13:30 〜 15:30
[PE48] 特性尊敬関連感情尺度(青年期後期用)短縮版の作成と信頼性・妥当性の検討
キーワード:尊敬, 感情特性, 尺度開発
問題と目的
近年,優れた他者への称賛や尊敬に関わる感情について検討する機運が高まってきており(武藤,2016;Schindler,Zink,Windrich,& Menninghaus,2013),それらの経験しやすさの個人差(感情特性)にも目が向けられ始めている(Schindler,2014)。武藤(2016)は,特性尊敬関連感情尺度(青年期後期用)を作成し,青年期後期の尊敬に関わる感情特性には,特性尊敬,特性心酔,特性畏怖の3つの次元がある可能性を示唆した。しかし,本尺度に関して,武藤(2016)では一定の信頼性と妥当性が示されているものの,再検査信頼性は1週間間隔でしか検討されておらず,より長期的な時間的安定性は定かではない。また,本尺度の得点が実際に,後の尊敬に関わる感情経験を予測するかは検討されていない。さらに,本尺度の項目数は38項目と比較的多いため,多数の変数を扱う研究や調査項目に制限のある研究では使用しづらい。そこで,本研究では,特性尊敬関連感情尺度の短縮版を作成し,その信頼性と妥当性を検討する。
方 法
参加者と手続き 本研究は約3ヵ月間の短期縦断的調査(武藤,2015,2017)と同時に実施された。群馬県,埼玉県,東京都,静岡県にある計7大学において,集団形式または個別配布・回収での質問紙調査が,2014年9~11月(Time 1)と約3ヵ月後(Time 2)に実施された。Time 1の有効回答者の大学(院)生849名(男性263名,女性578名,性別不明8名;平均年齢19.5歳(n = 838;SD = 1.08,レンジ:18~28))を分析の対象とした。
調査内容 本分析に用いた変数のみ記述する。
Time 1質問紙 1.特性尊敬関連感情尺度(青年期後期用)短縮版:武藤(2016)の結果を基に,38項目の原版から14項目を選定した(項目はTable 1)。なお,原版の特性畏怖は,対象が自然への内容を含む項目もあったが,本研究では社会的感情としての特性畏怖に着目し,短縮版項目は対人的な畏怖の内容に限定した。「全くあてはまらない」(1点)から「非常によくあてはまる」(7点)の7件法。2.多次元共感性尺度(MES)(鈴木・木野,2008;25項目,5件法)。
Time 2質問紙 1.感情経験頻度:Time 1からTime 2までの約3ヵ月間の,様々な人間関係での敬愛・心酔・畏怖・感心・驚嘆・羨ましさ・妬ましさ・恥・軽蔑の計9種類の感情の経験頻度(5件法)。2.特性尊敬関連感情尺度(青年期後期用)短縮版(Time 1と同じ尺度)。3.Big Five(小塩・阿部・カトローニ(2012)の日本語版Ten Item Personality Inventory(TIPI-J);10項目,7件法)。4.自尊感情尺度(Rosenberg,1965;山本・松井・山成,1982;10項目,5件法)。
結果と考察
特性尊敬関連感情尺度短縮版に関して,Time 1において欠測のない829名のデータを用いて確認的因子分析を行った(Table 1)。特性尊敬,特性心酔,特性畏怖の3因子モデルの適合度指標はχ2(74)= 482.331,p < .001,CFI = .897,RMSEA = .082(90% CI [.075,.089]),SRMR = .055であり,許容範囲であると判断した。3つの下位尺度の内的整合性(Time 1の特性尊敬:α = .77,ω = .78,n = 839;特性心酔:α = .77,ω = .78 n = 834;特性畏怖:α = .82,ω = .83,n = 843)と調査間の相関係数(特性尊敬:r = .58;特性心酔:r = .70;特性畏怖:r = .66;いずれもps < .001,n = 678)は十分な値を示した。また,約3ヵ月間の9種類の感情経験頻度を従属変数,年齢,性別,特性尊敬関連感情(Time 1),多次元共感性,Big Five,自尊感情を独立変数とした重回帰分析の結果,特性尊敬は敬愛経験を,特性心酔は心酔経験を,特性畏怖は畏怖経験を有意に正に予測した。以上より,特性尊敬関連感情尺度(青年期後期用)短縮版の信頼性・妥当性は十分であることが示唆された。
付 記
本研究は科研費(課題番号13J09637)の助成を受けた。
近年,優れた他者への称賛や尊敬に関わる感情について検討する機運が高まってきており(武藤,2016;Schindler,Zink,Windrich,& Menninghaus,2013),それらの経験しやすさの個人差(感情特性)にも目が向けられ始めている(Schindler,2014)。武藤(2016)は,特性尊敬関連感情尺度(青年期後期用)を作成し,青年期後期の尊敬に関わる感情特性には,特性尊敬,特性心酔,特性畏怖の3つの次元がある可能性を示唆した。しかし,本尺度に関して,武藤(2016)では一定の信頼性と妥当性が示されているものの,再検査信頼性は1週間間隔でしか検討されておらず,より長期的な時間的安定性は定かではない。また,本尺度の得点が実際に,後の尊敬に関わる感情経験を予測するかは検討されていない。さらに,本尺度の項目数は38項目と比較的多いため,多数の変数を扱う研究や調査項目に制限のある研究では使用しづらい。そこで,本研究では,特性尊敬関連感情尺度の短縮版を作成し,その信頼性と妥当性を検討する。
方 法
参加者と手続き 本研究は約3ヵ月間の短期縦断的調査(武藤,2015,2017)と同時に実施された。群馬県,埼玉県,東京都,静岡県にある計7大学において,集団形式または個別配布・回収での質問紙調査が,2014年9~11月(Time 1)と約3ヵ月後(Time 2)に実施された。Time 1の有効回答者の大学(院)生849名(男性263名,女性578名,性別不明8名;平均年齢19.5歳(n = 838;SD = 1.08,レンジ:18~28))を分析の対象とした。
調査内容 本分析に用いた変数のみ記述する。
Time 1質問紙 1.特性尊敬関連感情尺度(青年期後期用)短縮版:武藤(2016)の結果を基に,38項目の原版から14項目を選定した(項目はTable 1)。なお,原版の特性畏怖は,対象が自然への内容を含む項目もあったが,本研究では社会的感情としての特性畏怖に着目し,短縮版項目は対人的な畏怖の内容に限定した。「全くあてはまらない」(1点)から「非常によくあてはまる」(7点)の7件法。2.多次元共感性尺度(MES)(鈴木・木野,2008;25項目,5件法)。
Time 2質問紙 1.感情経験頻度:Time 1からTime 2までの約3ヵ月間の,様々な人間関係での敬愛・心酔・畏怖・感心・驚嘆・羨ましさ・妬ましさ・恥・軽蔑の計9種類の感情の経験頻度(5件法)。2.特性尊敬関連感情尺度(青年期後期用)短縮版(Time 1と同じ尺度)。3.Big Five(小塩・阿部・カトローニ(2012)の日本語版Ten Item Personality Inventory(TIPI-J);10項目,7件法)。4.自尊感情尺度(Rosenberg,1965;山本・松井・山成,1982;10項目,5件法)。
結果と考察
特性尊敬関連感情尺度短縮版に関して,Time 1において欠測のない829名のデータを用いて確認的因子分析を行った(Table 1)。特性尊敬,特性心酔,特性畏怖の3因子モデルの適合度指標はχ2(74)= 482.331,p < .001,CFI = .897,RMSEA = .082(90% CI [.075,.089]),SRMR = .055であり,許容範囲であると判断した。3つの下位尺度の内的整合性(Time 1の特性尊敬:α = .77,ω = .78,n = 839;特性心酔:α = .77,ω = .78 n = 834;特性畏怖:α = .82,ω = .83,n = 843)と調査間の相関係数(特性尊敬:r = .58;特性心酔:r = .70;特性畏怖:r = .66;いずれもps < .001,n = 678)は十分な値を示した。また,約3ヵ月間の9種類の感情経験頻度を従属変数,年齢,性別,特性尊敬関連感情(Time 1),多次元共感性,Big Five,自尊感情を独立変数とした重回帰分析の結果,特性尊敬は敬愛経験を,特性心酔は心酔経験を,特性畏怖は畏怖経験を有意に正に予測した。以上より,特性尊敬関連感情尺度(青年期後期用)短縮版の信頼性・妥当性は十分であることが示唆された。
付 記
本研究は科研費(課題番号13J09637)の助成を受けた。