13:30 〜 15:30
[PE42] 小学生を対象とした防災教育プログラムの開発2
予防的心理教育プログラムの開発と効果検証
キーワード:防災教育, ストレスマネジメント教育, 脅威アピール
目 的
我が国における大規模自然災害後の被災者への心理的支援は阪神淡路大震災の後から本格化しており,その中で心理教育も行われてきた。山田(1999)は阪神淡路大震災の後に小中学生を対象に心理教育を行い,ストレス反応の重症化・慢性化に貢献した。しかし,こうした従来の心理教育は日頃から災害に備えて教育するという予防的視点に欠けていた。予防教育としての災害心理教育の要件は災害ストレスに関する知識や対処スキルを被災前から獲得させ,ストレスマネジメントの基礎力を日頃から高めておくことである。本研究では予防教育としての災害心理教育用の学習プログラムを開発し,学校教育の現場で実施して,その学習効果を検証した。
方 法
対象者
A小学校の小学校5・6年生229名。
訓練者
A小学校の5・6年生の学級担任が本プログラム使用して授業を実施した。
手続き
全3種類の学習プログラムを開発し,A小学校の授業時間を使用して実施した。授業時間1時間(45分間)につきひとつのプログラムを実施し,2016年4月~2017年2月にかけて全3回の授業を行った。
第1回目授業 2016年4月30日に実施した。授業のねらいは,ストレス反応の個別の症状を4つのグループのいずれかひとつに分類できることであった。また,ストレス反応が異常な事態に対する正常な反応であり,多くの場合は自然に消失することを理解することもねらいとした。
第2回目授業 2016年10月22日に実施した。授業のねらいは,ストレス反応のグループに合わせて適切なコーピングを選択し,実行できることであった。また,ストレス反応を長期化させないためにトラウマに関する物・場所・出来事に勇気をもって向き合うことが大切であることを理解することもねらいとした。
第3回目授業 2017年1月18日もしくは2月7日に実施した。授業のねらいは,災害後の共助に参加することで,自己コントロール感覚を取り戻すことができ,それが災害からの立ち直りに繋がることを理解することであった。
質問紙調査
豊沢・唐沢・福和(2010)が作成した尺度を元に質問文の表現を適宜修正して,恐怖感情,脅威への脆弱性,脅威の深刻さ,自己効力感,反応効果性という5項目からなる尺度を作成した。各授業の前後にこの尺度を使用した質問紙調査を行い,対象者に5件法で回答を求めた。
結果と考察
全6回の質問紙調査において全ての調査項目に回答のあった178名を対象に対応のある1要因の分散分析を行った結果,脅威への脆弱性を除く4種類の調査項目において有意な得点変化が認められた(恐怖感情 F(5, 885)=3.565, p<.005;脅威の深刻さ F(5, 885)=16.565, p<.001;自己効力感 F(5, 885)=14.153, p<.001;反応効力性 F(5, 885)=7.442, p<.001)。多重比較の結果,自己効力感と反応効果性において,2回目の授業の実施後に認知得点が有意に増加し,3回目の授業前に減少し,3回目の授業後に増加した。また,脅威の深刻さにおいて,2回目の授業後に有意に減少し,3回目の授業前に増加し,3回目の授業後に減少した。
プログラム2と3に自己効力感と反応効果性の認知を向上させ,脅威の深刻さの認知を減少させる効果があることが示されたものの,プログラム2の学習効果は長時間維持されなかった。
我が国における大規模自然災害後の被災者への心理的支援は阪神淡路大震災の後から本格化しており,その中で心理教育も行われてきた。山田(1999)は阪神淡路大震災の後に小中学生を対象に心理教育を行い,ストレス反応の重症化・慢性化に貢献した。しかし,こうした従来の心理教育は日頃から災害に備えて教育するという予防的視点に欠けていた。予防教育としての災害心理教育の要件は災害ストレスに関する知識や対処スキルを被災前から獲得させ,ストレスマネジメントの基礎力を日頃から高めておくことである。本研究では予防教育としての災害心理教育用の学習プログラムを開発し,学校教育の現場で実施して,その学習効果を検証した。
方 法
対象者
A小学校の小学校5・6年生229名。
訓練者
A小学校の5・6年生の学級担任が本プログラム使用して授業を実施した。
手続き
全3種類の学習プログラムを開発し,A小学校の授業時間を使用して実施した。授業時間1時間(45分間)につきひとつのプログラムを実施し,2016年4月~2017年2月にかけて全3回の授業を行った。
第1回目授業 2016年4月30日に実施した。授業のねらいは,ストレス反応の個別の症状を4つのグループのいずれかひとつに分類できることであった。また,ストレス反応が異常な事態に対する正常な反応であり,多くの場合は自然に消失することを理解することもねらいとした。
第2回目授業 2016年10月22日に実施した。授業のねらいは,ストレス反応のグループに合わせて適切なコーピングを選択し,実行できることであった。また,ストレス反応を長期化させないためにトラウマに関する物・場所・出来事に勇気をもって向き合うことが大切であることを理解することもねらいとした。
第3回目授業 2017年1月18日もしくは2月7日に実施した。授業のねらいは,災害後の共助に参加することで,自己コントロール感覚を取り戻すことができ,それが災害からの立ち直りに繋がることを理解することであった。
質問紙調査
豊沢・唐沢・福和(2010)が作成した尺度を元に質問文の表現を適宜修正して,恐怖感情,脅威への脆弱性,脅威の深刻さ,自己効力感,反応効果性という5項目からなる尺度を作成した。各授業の前後にこの尺度を使用した質問紙調査を行い,対象者に5件法で回答を求めた。
結果と考察
全6回の質問紙調査において全ての調査項目に回答のあった178名を対象に対応のある1要因の分散分析を行った結果,脅威への脆弱性を除く4種類の調査項目において有意な得点変化が認められた(恐怖感情 F(5, 885)=3.565, p<.005;脅威の深刻さ F(5, 885)=16.565, p<.001;自己効力感 F(5, 885)=14.153, p<.001;反応効力性 F(5, 885)=7.442, p<.001)。多重比較の結果,自己効力感と反応効果性において,2回目の授業の実施後に認知得点が有意に増加し,3回目の授業前に減少し,3回目の授業後に増加した。また,脅威の深刻さにおいて,2回目の授業後に有意に減少し,3回目の授業前に増加し,3回目の授業後に減少した。
プログラム2と3に自己効力感と反応効果性の認知を向上させ,脅威の深刻さの認知を減少させる効果があることが示されたものの,プログラム2の学習効果は長時間維持されなかった。