0.68(中程度)であった。
考 察
以上から,例生成に学習効果が見られる理由の1つとして,既有知識が強く活性化されていることが考えられる。また,実践介入としては,宣言的知識の学習をする際,自分を主人公とし,自己に関連したものを登場させた具体例を作ることで理解が深まる可能性が示唆された。
今後は,本研究から得られた知見を基にして,授業や個別介入における実践的な検討が必要である。また,本研究ではOshio (2016) の検討で得られた結果と同様の結果を得ることができなかった。そのため,例生成がどういった条件下では効果を持ち,どういった条件下では効果を持たないのか明らかにする必要がある。