13:30 〜 15:30
[PE46] 大学生におけるアルバイト就労と感情との関連
キーワード:アルバイト就労, 感情, 階層線形モデル
問題と目的
従来,労働と健康との関連の検討は,主に一般労働者を対象としてきた。これは,大学生等の労働時間が一般労働者と比較して総じて短く(全国大学生活協同組合連合会, 2017),年齢が労働と健康との関連の負荷耐性となる(岩崎,2008)ことが理由の1つと推測される。一方で,近年では若年者の労働と健康問題に関する関心も高まっており(厚生労働省, 2015),検討に値する研究テーマといえる。
そこで,本研究では大学生におけるアルバイト就労が日々の大学生活にどのような影響を及ぼすのかについて検討する。なお,労働衛生の分野における研究では,生存・死亡や特定の疾患の罹患,疲労状態などがアウトカムになることが多い。これらの変数は労働者の心身の健康に対する中長期的な影響を検討する際に有用であるが,短期的な影響を検討する際には有用とは限らない。そのため,本研究では,上記に挙げた変数よりも日常生活の影響が反映されやすい感情状態をアウトカムとすることとし,大学生のアルバイト就労との関連を検討する。
方 法
調査参加者と調査手続き
調査参加者は大学生20名(男性9名, 女性11名; 1年生12名, 2年生6名, 3年生3名, 4年生1名)であった。
本調査では,以下の6つの内容を就寝前に1日1回,2週間にわたって回答を求めた。(a) アルバイト就労および深夜業の有無(2件法),勤務時間,(b) 昨晩の睡眠時間,(c) 感情(非活動的快,抑うつ・不安; 寺崎・岸本・古賀, 1991)。
調査開始時には,精神的健康状態を測定するためにK‐6日本語版(Furukawa et al., 2008; 6項目5件法)とWHO-5(Awata et al., 2007; 5項目6件法)を用いた。
結果と考察
大学生のアルバイト就労と日々の疲労状態の関連を階層線形モデルによって検討した。まず,
affectij = α0i + b1iweekendij + b2i workhoursij + b3i part-time jobij + b4i night workij+ b5isleepij + rij (1)
とレベル1を構成した。次に,レベル2では,
α0i = γ00 + u0i (2)
b1i = γ10 + u1i , b2i = γ20 + u2i, b3i = γ30 + u3i, b4i = γ40 + u4i, b5i = γ50 + u5i (3)
(u0i@u1i@u2i@u3i@u_4i@u5i)~N[(0@0@0@0@0@0),(τ00@τ10@τ20@τ30@τ40@τ50)(τ01@τ11@τ21@τ31@τ41@τ51)(τ02@τ12@τ22@τ32@τ42@τ52)(τ03@τ13@τ23@τ33@τ43@τ53)(τ04@τ14@τ24@τ34@τ44@τ54)(τ05@τ15@τ25@τ35@τ45@τ55)] (4)
とすることで,1式における切片と各説明変数の偏回帰係数に変量効果を仮定した。また,それぞれの変量効果は4式にしたがうと仮定し,本研究における検証モデルの基本形とした。
分析に先立ち,各説明変数の偏回帰係数の変量効果(u1i, u2i, ui3, u4i, u5i)を0に固定するか自由推定するかについて,全ての組み合わせである32(25)個のモデルで情報量基準(AIC,BIC)によるモデル比較を行った。その結果,説明変数の回帰係数に変量効果を仮定しないランダム切片モデルの適合性が最も高かった。結果をTable 1に示す。
分析の結果,抑うつ・不安に対して,深夜業から有意な負の偏回帰係数が見られ(γ40 = -0.22),週末から有意傾向の正の偏回帰係数が見られた(γ10 =0.12)。他方,非活動的快に対しては,有意な偏回帰係数は見られなかった。
今回の分析の結果では,アルバイト就労と非活動的快との間に有意な関連は見られず,抑うつ・不安との間もわずかな関連を示すのみであった。日々の感情状態は,日常生活で経験する様々な出来事の影響を受ける。そのため,それらの要因と比較したとき,アルバイト就労が感情状態へ及ぼす影響は大きくない可能性が考えられる。
従来,労働と健康との関連の検討は,主に一般労働者を対象としてきた。これは,大学生等の労働時間が一般労働者と比較して総じて短く(全国大学生活協同組合連合会, 2017),年齢が労働と健康との関連の負荷耐性となる(岩崎,2008)ことが理由の1つと推測される。一方で,近年では若年者の労働と健康問題に関する関心も高まっており(厚生労働省, 2015),検討に値する研究テーマといえる。
そこで,本研究では大学生におけるアルバイト就労が日々の大学生活にどのような影響を及ぼすのかについて検討する。なお,労働衛生の分野における研究では,生存・死亡や特定の疾患の罹患,疲労状態などがアウトカムになることが多い。これらの変数は労働者の心身の健康に対する中長期的な影響を検討する際に有用であるが,短期的な影響を検討する際には有用とは限らない。そのため,本研究では,上記に挙げた変数よりも日常生活の影響が反映されやすい感情状態をアウトカムとすることとし,大学生のアルバイト就労との関連を検討する。
方 法
調査参加者と調査手続き
調査参加者は大学生20名(男性9名, 女性11名; 1年生12名, 2年生6名, 3年生3名, 4年生1名)であった。
本調査では,以下の6つの内容を就寝前に1日1回,2週間にわたって回答を求めた。(a) アルバイト就労および深夜業の有無(2件法),勤務時間,(b) 昨晩の睡眠時間,(c) 感情(非活動的快,抑うつ・不安; 寺崎・岸本・古賀, 1991)。
調査開始時には,精神的健康状態を測定するためにK‐6日本語版(Furukawa et al., 2008; 6項目5件法)とWHO-5(Awata et al., 2007; 5項目6件法)を用いた。
結果と考察
大学生のアルバイト就労と日々の疲労状態の関連を階層線形モデルによって検討した。まず,
affectij = α0i + b1iweekendij + b2i workhoursij + b3i part-time jobij + b4i night workij+ b5isleepij + rij (1)
とレベル1を構成した。次に,レベル2では,
α0i = γ00 + u0i (2)
b1i = γ10 + u1i , b2i = γ20 + u2i, b3i = γ30 + u3i, b4i = γ40 + u4i, b5i = γ50 + u5i (3)
(u0i@u1i@u2i@u3i@u_4i@u5i)~N[(0@0@0@0@0@0),(τ00@τ10@τ20@τ30@τ40@τ50)(τ01@τ11@τ21@τ31@τ41@τ51)(τ02@τ12@τ22@τ32@τ42@τ52)(τ03@τ13@τ23@τ33@τ43@τ53)(τ04@τ14@τ24@τ34@τ44@τ54)(τ05@τ15@τ25@τ35@τ45@τ55)] (4)
とすることで,1式における切片と各説明変数の偏回帰係数に変量効果を仮定した。また,それぞれの変量効果は4式にしたがうと仮定し,本研究における検証モデルの基本形とした。
分析に先立ち,各説明変数の偏回帰係数の変量効果(u1i, u2i, ui3, u4i, u5i)を0に固定するか自由推定するかについて,全ての組み合わせである32(25)個のモデルで情報量基準(AIC,BIC)によるモデル比較を行った。その結果,説明変数の回帰係数に変量効果を仮定しないランダム切片モデルの適合性が最も高かった。結果をTable 1に示す。
分析の結果,抑うつ・不安に対して,深夜業から有意な負の偏回帰係数が見られ(γ40 = -0.22),週末から有意傾向の正の偏回帰係数が見られた(γ10 =0.12)。他方,非活動的快に対しては,有意な偏回帰係数は見られなかった。
今回の分析の結果では,アルバイト就労と非活動的快との間に有意な関連は見られず,抑うつ・不安との間もわずかな関連を示すのみであった。日々の感情状態は,日常生活で経験する様々な出来事の影響を受ける。そのため,それらの要因と比較したとき,アルバイト就労が感情状態へ及ぼす影響は大きくない可能性が考えられる。